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デス・バイ・ファッキング 第17章 (13) 


ふたりいる妻たちのひとりが私たちの顔を見て言った。「ドニーもあたしも、この20年ほどのエンターテインメントが向かって来た方向に、とても心配しているの。子供たちはほとんどの時間、何らかの装置の画面に目を向けて過ごしているように思うから。パソコンの画面とかテレビとかゲームとか。この世代は、何かを行う種族のではなく、何かを見る種族になってきているわ。だから、エミーに、行動の一部に参加できるような方法を考えてって頼んだわけ。その成果が、これなのよ」

それを聞いて、私もジェイクも圧倒された。この技術は、私が知ってる中で、最も目を見張る技術だ。しかも、それを開発したのは7歳の子供たちだとは。隣でジェイクがつぶやくのが聞こえた。「どうやら、このオファー、真剣に検討すべきなようだ……」

エマがスキップしながら部屋に入って来た。その姿を見て、改めて彼女がまだ幼い子供だと思い知らされる。彼女はアンドリューの膝の上に飛び乗って、抱きついた。アンドリューはエマの脇の下をくすぐり、それを受けてエマはキャッキャッと笑い転げた。天才と超天才の間で行われる交歓の行為としては、あまりに家庭的すぎるやり取りに見える。

そのエマがジェイクに言った。

「ねえ、ジェイク? 新しいオペレーティングシステムを発表するとき、あたしたち、それがどれだけ優れているかを証明するコンテストを開催したいと思ってるんだ。みんなが知ってるIPアドレスでシステムを立ち上げるつもり。その上で、そのシステムにハッキングできたら、誰にでも100万ドルをあげるの。地球上のすべてのコンピュータおたくに参加してもらいたいから……

「……あたしの妹たちもコンピュータおたくで、2年位前に、政府がうちのデータベースに侵入しないようにファイアウォールを作ったわ。で、最後のファイアウォールの後ろにちょっとしたモノを置いておいたの。そこまで突破できた人へのご褒美としてね。でも、誰もできなかった。それに、そもそも、あたしたちのデータベースはそのコンピュータに置いてなかったし……

「でね、今度のにも同じことを仕掛けておいたわ。だからうちのオペレーティングシステムに侵入できた人は、100万ドルに加えて、コレもゲットするのよ」

そう言って、エマはリモコンのスイッチを押した。突然、画面にドニーとディアドラのほぼ等身大の画像が現れた。互いに抱き合いながら素っ裸で眠っているふたりの画像だった。私は息をのんだし、隣のジェイクも息をのんだ。こんなセクシーなヌード画像は見たことがない。

妻たちのひとりが小さい声ながら叫び声をあげた。「アンドリュー! あなた、この写真は隠しておくって約束したでしょ!」

アンドリューは申し訳なさそうな声を出そうとしたが、少なくとも私やジェイクと同じく画像にじっと見入っていたのには変わりがない。

「ディー・ディー、エマが何かをしたいと思ったら、僕が何をやっても止められないって。君も知ってるだろ? それに、これは優れたアートだよ。僕が撮った中でも最高の作品だよ」

ディアドラとドニーのふたりとも、顔を真っ赤にしていた。でも、私もちょっと応援したい気持ちだった。

「本当に。アンドリューの言う通りですよ。とても美しい写真ですよ。どうかご検討していただきたいのですが、これを『コスモ』誌の編集局に見せるのを許してほしいです。絶対、表紙に使いたいと言うと思いますよ。そうでなくとも、少なくとも私の記事のトップには必ずなります。それほど、目を見張るような素晴らしい画像だもの!」

妻たちはアンドリューを睨み付けていた。一方、アンドリューは無邪気に平然とした顔をしていた。エマのしたことも無邪気なことなら、アンドリューも無邪気な気持ちなのかもしれない。種馬状態のアンドリューだけど、今夜は、珍しく仕事から解放される夜になるんじゃないかしら。

ようやく、妻たちのひとりが子供たちに「もう寝る時間よ」と言った。子供たちは、ちょっとぶつぶつ文句を言ってたけれど、大半が目を擦っていたのも事実。女の子も男の子もそれぞれ寝室のある二階へと上がっていった。ひとりエマを除いて。


[2021/07/17] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (12) 

映画の中盤にかけて、ジョアン・ウッドワードは、メイクアップ、衣装そして新しいカツラのおかげで、とても可愛く変身した。そして、まさに映画がそのシーンになったとき、私は、ここにいるディアドラとドニーがジョアン・ウッドワードによく似ていると気づいたのだった。そして、その映画を見ていたまさにその部屋で、私の目の前で、あの光景が展開していったのである。そして、アンドリューは映画に集中できなくて困っているように見えたのだった。果たして、それはどんな光景だったのか?

ディアドラもドニーも気づかないふりをしていたけれども、私には、ふたりともアンドリューの視線をしっかり感じていたと分かる。ふたりとも、カウチに座りつつも、何度も座りなおしたりを繰り返していた。そして、そうやって態勢を変えるたびに、ふたりのスカートは少しずつめくり上がっていた。アンドリューは、ふたりが見せる脚の肌に目を奪われているように見えた。この男性、深刻な状態と言えるほどムラムラしている。みんなが思っているように、本当にセクシーな男性なのかもしれない。

アンドリューはいったんキッチンに行き、そしてすぐに戻ってきた。あっという間にみんなにポップコーンとフルーツジュースが用意された。この人、とても家庭的な男性でもあるのだ。私は感心した。

映画は終盤に差し掛かっていた。寝室のシーンがあって、そのシーンではジョアン・ウッドワードはポール・ニューマンを誘惑しようとセクシーなネグリジェ姿になっていた。

そして、ちょうど良いシーンになりそうというところで、映画の中のジョアン・ウッドワードが突然、カメラ目線になったのである。まっすぐアンドリューを見ているように見えた。

そして彼女が言ったのだった。「パパ、どう思う? 私、上手にできてる?」

ジェイクがジュースが入ったグラスを床に落とした。みんなでトワイライトゾーンに入ってしまったの?

アンドリューが笑顔になって言った。「悪くないよ。この前のよりはこっちの方がずっと好きだな」 次にアンドリューは、ジェイクと私に顔を向けて、「先週、彼女は『エミー・ダズ・ダラス』(参考)で主演をやったんだ。観てて恥ずかしかったけど、エミーが女優としてデビーより上手なのは認めようと思ってるんだ」と言った。

画面の中、ジョアン・ウッドワードの顔をした人がジェイクと私の方を見た。「これは、私たちがVVと呼んでるものなの。バーチャル・ビデオ(Virtual Video)でVV。主要な登場人物は全員、デジタル化されているわ。バーチャルのヘルメットがあって、それを被ると登場人物のひとりになれるの。私はジョアン・ウッドワードになりたかった。パパがジョアン・ウッドワードの熱烈なファンだから」

アンドリューは困った顔をした。「エミー、僕のことをダシに使わないように!」

画面の中のジョアン・ウッドワードは笑って、彼に投げキスをした。これだけでもシュールな状況なのに、驚いたことに、画面の中のポール・ニューマンはジョアンに向かって、「どうしたんだ? 台詞を忘れたのか?」と言い出した。

ジョアンはポールの方を向いて「お黙り!」と言った。ポールは、あのトレードマークの「どうでもいいや」という微笑みの表情をした。

ジョアン(エマ)は私たちの方に向き直って話を続けた。

「台本はあなたの目の前に表示されているでしょ。今は7か国語でできる(だって、言語はそれしかしらないから)。でも、市場に出せる準備ができる頃には、すべての主要な言語はカバーできるでと思うよ……」

「……台本からちょっと逸れることもできるわ。でも、今のところは、大きく逸れてしまうと他の役者たちがついていけなくなるの。他の役者もバーチャルなら可能だけど。それに、役者の声を使うことも、自分の声を使うこともできるよ」

突然、ジョアンの口からエマの幼い声が出てきた。そして、顔や姿かたちが変形して、エマのイメージに変わった。これって、本当に変な感じ。

「ヘルプモードもあるのよ。演技のヘルプでも、批評的なヘルプも。見てみたい?」

ジェイクも私も頭を縦に振った。エマがどこにいるのか、私には分からなかったが、彼女の方は私たちが見えているに違いない。

「ヘルプについては数段階のレベルをプログラムしておいたわ。これは『パパのご講義』ヘルプモード」

ポール・ニューマンがゆっくりとあんどりゅー・アドキンズの姿に変わり、またゆっくりとポール・ニューマンの姿に変わった。

そのポール・ニューマンがしゃべりだした。「エミー、それはとても良いよ。でも、シーンにもっと気持ちを込める方法を知らなくちゃいけないよ。取り掛かる前に、自分が何を求めているかを頭に描くんだ。そして、本当の気持ちを隠さず、表に出す。A)自分の内面を見つめて、単語の意味をしっかり知ること。B)それから……」

彼はその後もだらだらと何かしゃべり続けた。エマの姿が元のジョアン・ウッドワードへと戻り、そのジョアンは指を自分の喉奥に入れて、オエッっと吐き出しそうな声をあげた。

「もう充分だよ! ジョークの意味はみんな分かったから」とアンドリューが言った。

ジョアンは少し微笑んだ。「それに『パパの運転』ヘルプモードもあるよ」

突然、ポール・ニューマンが立ち上がり、怒鳴り始めた。「お前、いったい何やってんだよ! お前、バカか、うすのろ!」

子供たちが皆クスクス笑い出した。ふたりの妻たちも笑っていた。

アンドリューが言った。「みんな、ヘルプモードの要点は理解したと思うよ。だから、もう終わりにしよう。僕が暴力的になって、役者たちをひどいやり方で排除し始める前にね」


[2021/05/23] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (11) 

「ジェイク? あなたは法律関係の監督になってくれっていうアドキンズ家の申し込みについて、考えているところなの?」

「分からないんだ。僕がいま稼いでる額の4倍は出すって言ってくれている。でも、僕は元々、正義に燃える「熱血検察官」になりたかったんだ。まあ、現実は僕が抱いていたイメージとピッタリというわけじゃないけど。でも、まだそういうイメージが好きなんだ。何か重要なことをしてるんだって気持ちが」

「でも、この話もかなり重要のように聞こえるけど。やりがいのある大きな挑戦になると思うし、潜在的な力は計り知れないと思うけど?」

「ああ。本当にワクワクするチャンスだと思う。加えて、ドリューが嘘をつくのがありえないのと同じか、それ以上に、アンドリューは嘘をつかないだろう。命にかけても、ここの人たちは信頼しようと思ってるんだ」

この人の南部訛りはすごく魅力的だった。誠実だし、才能もある人のように思えた。誠実さというのは双方向的に作用するのかもしれない。アドキンズ一家は、ジェイクについて誠実だと思わなかったら、そもそも、こういう申し出をしてないと思う。ジェイクについて何か重要なことを知っておかなくちゃと感じた。

「この件について、あなたの奥さんはどう思っているのかしら?」 わざとらしい質問と聞こえていなければいいけどと思いつつ訊いた。

ジェイクは微笑んだ。「いや、僕には奥さんはいないよ。残念ながら。今は、僕が心配しなくちゃいけないのは僕自身だけ」

嬉しい返事。「たくさん出張しなくちゃいけなくなるのかしら? というか、かなり交渉の仕事があるような感じだけど」

「ドリューによると、交渉の大半はリモートでできるらしい。まあ、特にニューヨークとシリコンバレーには何回か行かなくちゃいけなくなるのは確かだけど。ワシントン州もあるかな。でも、あんまり出張はないと思う。出張はうんざりと思うほどにはならないと思う」

「何だか、彼らの提案を受ける方向に傾いているように聞こえるけど?」

ジェイクはそこまでは気持ちができているわけじゃなかった。「まあ、彼らがどんなのを用意しているのか見てみようと思ってるんだ。そうしてから、決断しようかなと」

そんな時、アドキンズ一家が、部屋へと集まり始めた。アンドリューは部屋に来ると、ひとつの壁にあるドアを開いた。そこには見たこともないほど巨大なフラットのテレビがあった。これを買うにはひと財産使ったはず。ここの人たち、本当にすごいおカネを持っているんだろうな。

とうとう、みんなが集まった。ドニーとディアドラは並んでひとつのカウチに座った。それぞれ男の子を膝に抱いている。どっちの子も親指をしゃぶっていた。アンドリューは左右の膝のそれぞれに女の子を乗せて、リクライニングに座った。もうひとり幼い女の子はジェイクの膝に登った。子供のなつき具合から、ジェイクが前にもこの家に来たことがあるのは明らかだった。

もうひとり女の子がいたはず。その子が私の膝に乗りたがるかもしれないと思って、部屋を見回したけれど、どこにもいなかった。

テレビのスイッチが入り、映画が始まった。多分、ディズニーの子供向けの映画だろうなと想像していたが、実際は、60年代の古い映画だった。主演はポール・ニューマンとジョアン・ウッドワード(参考)。「パリが恋するとき」(参考)という映画。観たことがないと思うけれど、とても良い映画だったと認めざるを得ない。軽いコメディー映画だった。

ジョアン・ウッドワードは、冴えないファッションデザイナーで、重要なデザイナーのデザインを盗むためにパリに派遣される女性の役。一方のポール・ニューマンは新聞記者だが、上司の妻を寝取ったためパリに左遷される男の役。

子供たちは、ひとり、またひとりと大人たちの膝から降り、床に寝転がって映画を見ていた。私は、残る最後の女の子はどこにいったのかと、いまだに不思議に思っていた。


[2021/05/20] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (10) 


私は引き続きアンドリューに質問した。「さっき、あなたは、その新しいOSとかいうの、売り出したいモノのひとつだって言っていたわよね? ということは、もうひとつは何?」

「それは今夜、もう少ししたら見ることになるよ。30分くらいで、デモを見せられると思う」

まあ、そうね。2つ目の製品を見てみたら、ひとつ目の製品の価値についてヒントを得られるかもしれない。

今度はエマに顔を向けて訊いた。「エディとイディが何をしてるかは分かったわ。それに、エレは財務関係を担当ということよね? でも、エマ、あなたはどんなことを計画してるの?」

「アメリカ合衆国の大統領になるつもり」

私は笑い出した。「まあ、小さな女の子にしては、すごく大きな夢ね」

アンドリューがちょっと苦笑いした。「いや、その子にとっては、そんなに大きな夢というわけじゃないよ」

エマは父親に笑顔を見せた。「年齢制限を変える方法を見つけたらだけど、大統領になれと言われたら、次の選挙でなれるわ。共和党は、自分たちだけがタッチスクリーンの投票装置を設置できると思ってるけど、いずれ、あの人たちびっくりすることになるんじゃないかな」

私は愕然としていた。この子が大統領? 投票装置の設置って、何の話しなの?

奥さんのひとりが口を挟んで、この話題を止めさせた。「エマ? ディナーでは政治の話しはしないってことになっているでしょ?」

「ベッドでもね。そっちのことは忘れたの?」とエマが口答えした。

アンドリューもエマの話しはもう充分だと思った様子だった。「まあ、それでディナーは終わりってことになるかな? じゃあ、デザートの代わりに、ポップコーンとジュースを手に映画でも観るっていうのは、どうかな?」

映画

ジェイクと私は奥の部屋へと移動した。アンドリューとふたりの妻たちは、食卓の後片付けをしている。Eキッズたちも、それぞれ、後片付けで担当する仕事があるようだ。

ジェイクと一緒にカウチに腰を降ろした。この部屋は、多人数に対応できるようになっているのは明らかだった。この家族は大家族なのだから。ジェイクとは、ここに来てからほとんど会話をしていなかった。もちろん、私は、彼の話しに興味がないわけでは決してない。


[2021/05/16] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (9) 


「私たちのOSには特別のタッチスクリーンが必要だけど、それはお姉さんたちが開発したわ。たいていのコントロール関係はキーボードやポインティングディバイスなしで操作できる。だってタッチスクリーンがポインティングディバイスになっているから……」

「……タッチスクリーンがあるので、画面の隅に小さなスキャナーも付けたの。そのおかげでログインの手間がいらなくなったわ。画面の隅を指で触ると、システムが認識して、自動的にデスクトップに連れて行ってくれる。指紋が認識されなかったら、ログインできない」

ジェイクが訊いた。「でも、障碍者の人とか指を失った人はどうする?」

エマがちょっと憐れむような顔でジェイクを見た。「お願い、ジェイク。今、何をしてるところかみんな分かってると思うけど? 今は一般的な情報を伝えてるところなの。誰でも分かる例外事項についてはすでにしっかりカバーしてるわ。『もし……だったらどうする?』という話しに入っていいなら、パパのような口調で話し始めるけど、それでもいいの?」

アンドリューは憮然とした顔をした。「僕は会話に参加すらしてないのに、どうしてバカにされるようなこと言われるんだ?」

エマが父親に向かって言った。「気にしないで、パパ。パパは、私たちにとっては、好ましいホモサピエンスだから」

それを聞いて彼は気を取り直したようだった。

「とにかく、ユーザーインタフェースには難度に関して複数のレベルを組み込んだの。だから、OSは子供にも、10代の若者にも、普通の大人にも、コンピュータおたくにも快適に使えるようになってる。すべてのオプションがユーザーの能力レベルに感応するようになってるから」

アンドリューが口を挟んだ。「みんな全体像は理解したと思う。次は、マイクロソフトの独占に風穴を開けることに興味がありそうな主要コンピュータメーカーとの交渉をしなければならない。僕はIBMを考えている。IBMはここんところUNIXをプッシュしているからね。まあ、IBMでなくても、そういう意識の会社。もちろん、この試みの先鋒を務めるには法的な面にもしっかり神経を払う必要がある……」


「……そのうえでだけど、ジェイク。僕たちは目の前の小さなジャガイモを食べるかどうかを話してるんじゃないんだ。マイクロソフトを相手にいくらかでも先を行けるようになるためには、おカネが重要な意味を持ってくるかもしれない。何十億ドルというレベルの話しで。このOSがあればウィンドウズはぶっ飛ばせるということは、君に保証できるよ」

「そのOSだけど、ちょっと見せてもらえるかな?」とジェイクが訊いた。

ようやく、ふたりのコンピュータおたくの子供たちのうち、ひとりが口を開いた。「僕たち、OSのベータ版を装着したパソコンをあげるよ」

もうひとりが後をつないだ。「仕事に使ってもいいよ」

最初の子が言った。「勝手にネットにつながって認識されるから大丈夫」

2番目の子が言った。「それ、サーバーにすることもできるよ。もしそうしたかったらだけど」

「サーバーにするソフトのためにおカネを使わなくてもね」と最初の子。

エマが声をあげた。「これは、コンピュータを家庭や職場にある他の家電のようにするための長い道を進むための試みなの。ワイヤを差し込んだら、あとはコンピュータが残りのことをやってくれるようにしたい。多分、自分は宇宙の秘密を知ってると思いたがってるわずかなコンピュータおたくたちは怒るだろうけど、平均的なホモサピエンスは、そういうコンピュータを大歓迎するはず」

アンドリューが引き継いだ。「残るステップは、ネットとの接続ポートをひとつに限定したパソコンを作るよう、製造者を説得しなくてはいけないこと。同時に、周辺の製造者には、ポートは同じタイプになるハードウェアを使うよう納得してもらわなければならない。多分USBポートになると思うけど。そうすることによって、何をどこに差し込むかに迷いがなくなることになると思う。どんな装置もどこに差し込んでも構わないと、そういう状況を作る。過去の製品に配慮して整合性を保証するなんて、くそくらえって」

私は、何が話し合われているのか、部分的にしかはっきりしなかったが、大きな話が進んでいることは分かったし、それが本当だとも理解した。


[2021/05/10] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (8) 

食卓の話題は他のことに変わっていたけど、私は、まだ、7歳の子供がコンピュータ・ゲームに仕掛けをするなんてことが可能だという事実にこだわろうとしていた。

奥さんのひとりが言った。「ジェイク? 私たちの提案について、考えてくれた?」

「ディアドラ? よく分からないけど、僕としては、執行人の役は嫌いじゃないよ」

私は会話に飛び込んだ。このジェイクという男、いい男だし、賢そうなのは確か。

「何の話なんですか?」

ディアドラと呼ばれてる方の奥さんが言った。「私たち、ジェイクに、私たちのビジネスの法律面を担当してほしいと頼んできてるの。かなり大きなことが私たちにどっと押し寄せてきていて、こっちの本拠地をカバーする必要があるのよ。法的に」

私は驚いた。「フルタイムの弁護士に扱ってもらわなければならないとは、いったいどんなことをしてるんですか?」

アンドリューが答えた。

「エディとエッダがいくつか製品を開発してね。それを市場に売りに出そうと決めたんだ。僕が思っている通りに最大級の開発になったら、ジェイクには法律関係のスタッフのマネジメントをしてもらうことになるだろう。個々の仕事については専門の法律家を雇うつもりだけど、法律関係の統括には、僕らが本当に信頼できる人物に担当してほしいからね。法関係の仕事はかなり膨大になる見込みなんだ……。だから、いいだろ、ジェイク! 楽しい仕事になるよ。麻薬のディーラとか交通違反者の相手には飽き飽きしてるんじゃないのか? マイクロソフトやソニーを相手にしたいんじゃないのか?」

私はただの雑文ライターなのは知っている。だけど、この話しは特ダネになるのは知っていた。

「マイクロソフトやソニーを相手にしなければならないようなモノって、何を開発したんですか?」

エマが言った。

「エディとエッダはコンピュータおたくなんだけど、5歳の時に新しいオペレーティング・システム(OS)を書いたの。ウィンドウズはクソ! それは、みんな知ってること。ユニックスは悪くないけど、やっぱり穴だらけ。それにアップルなんてプレーヤーですらない。私たち、安全なOSが必要だったので、エディとエッダが自分たち用に書いたの。それを見て、私は、それ、売ってもいいかもと思ったわ。そこでそのOSを売り物にするにはどうしたらよいか、教えたの」

7歳の子供の口からこんなことを聞かされてるなんて、信じられなかった。

「それ、どんなふうに動くの?」

エマはテーブルの向い側にいる姉妹たちを見た。まるで、代弁してよいか許可を求めているようだった。そして、ふたりのうちのひとりが、ほとんど感知できないほど小さく頷くのを見た。

「まず、そのOSは完全に安全。私、アレを何ヶ月も攻撃したんだけど、結局、ブレークできなかったわ」

アンドリューが割り込む必要を感じたらしい。「ヘレンさん、悪いが、この部分はオフレコで。ただ、これだけ言えば充分だろう。もしエミーがハッキングできないなら、誰にもハッキングできないだろう、と」

エマは続けた。「とにかく、それはハードウェアを自動的に認識するの。特にみょうちきりんなモノじゃなければ、ドライバも必要ないわ。どんな妙なドライバもOSが勝手に探しに出て行って、取ってきて、操作者の介在なしにインストールするの。ブラウザも必要ないわ。OS自体がブラウザだから」

アンドリューが割り込んだ。「そこなんだよ、ジェイク! マイクロソフトはインターネット・エクスプローラをウィンドウズに組み込もうとして訴えられた。僕たちも、OS内部にブラウザを入れたら訴えられるだろう。それが、僕たちが準備しておかなければならないことのひとつなんだ。もっとも、僕たちの方のOSにとってはブラウザは完全に一体化してるけどね。まったく継目がないんだ。どこからどこまでがOSで、どこからがブラウザか、分からないと思うよ」

エマは「黙っててよ、ほんとに!」と言わんばかりの目で父親を睨み、話しを続けた。


[2014/11/05] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (7) 


ディナーが始まると、女の子たちは食事に集中したので、事態はようやく落ち着いてきた感じになった。アンドリューは何か言うことがあったらしく、平然と講義を開始した。この人は確かに変人だわ。ここのお嬢さんたちが誰から性質を受け継いだのか、分かったような気がした。

「僕は前からコンピュータのゲームのソリテアについて考えてきた。そして、そのゲームが以前よりも僕が負けるように変わってきていると納得したんだ。1000回分くらい、ゲームの統計分析をしている。分かったことは、もし僕がエースを2枚引くと、次に僕が引くカードがハート、スペード、クラブ、ダイアで別の種類の2枚になる確率が73.5%になること。そしてエースを3枚引くと、次に引くカードが残りの種類のカードになる確率が47.3%だということ。統計的に充分大きなデータをもとにすると、これは数学的に言って妥当ではないということなんだ」

奥さんのひとりが言った。「アンドリュー? 私たちが初めて出会った時のことを覚えている? あなた、私たちに、自分は他の人がとてつもなくつまらないと思うことに興味を惹かれることがあるんだって言ってたわよね? 信じて、いま言ってることがそれに当たるわ」

ジェイクが言った。「お前、パソコンでソリテアをやってるのか? 単に手札の分布を分析するために、何時間もパソコンの前に座って1000回もゲームしていたって? いったい何のために?」

アンドリューは守勢に回った顔をした。「リラックスできるんだよ!」

ジェイクは頭を振った。「おいおい、俺はお前を世界で一番リラックスしてる男とばかり思っていたぜ」

エマが弟のひとりに話しかけた。「というのも、パパはいつもヤラレテルから」

その弟はニヤリとして言った。「うん、パパはいつもヤラレテルね」

アンドリューが口を出した。「カラハリ砂漠に行って、そこのブッシュマンに、アンドリュー・アドキンズは誰かと訊いてみればいいさ。そいつは、『いつもヤラレテル男だね』と答えるだろうよ。世界中の誰もが僕の性生活について知ってるようだ」

彼の奥さんが言った。「ええ、そうよ。そして私たちみんなそれを誇りに思ってる」

アンドリューはソリテアの話しから離れたくないようだった。「でも、考えてみてくれ。僕はトランプゲームで不規則性を暴いたということ。そんなふうにはなってはいけないはずなんだ。以前よりかなり勝率が落ちている。僕はその理由について理論を考えてるところなんだ」

彼の奥さんが私に言った。「アンドリューは理論作りがとても得意なの。中には本当に興味深い理論もあるんだけどね」

アンドリューは彼女をちょっと睨みつけ、話しを続けた。

「この現象を引き起こしてる原因は何だろうか? ちょっと考えてみよう。(A)お前はソリテアをやりすぎなのだよと教える、マイクロソフトなりの方法。ゲームのプレイ回数が一定数に達すると、自動的に勝率を落とすように前もってプログラムされているということ。(B)もうひとつは……ちょっと今のところ、(B)については思いついていないんだが」

その時、私の隣に座っているエマがじっと料理の皿を見つめているのに気がついた。どうやら、豆を皿の横においてあるナイフの下に隠れるように料理をいじっている様子だった。

アンドリューが言った。「オーケー、その(B)だ」 と何かひらめいた様子で目を輝かせていた。「(B)エミー! まず第1に、エミー? その豆をナイフの陰に隠せるとでも思っているのかい? ちゃんと食べて、片付けること。第2に、君はずるい子だね。パパのソリテアのゲームに何か仕掛けただろう!」

エマは、あのとても純真そうな顔をして彼を見つめた。この表情は実は罪を認めたことを表していると、私も理解しつつあった。「私じゃないわ、パパ。どうして私が?」

「君はパパを苦しめるのが好きなんだね?」

彼女はちょっとウインクした。「でも、パパは楽しそうに分析していたじゃない? パパの生活にちょっとだけ集中すべきことを与えたいと思っただけなの」

「自分のことに集中してくれ」 とアンドリューが呟くのが聞こえた。


[2014/10/22] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (6) 

エマが割り込んだ。「パパ? テレパシーを使っていない時があると思う?」

アンドリューは警告を与える感じでエマを睨みつけた。「いいかげんにしなさい、エミー! 少なくとも君とエレはサーカスの変人のような話し方はしないだろ?」

エレが言った。「私たちは」

エマが「しないわよ」

エレが「だって」

「私の」とエマ。

「妹は」とエレ。

「とても」とエマ。

「むかつく」とエレ。

「んだもの」とエマ。

アンドリューは諦めた顔になった。「もうやめてくれ。いいね?」

この頃には、奥さんたちが料理を出していた。とても美味しそうな料理でもてなされて、私は驚いてしまった。美しく調理されたラム肉。ミディアム・レアで、何らかのソースがかけられている。お肉の横には、私には分からない何かの野菜とちょっとマフィンっぽいものが添えられていた。それも私には何だか分からなかった。でも、とても綺麗に盛りつけられている。

アンドリューは、怪訝な顔をした私の表情を読みとったらしい。「これはフィールド・ピーです。赤エンドウマメですね。それとトウモロコシを揚げたもの。これはラム肉の南部風に揚げた料理と言っていいでしょう。郷に入れば郷に従えという感じで……」

私は、怪訝な顔をして申し訳ないという感じで微笑んだ。

「これ、絶対、美味しいでしょうね」

実際はこの言葉とはちょっと違う印象を持っていた。本当に美味しそうということ。どの料理も本当に素敵だった。

食べ始めると、エマが私に身体を傾け、質問した。

「ギャモンさん? 誰か決まった彼氏はいるの?」

ちょっと、子供にしてはおませな質問だわねと思ったけど、正直に答えた。

「いいえ、今は何人かの彼氏と掛け持ちよ」

するとエマはさらに私に顔を寄せ、耳元に囁きかけた。「女の人ともつきあってるんでしょ?」

私は思わずフォークを落としてしまった。すごいショック!

アンドリューも驚いたとまでは言えないけれど、私が驚いたことに気づいた。

「エミー! 好きなことをしていいが、ここではダメ!」

「オーケー、ボス!」 とエマは答えた。その時の彼女は、本当に、無邪気さを絵に描いたような顔をしていた。


[2014/10/06] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (5) 


ディナー

私は、ジョアン・ウッドワードが子供だったらどんな顔になるか、考えたことはなかったと思うけれど、突然、あの4人の、ほぼ同じ顔の女の子たちと対面した瞬間、ああ、ジョアン・ウッドワードが子供だったら、こういう感じだろうなと思った。綺麗な、肩先までの長さのブロンドの巻き毛の髪。どの子も、歯が抜け変わる時期で、歯が欠けている。いずれも、この子たちの母親を子供にしたような印象。小柄で、すらりと痩せていて、そして美人。

すると茶髪の可愛い男の子がふたり、走って、部屋に入ってきた。この子たちには、父親の面影を見てとることができるだろう。ふたりとも、すでに、年上である娘さんたちと同じくらいの背の高さになっている。

6人も子供たちがいるので、家の中はカオスと混乱状態で、騒々しくて、神経が苛立つ状態になっていると思うかもしれない。でも、この子たちはほとんど声を上げなかった。女の子のうちふたりは、一言も言わなかった。もう一人はちょっと意見を言ったけど、基本的に物静かだった。

4人目の娘さんがコメンテーターの役割を担っているらしい。ダイニング・ルームに入ってきた時から、みんなが席に座るまで、ずっと、しゃべり続けていた。父親のアンドリューが表情で黙らせるまで、おしゃべりしっぱなし。アンドリューは何も言わなかったし、その子もアンドリューの顔を見たようでもなかったのに、不思議だった。ともあれ、アンドリューが黙ってほしいといった表情を顔に浮かべた途端、その子はぴったりとおしゃべりをやめ、その後になって、父親の方を向いて、ウインクしたのだった。アンドリューは不機嫌そうな顔をしようとしていたけれど、作った顔つきなのは明らかだった。その子の名前はエマ。

奥さんのひとりが、私をお子さんたちに紹介してくれた。

「みんな? こちらは、ヘレン・ギャモンさん。ヘレン? これが、うちのEガールとEボーイよ。男の子は、イーサンとエリック。テーブルを隔てて、あなたの正面にいるふたりは、イディとエディ。左側の子がイディ」

するとアンドリューが割り込んだ。「あ、ディ・ディ? イディは右側だよ」

「あらそう? まあ、どちらにせよ、実際、あまり問題はないわよね? ひとりに話しかければ、ふたりに話しかけてるのと同じになるから。そうでしょ、みんな?」

ディアドラが、テーブルの向こうの娘さんたちにそう訊くと、ふたりとも、同時ににっこり笑って、首を縦に振った。ふたりは互いの目を覗きこんで、くすくす笑い出した。

アンドリューがその娘さんたちに言った。「何か言いたいことがあるなら、みんなに言っていいんだよ。で、何を言いたいの?」

右側の子、たぶんエディだと思うけど、「いいえ」と言った。

左側の子は、イディかしら? 「パパ」と言った。

右側が「私たち」

左側が「何も」

右側が「言いたい」

左側が「ことなんて」

右側が「ないわ」

左側が「よね?」

アンドリューが子供たちを叱った。「ふたりとも、ルールのことは知ってるよね? ふたりで話す時には、単語を交互に言うのは禁止。それ、迷惑なんだからね?」

右側が「オーケー、パパ」

左側が「わたしたち」

右側が「もう二度と」

左側が「これ」

右側が「しませんから」

左側が「それが」

右側が「パパが」

左側が「私たちに」

右側が「求めている」

左側が「ことなんでしょう?」

アンドリューは顔をしかめた。「ああ、とても楽しいねえ! どうか、今夜はずっとその調子で文を続けてくれないか」

私はビックリして、アンドリューに尋ねた。「このお子さんたち、どうやって、今のを?」

彼は頭を左右に振った。「知りませんよ。双子というのは、こんな感じなのかも。このふたりは、テレパシーを使ってるんじゃないかと思う時があるんです」


[2014/09/29] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (4) 

ジェイクは妻たちを見た。

「アンドリューから聞いたけど、君たちこの家では『プレーボーイ』を許さないんだって? これはどうするつもり?」

ドニーがくすくす笑った。「コーヒーテーブルの上に置いておくわよ。主人は有名人ですもの。アメリカは偉大な国でしょ?」

アンドリューが口を挟んだ。「僕は最後に『プレーボーイ』を買ったのは大学の時だった。僕の知り合いに、『プレーボーイ』のビンテージ・コレクションを集めてたヤツがいたけど、10年分は集めてたんじゃないかな。なぜか知らないが、そいつは卒業した時、そのコレクションを持っていこうとしなかった。全部売り払ってしまったよ……」

「……そのコレクションを見て、それを使ってやってみたいと思ったことがあったんだ。グラント・ウッズの『アメリカン・ゴシック』(参考)という絵を見たことがあるかい? 気難しそうな農民の男女の絵。家の前に立っていて、男は熊手を持っていて、女は山奥のおばあちゃんみたいな顔をしているの。僕はあの絵の複製プリントを買って、寮の壁にかけたんだ。それから『プレーボーイ』誌の中開きピンナップ写真を10年分調べて、ちょうど良いサイズでぴったりのポーズをとってる写真を見つけた。で、その女の子の顔の部分は切り取って、ボディ部分だけを取り出し、絵のおばあちゃんの顔の下に張りつけた。どうしてか理由は分からないけど、そうしたら隣に立つ農夫が前よりハッピーそうな顔になったように思ったよ」

アンドリューがこの意見を述べている間、誰もが彼を驚きと憐れみが混じった顔をして見ていた。

ジェイクが言った。「おい、アンドリュー、ちょっと僕としては心配なのは、君が、今日チャンスがあったら同じダメダメなことをするんじゃないかってことなんだが」

「もちろんするよ。しないわけないじゃないか」

妻たちが立ち上がった。そのうちのひとりが言った。「もう、あなたったら。日光に当たりすぎだわ。脳に影響が出てきてると思う」

もうひとりの妻も言った。「日光が他のところに影響を与えてない限りは、どうでもいいんじゃない?」

アンドリューはふたりの妻の腕をとり、私たち5人は家の中に戻った。

ドニーが私に「アンドリューを犯す部屋」を見せてくれた。『プレーボーイ』誌に書かれていた通りの部屋だった。それから私は、ディナーの前にちょっとシャワーを浴びる時間をもらい、その後、アドキンズ一家と対面するためにディナールームに行った。


[2014/09/16] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (3) 

「おい、アンドリュー、こうしたらいいんじゃないかな? 君の方向にボールが飛んできたら、ラケットを振り上げて、ボールを打とうとしてみるんだよ。その後はどうなるか分からないけどね。運が良ければ、打ち返せるかもな」

そう言ってからかうジェイクを、アンドリューはうんざりした諦め顔で見た。アンドリューは立場が逆転している時でも、ためらうことなくジェイクに忠告をする人のような気がした。

「ほっといてくれ。今日は僕にとって最悪の日なんだ」

「君はテニス・イケメンだってよく言ってったよね。でも、今は、君はただのイケメンだと分かったわけだ。君のことを知って、僕はとても誇りに思うよ、創始者殿」

アンドリューは、見たところ、済まないと謝るような顔を彼の妻たちに向けた。彼はドニーが雑誌を読むのに没頭してるのを見た。彼女がドニーだと分かったのは、私が話しかけていた人がディアドラだったから。

「ああ、ドニー。君はそれを一日中、独占するつもりなのかい?」

ドニーは、広げたままの雑誌の写真から顔を上げた。まるで、アンドリューがいるのに、その時、気づいたような顔をした。

「アンドリュー! そこにいたの? あのね、私たちとても喜んでるの。私たちの夫が、一度にふたりもプレイメイトとヤッタって! この記事のコピーをあなたのお母様に送るべきだと思うの。お母様もきっととても自慢に思うと思うわ」

「ママは、僕には才能があるといつも言っていたけど、それがどんな才能なのか、僕にはずっと分からなかった。僕が何をしたって? 僕にも見せてくれる?」

ドニーはにんまりとした顔になって私に言った。「彼、この人たちが誰か、覚えてすらいないはずよ」

ジェイクも頭を縦に振った。「その通り。こいつは、彼女たち、どんな顔をしていた? って俺に聞いたんだ。俺はこう答えたよ。もし俺がプレイメイトふたりとベッドを共にすることになったら、絶対に顔を忘れたりしないってね。この男は病気なんだよ」

「その男には、見たことがある他の顔をすべて忘れさせてくれるような妻がふたりもいるんだ」

ドニーはそれを聞いても微笑みすらしなかった。彼女はそれをすでに知っていたから。ドニーは雑誌をアンドリューに渡した。アンドリューは中開きを見た。そこには見目麗しい美女がその肉体的魅力を見せびらかしている写真が載っていた。

彼は頷き、言った。「ああ、そう。このふたりね。ちょっと覚えていると思う。確か、名前がDで始まるよね? そうだろ?」

ディアドラはアンドリューの顔を見て、寛容な微笑を見せ、それから私に言った。

「彼がお相手した女性は全員、Dの文字で始まる名前をしているの。だから、彼、外れっこない推測を言っただけなのよ。彼は、IAMの中のD世代の女性に子供を授けてきてるの」

「そうだよ。それがいかにひどいことか! さらに悪いことに、僕には千人ほどの子供がいるというのに、そのいずれもEで始まる名前を持ってる。ギネスの世界記録集に掲載するか検討すべきじゃないのかな?」

ドニーが言った。「いいえ、本当の世界記録は、千人も子供がいて、その中、800人以上の女の子がいるにもかかわらず、エディスとエーテルとエドナという名前はひとりもないこと。一番ありふれた名前なのに。それこそが、アンドリューが生殖の前に相手の女性に同意を求める主要な条件なの」

アンドリューは自己弁護しようとした。「その名前が嫌いなんだよ。エーテルなんて名前の子供を欲しい人なんているのか?」

私には、創始者が人生について子供じみた考えを持ってるのが見てとれた。どうりで、ここにいる素晴らしい彼女たちが彼と一緒になっているのか腑に落ちた。彼はルックスは素敵だし、ベッドでも驚異的だし、知性にもあふれている。だけど、その一方で、無邪気だし、遊び心もある人なのだ。


[2014/04/15] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (2) 


「エマ? エマというのは娘さんのひとりですよね? 何か問題でも?」

彼女は笑いをやめたが、美しい瞳はまだ笑っているようだった。

「エマは家の可愛い問題児なの。去年、ラリーキングのショーに出た子よ」

私は微笑んだ。「ああ、あの娘さん! あの牧師にスワヒリ語であなたはデブのうすのろだと言った子!」

ドニーだかディアドラだか、どっちだかが言った。「エマにしては、アレは手柔らかな悪戯のほう。メディアがあの悪戯に気づくまで1週間かかったわ。この国では力があるとされてる人の誰もスワヒリ語を理解している人はいないみたい。でも、いくつかの報道機関がエマのジョークを説明した匿名のメールを受け取ったようね。それでアレが明るみになったと」

私は頭が混乱してきた。「報道機関が匿名のメールを受けた? 誰が送ったか、何か思いあたりでも?」

「エマには一度も訊いてはいないけど、エマは仕掛けた悪戯が人に気づかれないままでいるのが嫌いなのは確かね」

「アハハ、何て可愛い悪戯っ子なの。エマちゃんに会うのが今から楽しみ」

彼女は頷いた。「あなたがエマのことに興味を持つだろうなと思ってたわ。もしよかったら、今夜、エマをあなたの隣の席に座らせてあげる。そうしなくても、エマのことだからあなたに遊びを仕掛けるだろうから、エマがやりやすいようにしてもいいかもと思ってね。ところで、あなた、お肉は食べる? それともベジタリアン?」

「い、どちらでも。ご家族がお食べになるものなら何でも」

「家はふたつに分かれているの。アンドリューは食べられる時には肉を食べるわ。ジェイクがいるときはジェイクを言い訳にして肉を食べたがるの。だから、テニスをした時は彼が夕食を作って、彼とジェイクはいつも肉を食べるの」

私は驚いた。「テニスをした夜は、アンドリューさんが夕食を作るんですか?」

彼女は頷いた。「アンドリューは毎晩、夕食を作ってるわ。ここでは料理の大半は彼がしてるの。彼の方が私やドニーより料理が上手だから」

わーお! 私、今夜は、創始者がこさえた夕食を食べることになるのね。「もしよろしかったら、私も男性陣に加わって、お肉料理をいただいてもいいですか?」

「もちろん、大丈夫よ。今夜はアンドリューは子羊のばら肉の料理を作るはず」

私は遠慮しようとした。「ああ、どうかアンドリューさんに私のためにそんな手の込んだことをしないように言ってください。私は、ご家族のみなさんが食べるものなら何でも構わないんですから」

遠慮しても、彼女は受け取ろうとしなかった。「あなたは気にしないでね。子羊のバラ肉はアンドリューが大好きなの。彼はいつも、それを食べる言い訳を探しているのよ。それに、彼によると、それってとても簡単な料理らしいし。だから、子羊のバラ肉で決定ね。それじゃあ、お荷物をまとめて、例の「アンドリューを犯す部屋」に行って落ち着いてはいかがかしら? シャワーでも浴びて、さっぱりしてくださいね。夕食は6時半から。今夜は映画の夜なので、家のEキッズたちは、普段よりちょっと夜更かしできるの」

アンドリューとジェイクがテニス試合を終え、私たちのところにやってきた。アンドリューの顔に浮かぶ表情から、彼は負けたようだった。ジェイクはにんまりし、アンドリューにテニスについての講釈を垂れていた。


[2014/04/03] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)

デス・バイ・ファッキング 第17章 (1) 

「デス・バイ・ファッキング」 第17章 ディナーと映画 Death By Fucking Chapter 17: Dinner and a Movie by thebullet



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これまでのあらすじ

アンドリューはディアドラとドニーの双子姉妹と衝撃的な出会いをした。彼女たちには秘密があった。自分らが新人類かもしれないということ。アンドリューも同類という。二人から人類向上機構IAMと呼ばれる知力の高い人間の選択を目的とした組織について話しを聞いたアンドリューはディ・ディたちと結婚しIAM事業を引き継ぐ。彼らに生れた子供たちはみな天才であった。アンドリューは子供たちの心が読め、子供たちも人の心が読める。彼はIAMに属する双子たちとセックスを始める。繁殖が進みつつある頃、政府に関係する男が不法侵入した。アンドリューたちはその事件をきっかけに政府関係へ反撃を開始する。天才児たちの能力を使い、情報・財力・知識の面で世界に影響力を拡大し始めた。アンドリューは世間の話題となり、ヘレンという雑誌記者が取材に来た。

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7年目

ヘレンの話し

テニスコートにて。

私はドナとディアドラと一緒に腰をおろして、創始者が検事とテニスをするのを見ていた。私はニューヨーク出身なので、この人たちは文化的に洗練されていない人だろうと思っていた。こともあろうか、ジョージア州というド田舎に住んでいるわけだから。だから、ここはうんざりするような所で、この家族もうんざりするような家族だろうなと思っていた。私はとんでもない間違いをしていた。

ここの環境は本当に素晴らしい。この家は堂々とした古風な大邸宅。庭も良く手入れされていて、広々としている。この家族は穏やかで、知的でもあった。創始者はユーモアがあり、また男性としても素敵な人。私は、このいずれも予想していなかったと思う。

私は、この人物を批判的に突っつくような、イジワルなストーリーを考えていた。特に、この人物の奢り高ぶった部分を皮肉るような記事を書こうと思っていた。だが、彼は、奢り高ぶった人物などではまったくなかった。女性たちも、引っ込み思案の愚鈍な女性を想像していたが、実際は、自信に溢れた学識者だったのである。それに、彼女たちも、創始者と同じくらいセクシーだった。さらに彼らの友人という、ジェイクという男性すらも、私の興味を惹く男性だった。ここの人たちは良い生活をしている。

この美しくエレガントな人たちのそばにいるだけで、私のあそこはじっとりと濡れていた。創始者の妻のひとりが私に『プレーボーイ』誌の記事を読ませてくれた。それは、アンドリュー・アドキンズが、まさにこの家で双子のプレーメイトに奉仕をした時のことを書いた記事だった。

この記事を読みながら、優雅にテニスをする創始者をチラチラ見ていたけど、これは私にとってかなりシュールな体験だったように思う。ここの人たちは、どんなことがあっても、困ることがないように見えた。

記事を読んだ後、雑誌を返すと、その奥さんが言った。

「ヘレンさん、今夜は何か計画があるの? すぐにニューヨークにとんぼ返り?」

「いいえ、もし許してもらえるなら、帰るのは明日にして、このまま取材を続けたいのですが。あまりに訊きたいことがあって、どこから訊いてよいか分からないくらいなんです。とてもお恥ずかしいことなんですが、あなた方おふたりは、私が前もって想像していた人物とはまったく違っていました。書こうと思っていた記事の論調や色合いを、大きく変更しなければならなくなって…」

彼女は理解を示して微笑んだ。

「だったら、今夜、うちに泊っていったらどうかしら? ジェイクはテニスをしにくるといつも夕食までここにいるのよ。あなたも加わってくれる? 大歓迎なの。それに1階の来客用の部屋があるから、そこを使って。あの部屋は『アンドリューが犯される部屋』と呼んでるのよ。『プレーボーイ』の記事で出てきた部屋。ホワイトハウスのリンカーン・ルームとまでは言わないけど、少なくとも、何と言うか、不朽の名声を持つことになる部屋と言ってもいいかもしれないわ」

私は、この女性は、あの『プレーボーイ』の件をとても楽しんでると思った。自分の夫の旺盛な性的能力について案にほのめかすようなことを言った後、アンドリュー・アドキンズのような家族中心の地味で平凡な男がセックスの神という国際的に高名を得るなんて考えられないと言いたげに笑い飛ばしてる。

私はありふれたモーテルにでも泊ろうかと考えていた。それにここに来る途中で見かけたこじゃれたチェーン店で普通の料理を食べようかと思っていた。そうしたら、(多分)アメリカで最も並はずれた家族と一緒にお食事し、さらには、そこで寝たら確実に自慰をしたくなる(あるいは、誰か手伝ってくれる人がいるかもしれないけど)そんなお部屋に泊る機会を提供された。これは考えるまでもない。

私は喜んで、その寛大な申し出を受け入れた。「本当ですか? 無理をなさっていなければ良いのですが…」

彼女は歌うような声で笑って、それから、小さな手で口元を覆った。

「ここには、すでに大人3人、子供6人がいるの。加えてジェイクも。ひとり増えたからといって、ほとんど変わらないのよ。でも、これだけは注意させて。この家でのディナーは、未経験の人にとっては、騒々しいものだということ。エマがいると言うだけで充分ね。あ、それから、今夜は映画の夜だわ。全員が集まって、部屋で映画を見るの。エッダとエディが何か特別なのを用意してると聞いてるわ。何なのか私は知らないけど」


[2014/03/26] デス・バイ・ファッキング 第17章 | トラックバック(-) | CM(0)