ドニーとアンドリューは、土曜日の午前10時に私のホテルに戻ってきた。ドニーは晴れ晴れとした顔をしていた。まさに「存分にやられまくった」顔と言い表せない顔をしていた。あの表情は、私も知ってる。これまでの人生で二度しか見たことがないけれど。木曜の朝に見たし、金曜の朝にも見た。どちらも鏡に映っていた表情だ。「やられた」顔と「存分にやられまくった」顔には大きな違いがある。私もドニーも「存分にやられまくって」いた。
ああ、なんてこと! 今週になるまで、私は「やる」という言葉すらめったに考えたことがなかったのに、今の私は、何度もその言葉を使っているし、その言葉で考えごとをしている。アンドリューのせいで、いつもセックスのことを考えるようになってしまってる。
二人が帰ってきたとき、私は、険しい表情をしてるように努めた。
「ドニー! どこに行ってたの? 夜中すぎにはベッドに入るべきじゃないの!」
ドニーは澄まし顔で答えた。「心配しないで、ディ・ディ。私、11時過ぎにはベッドに入っていたから」
アンドリューはちょっと困った顔をしていた。なので、彼を落ち着かせようとした。
「アンドリュー? 昨夜は楽しかったら良いけど…」 と言って、両手で彼の顔を優しく挟んでキスをした。
いいのよ、分かってる… そのキスに、言いたいことをすべて込めて伝えた。これでちゃんと隅々まで私の意図が分からなければ、彼はとんでもない間抜けだわ。…なるほど、この姉妹間のライバル心というのは、とてもポジティブな結果をもたらせるみたい。
アンドリューは呼吸が元通りに戻ると、ぎこちない感じで答えた。
「あ、ああ… うん… 良かったよ」
私はにっこり笑って彼の居心地の悪さを和らげようとした。
「アンドリュー? こういったことがあなたにとって初めてなのは分かるわ。私たちにとっても初めてのことなんだもの。でも、私たちのことを気にしないで。私たち二人とも、あなたが素敵な男性だって分かってるから。このかなり珍奇な関係については、ドニーと私でどうにかできるし、あなたもどうにかできると思うわ。そうでしょ? ドニー?」
私はアンドリューの右側に立っていた。ドニーは彼の左側で同じように立ってる。二人とも彼の腰に腕を回していた。彼の背中の真ん中で、ドニーと私の手が触れ合っていた。
「ディ・ディも私も、私たちの一方と愛し合った後だからって、もう一方の前で困ったような顔をしてほしくないのよ。私たち、あなたに出会うずっと前から、まさにこういう可能性については話し合ってきているの。私たちが愛せる男性を見つけたら、二人で一人の男性を分かち合うことに決めていたのよ。あなたのような男性を、二人、見つけたいって思っても、絶対、不可能だから。その役割を果たせるのが、あなたなの。あなたがその仕事を望むなら、の話しだけど… だから、困ったり恥ずかしがったりしないで。私たちの間に嫉妬が生じるんじゃないかなんて心配したりしないで。ライバル心かもしれないけど、嫉妬心では決してないから」
ドニーはこういうのが得意だ。論理的に話しをし、その後、ちょっとしたお色気で話しを締める。顔にはアンドリューに対する憧れの表情が浮かんでいて、右手は彼のお尻をさすってるので、なおさら説得力がある。
それでもアンドリューはちょっと居心地が悪そうな顔をしていた。
「ライバル心って?」
これに対する応答は私が受け持った。
「だってそうでしょ、アンドリュー? 今まで二人の女性から愛情を向けられたらどうなるだろうって考えたことないの? ドニーは、私がすぐにあなたと一緒になっても気にしないと言ってるの。でも、絶対ドニーは、昨夜、もうちょっといろんなことしたはずよ。だから、彼女と一緒になるというのがどういうことか忘れてはいないと思うけど?」
ドニーはまたも澄まし顔になった。「もうちょっといろんなことをしたのは、昨夜ばかりでなくて今朝もだけど」
私は思わず笑ってしまった。
「もう、ドニーって淫乱なのね! 道理でアンドリューが好きになるはず。アンドリュー? 私たち3人とも、もう少し、この状況に慣れる必要がありそうよ。でも、お願いだから、嫉妬心のことは気にしないで。他の女となら、あなたを共有したりは決してできない。でもドニーは『他の女』じゃないの。そしてドニーも同じように感じているの」