その日、イサベラは、常に警戒し注意深く距離を置きつつも、城の女たちと一緒に過ごした。女たちのお喋りを聞き流しつつ、一緒に美しい布地に繊細な花模様を刺繍して過ごした。イサベラは、長い間、練習していなかったこともあり、指がもつれてうまくいかない。夕暮れになり、頭痛がするとの口実で、ようやく女たちから抜け出られ、イサベラはほっとするのであった。
部屋に戻り、イサベラはベッドに横になりうつ伏せになった。服を着たままなのは不快だったが、メイドを呼んで脱ぐのを手伝ってもらう気にはならなかった。これから先、レオンに会えない日々のことを思い、頬に涙が伝った。レオンは自分のことなど気にしていないだろう。自分は復讐を達成するための人質に過ぎないのだ。だが、それを知りつつも、彼女の心と体の中の疼きを鎮めるには、何の役にも立たなかった。
どれくらい横になっていたか分からない。ぼんやりとしているうちに、やがて眠気が彼女の疲れた体を覆った。イサベラは、父親が強引に自分のベッドに入ってくるのではないかと心配し、この数日、ほとんど眠っていなかったのである。
眠りつつも、温かな唇を首の付け根に押しあてられるのを感じ、イサベラは甘い溜息をついた。指が背中を滑り、小さなガラスのボタンをもどかしそうに外している。
その男の匂いに包まれ、イサベラは眠ったまま、うっとりと吐息をついた。ビャクダンの香りと男性の匂いが混じった陶酔的な匂い。その匂いは、何日もの間、イサベラにまとわりついていた匂いだった。
男が、悪態を呟き、繊細なボタンを外すのをあきらめ、苛立ちつつ、幾重にも重なるレースのスカートを捲りあげた。イサベラは無意識に唇を歪ませた。
あらわになった生肌の尻の曲線に男の唇が押しあてられ、指で太ももと尻頬の滑らかな肌を触られるのを感じ、イサベラは小さく喘ぎ声をあげ、そして、かすれた声で呟いた。
「レオン…」
「しーっ」 と男は囁いた。
いまや男の指は彼女の太ももの間を探っていた。男は、優しく肉襞を広げながら、顔を上げ、イサベラの顔を見つめた。「お前を味わわせてくれ」
彼の舌が、太ももの間の湿って熱を帯びた部分に忍び込み、舐め、甘く噛むのを感じ、イサベラは身体をくねらせた。甘い吐息をつきながら、舌が割れ目を下り、入口をめぐり、そして中へと突き入ってくるのを受けとめる。
「あっ、ああんっ…」
イサベラはくねくねと身体を捩じらせ、男の愛撫を受け止め続けた。男は両手を伸ばし、彼女の尻頬をつかみ、しっかりと押さえながら、愛撫と焦らしを続けた。
突然、遠くで大きな音がするのを聞き、イサベラはハッと息を飲んだ。男が引き下がって行き、素早く彼女のスカートを元に戻すのを感じ、切なさに泣き声をあげた。
「行かなければならない…」 と男は彼女の耳元で呟き、イサベラの小ぶりの乳房を優しく揉んだ。「…だが、きっと帰ってくる。すべきことを済ませていないから…」
「レオン…」
イサベラは呟き、ゆっくりと頭を上げた。だが、暗い小部屋には誰の姿もなかった。
* * *