「医者 Doctor」 Doctor by deirdre
夫が、医者が関わる淫らな妄想が好きなことは、何年も前から知っていた。ずいぶん前から、夫は、そういったプレーをしてみようと私を誘ってきていたけれど、私はいつも断っていた。でも、とうとう、夫と2人で素晴らしいディナーを食べに出かけた時、ワインもたくさん飲んでいたし、とても気分が良かったこともあって、「やってみてもいいかも」と思ったのだった。
「例のこと、してもいいわよ」
夫が、男性が見せる子供っぽくはしゃぎ喜ぶ様子を見せるのじゃないかと期待して、私は彼にそう告げた。だけど、驚いたことに、夫は全然、落ち着いたままだった。ただ1つ違ったことといえば、予想と違って、車は自宅には向かっていなかったことだった。
車は、結局、とある病院の建物のところに止まった。そして、気づくと、夫は私を裏門から中へ連れて行こうとしている。中は暗かった。裏門が施錠されておらず、簡単に開いたことも驚きだった。夫はドアが閉じないように注意深く抑えながら、私に入るように招いている。暗い病院の建物の中は、薄気味悪く、私がおどおどした態度を取っていたのも判ってもらえると思う。夫は暗い階段へ私を連れ、そこを上がっていった。階段を上りつつもすぐに、私は、どうしてエレベーターを使わないんだろうと不思議に思った。何階か登り、ようやく、ある廊下に出た。そこも暗かったが、廊下の突き当たりには窓があって、町の灯からの明かりでぼんやりと少しだけ様子が見て取れた。