アンドリューの話し「次の世代」とは… 一体、どういう意味なんだろう? 彼女たちはちょっと言葉遊びをして、僕がどう反応するか知りたがっているのだろう。ふざけ半分で僕に餌を撒いてるのだ。なら僕も遊ぼう。彼女たちの遊びにつきあうのも悪くない。
だが、何かが僕に、これはただの遊びじゃないぞと言っている。「次の世代」って… 多分、その言葉から何かを推測するように求められているのだろうが、僕にはスタートレック(
参考)のことしか思いつかない。
僕たちは階下のレストランに入った。僕は昼食を注文した。朝食か昼食かの選択肢があったならの話しだが、僕の気分では朝食ではなく昼食だった。
彼女たちは二人ともマッシュルーム・オムレツを注文した。二人は、ベジタリアンかどうかは別として、卵は食べるらしい。ジュリア・チャイルド(
参考)の「シャンパンはいつでも適切」との助言に従って、マム(
参考)を1本注文した。
おい、これって昨夜、成功したことじゃないか。ひょっとするとまた良いことがあるかもしれない。何日間だろう…この3日間に僕は少なくとも8回はしている。それでもエッチな気分は少しも衰えない。ああ、そうだよ、フェラチオもしてもらったんだ。これって、素晴らしい人生じゃないか。そうじゃないとしたら何なのだと言うんだ。
僕たちは他の客から離れたテーブルについた。ウェイターに案内されるとき、彼女たちが強く求めたことだった。人に聞かれたくない話しがあるらしい。
「二人とも、人の関心を惹きつけたくないなら、麻袋を被ってくるべきだったね」 と僕は言った。
二人とも、あの瞳を輝かすような笑みを浮かべた。でも、ディ・ディは僕の冗談にはつきあわなかった。
「アンドリュー? あなたの子供時代のことについてちょっとお話ししてくれる? 学校はどんなだったの?」
「ディ・ディ、質問をするのは僕の方で、答えるのは君たちになると思っていたけど?」
「そんなに急がないで、アンドリュー。あなたに答えてもらうことで、私たち、あなたの質問の大半に答えることができるようになると思うから。… それで? 子供時代はどうだったの?」
「僕が?」
「あなたが。子供のころ、学校ではどうだったか、お話して?」
ちぇっ、どうしてこの話題が出てこなければいけないんだろう? 僕が知性面では頭一つ突き抜けてるのは誰にも充分はっきりしていると思っていたのに。でも、今は、ディ・ディたちはそれを証明したがってる。まあ、いいさ。
「学校は最低だった。1年生の時の先生は、僕のことを白痴だと思っていた。その先生は学年の終わりの時点で僕の進級をためらって、知的に障害を持った子供のためのクラスに入れた方が良いと思っていたんだ。君たちは、そういうことを聞きたいの?」
ドニーが言った。「ご両親はあなたが学校に行く前は、あなたの知性についてどう思っていたの?」
「どう思っていたと思う? 親だからね。親は僕のことを、キラ星の優秀児と思っていたよ。最も賢くて、最も独創性がある子供だと。他のどの親とも同じさ」
今度はディ・ディが訊いた。「それで、ご両親は1年生の時の先生の助言を受け入れたの?」
「いや、もちろんそうはならなかった。親はカンカンに怒ったよ。僕をテストすべきだと言い張った。親は、あのナチは自分で何を言ってるのか分かっていないと証明したかったんだ」
「ナチ? ああ、あなたの先生のことね。どうしてその先生をナチだって言うの?」 質問するのはディ・ディが中心になっていた。
「あのクラスでは誰もが命令に従わなければいけなかったんだ。ちゃんと整列すること。ちょろちょろしない。指図を厳守する。先生の権威に疑問を挟まない。先生の論理に疑問を持たない。先生の答えに疑問を持たない。疑問を持ってはいけない。申し訳ないが、僕は疑問を持っていた。先生はそんな僕を我慢できなかったんだと思う」
「それで、学区の教育委員はあなたをテストしたの?」
「ああ。何かIQテストのようなものを受けたよ。何かなんて分からないよ。僕は6歳だったし。少なくとも小さな勝利の瞬間を味わったのは事実。僕の両親と教育関係の心理学者とのミーティングに、あのヒトラー先生も同席していた。そこで心理学者が結果を発表したわけ。僕のスコアは上位10%にいるって。しかも高2レベルでの10%と」
ドニーとディ・ディは互いに顔を見合わせた。ディ・ディが質問を続けた。
「それで教育委員はあなたをどうしたの?」
「直ちに判断を下したよ。次の学期は、僕を知的障害者のクラスに入れるとね。心理学者が言うには、スコアは何も意味せず、僕はおそらく一種の白痴サヴァン(
参考)だろうって」
「あなたのご両親は、その決定に従ったの?」
「従ったよ。僕を連れてそのミーティングから飛び出し、例の学校から僕を退学させるまでの間はね。あの学校では、僕は1年生すら終了しなかったことになる。両親は、クラス編成がとても小さくて、知性はどうあるべきかなどについて何の偏見も持っていない私立学校を見つけてくれた。でも、それで両親にはずいぶん家計の点で苦しめることになったんだけどね。分かるよね? 僕の家は金持ちでは決してなかったから」