バーバラとの関係は、バレンタイン・デーの辺りは少し持ち直した感じだった。バーバラはスティーブに近づき、「冷たくしてて、ごめんなさい」と、「まして、あのパーティの時の振る舞いには、本当に申し訳ない」と言っていた。それから1ヶ月ほど、2人は親密な夫婦生活を取り戻したと言える。
その頃、スティーブは大学の夜間授業のための宿題をする習慣になっていた。いまだに授業を受けに行かなくてはならない。その授業の場では、教授自身があいまいにしか把握していない概念を、飲み込みの悪い学生たちに説明するのを、さほど注意を払わず聞いていた。あと20時間だった。そのうち16時間分は大学で授業を受けなければならない。だが、それが終われば、スティーブは終了になっていた。そうなれば建築工学の学士号を得ることになり、すでに約束されている昇進のための最後の条件をクリアすることになる。
そして、3月末。スティーブはワシントンに出張しなければならなくなった。陸軍の建築工事担当をつかさどる工兵隊発注のプロジェクトの落札のために会社を代表して出向くことになったのだった。その出張自体は、土日を挟んでの2週間の出張であったが、帰路の途中で、リトル・ロックに立ち寄り、すでに2週間ほど予定から遅れている工事現場に関して、いくつか問題を解決するという仕事も任されたのだった。結局、彼は3週間、家を空けることになったのである。
出張から戻ると、バーバラは、夫婦生活に取り組むことにまったく興味を失っているように見えた。以前から2人の関係は冷たいものだといえたが、いまや氷のように冷え冷えしていた。バーバラは青白い顔で、体もだるそうにしていた。眠ることだけが、彼女の望みであるようにすら見えた。スティーブに対する態度もぎこちなかった。まるで彼がそばにいるのが嫌でたまらないという風にすら見えた。スティーブが出張する前に、徐々に復活しかかっていた二人の性生活は、彼が戻ってきたときにはゼロになってしまった。
彼は、間違っていたことが何であれ、ともかくそれを変えられるなら変えようと、あらゆる努力をした。だが、何もうまく行かなかった。ある日、スティーブは、バーバラに、笑えるようなEメールのグリーティング・カードを送ったが、彼女は、それをそのまま送り返した。付け加えられたメッセージもそっけないもので、彼の人をコントロールするような、操作するようなやり方にはうんざりしている、私を抑えつけるのはやめて、というメッセージだった。
確かに、こういうことが、すべてこの3ヶ月ほどの間に起きたわけだから、スティーブは、内心、バーバラの浮気については覚悟していたと言える。・・・ではあるものの、最初に出てきた実際の証拠には、大きなショックを受けていた。彼はもっと情報を必要としていた。新聞に載った低解像度の写真1枚では、ほとんど証拠にならない。例えば、この写真はトリミングされていると思うが、その写真のトリミングされていない全体を見てみる必要がある。本当にあの男の手は妻の尻を触っていたのかどうか、確める必要があった。
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