私とドニーは、アドキンズ婦人と何度かおしゃべりをした(私は、いまだ、あの可愛らしい婦人を「お母様」と呼ぶのに抵抗を感じている)。彼女は、アンドリューが小さかったとき、少年コーラス隊で歌っていたと言った。その時の姿、ぜひ見れたらいいのにと思った。話しによると、彼は美しいソプラノの声をしていたらしい。コーラス隊の歌を録音したテープまで聞かせていただいた。アンドリューは9歳の頃、そのコーラス隊にしばらく属していたのだが、ある時、アンドリューのお父様が、彼にコーラスが好きかどうか、尋ねたらしい。
すると少年時のアンドリューは、「すごく好きだよ。あの神様がどうのこうのってところさえなければ」と答えたという。まさに、私たちが思ってる通りのアンドリューらしい返事ね。
というわけで、私たちは無宗教の公共施設での結婚式を挙げた。ドニーは私の付添になってくれた。私もドニーも同じ衣装を着、同じ靴を履いて式に臨んだ。途中、結婚式の立会人の役を行う地方判事が目を離す時をねらって、私は何気なくドニーと入れ換わった。アンドリューを除いて、誰も気づかなかった。アンドリューの場合は、私たちのどっちがどっちか、いつもちゃんと分かってる。彼は私たちがスイッチしたのを喜んでいた。私とドニーの二人とも彼と結婚しているような感じになれたから。「あなたはこの人を夫とすることを誓いますか?」に対して「誓います」と答えたのはドニーだった。
新婚旅行はナイアガラ滝に行った。結婚式はアンドリューのお母様に出席していただけるよう、イリノイ州カントンで挙げたので、そこからナイアガラまでは車でたった4時間程度。私もドニーも、それにアンドリューもまだナイアガラに行ったことがなかったし、アンドリューは、ナイアガラに新婚旅行というのは、あまりに陳腐過ぎて、むしろカッコイイ(彼の言葉)と感じたみたい。というわけで、そこに出かけた。
旅行では、三人で滝下をくぐるボートに乗った。そのほかの時間はホテルにこもって愛し合って過ごした。つまり、典型的な新婚旅行というわけ。
私は、新婚旅行というのはどこか特別な場所に行くべきではないという意見を持っていた。どこに行こうとも結局は、大半の時間をベッドの中で過ごすことになるのだから。観光をして楽しむ時間がないのに、どうして、どこかに行って時間とおカネを無駄にするの? と。
もちろん、自分でも、こんなことを考える私は一体何者だろうという気持ちもある。これまでの私にとっては、新婚旅行というのはいちばん経験する可能性のないものだったのだから。
でも、いま、私たちは、夢に見ることすらできなかったような男性と結婚して、ここに来ているのだ。私もドニーも、この種の幸福が自分たちに訪れることがありうるなんて思ってもいなかった。私たちの条件は、あまりにも並はずれていたし、それになんだかんだ言っても、私たちには年齢の問題もあったから。このような幸せな結果をどうして期待できただろう?
だけど、私たちはアンドリューと知り合えた。私は運命というのは信じないし、進化は何かあらかじめ道筋が決められているというのも信じない。でも、そのどちらもないとすると、つまり、運命というのも存在せず、進化も前もって決められていないとすると、どうして、私たちがアンドリューと一緒になるということがあり得たのだろう? とても不思議だ。
アンドリューが仕事を辞め、シンシナティに引っ越し、私たちと一緒に暮らし始めた後、私たちは就寝習慣について、厳格なルールを作った。それは、アンドリューは一日ごとに寝室を変えるというもの。ドニーと一緒に過ごしたら、次の夜は私と過ごすこと。シンプルでエレガントな解決案だった。でも、ひとつだけ問題があった。
それは、三人とも、この解決案が気に入らなかったということ。誰でも、いったん好きな人を夫としてベッドに迎え入れたら、いつまでもそうしたいと思うはず。私はそう思ったし、ドニーも同じだった。それに、アンドリューも、ほとんど即座に苦情を言った。その夜、ベッドを共にしない人が私であれ、ドニーであれ、その人と一緒にベッドに入れないのはイヤだと。
そうすると、解決案はたった一つしかない。つまり、より大きなベッドを買うということ。そして、それこそ私たちが行ったことだった。その日以来ずっと、私たちは三人一緒に就寝している。ただ、一度につき、男性と女性一対一のペアを厳守するというルールは、ちゃんと守られている。
実際、私たちの性生活は依然としてただの一対一でするのがほとんどだ。朝には、ドニーも私も、ときどき一緒に口唇愛撫でアンドリューを起こしてあげるのがお気に入りだけど。いや、正直にいえば、ほとんど毎朝かもしれない。でも夜は、アンドリューのために口唇セックスはなしにしている。可哀想なので、あまり彼を疲れさせたくないから。なんと言っても、アンドリューは、ほとんど毎晩、私たち二人にしてくれているのだから。
私もドニーもとてもエッチな気分になってる妊婦。そんな私たちを、どういうわけか、毎週毎週、毎晩のように、何度も喜ばせるのがとても上手な男を見つけたのだ。私たちは以前に比べてテレビを見る時間がずっと少なくなっている。