数日後、仕事帰り、リンダはサラと一緒にカクテル・ラウンジでお酒を飲んでいた。何人か若者たちに声をかけられたが、二人はそれをうるさそうにふり払った。ようやく二人っきりになれたところだった。
「リンダ? 先週、あのパーティに来てくれて、とても嬉しいわ。楽しかったみたいね?」
「楽しかった、どころじゃないわ。私の人生で、唯一、最高の夜だったわ。少なくとも結婚してからは、最高の夜。私が言ってる意味分かるわよね? うふふ。あなたには、いくら感謝してもしきれないの」
「それで、ブルースはどうしてる?」
「そうねえ… ちょっと拗ねてるかな。だから、少しは気を使ってあげてるの」
「心配しなくていいわよ。じきに立ち直るから」
「そうだといいわね。ああ、でも、今夜でもジェームズに逢えたらって思ってるのよ。もう、私、夢中になってるみたい」
「あなたばかりでなく私もね。アハハ… いったん公式メンバーになったら、もう待つ必要はなくなるのよ。今夜、私の家にリロイが来るの。ビルは、そんな私たちのためにディナーの準備をするの」
「冗談じゃ?」
「いいえ、本当。だから私もここに来れてるのよ。旦那が家事をぜんぶやってるわ」
「ジェイムズが言ったことは本当なの? ビルが家事を全部やってるって」
「ええ、その通り。先週、お洗濯も仕事のリストに加えたわ。今は、毎週、1回は彼が夕食を作ることになってるの」
「わーお! ジェイムズが言ってたのは本当ね。黒人男を愛人にしたら、私たちどんどん夫に対するパワーをつけていくって… 夫じゃなくって、旦那だったわ…」
「あら、それは、まだ話しの半分よ。待っていなさい。ブルースは、あなたが男といるところをまだ見ていないでしょう? あなたが本当に支配力を持てるのは、まさにその時なんだから」
「…あのね? ちょっと変なんだけど、ブルースをそういう立場にさせると、私、一種、興奮しちゃうの。あのパーティの後、家に帰ってから、ブルースにクンニをさせて、それから自慰もさせたの。どうにでも簡単に操れる感じだったわ」
「すごいじゃない!」 とサラは笑った。
「あなたに見せたかったわ。私のパンティを顔に当てながら自慰をさせたのよ。なかなかの見世物だった。しかも、その後にもびっくりすることがあって、ブルースに、寝る前に私のパンティとストッキングを手洗いしてって言ったら、すごすごと言うことを聞いたところ!」
サラもリンダも、その光景を思い浮かべて、大笑いした。
「そのパターン、私も知ってる。黒に寝取られた旦那たちがたどる初期の兆候よ、それって! 次に来る大きなテストは、ブルースが、ジェイムズでも、誰か他の黒人男でもいいんだけど、その人に個人的に会員になる支援をしてくださいって頼まなければいけない時だと思うわ」
「そういうこともしなければいけないの?」 リンダは信じられない面持ちで訊いた。
「そうよ。それに、真剣に、説得力がある言い方でしなければいけないの。私も、ビルにそのスピーチの練習をさせたわ。私の前でね。もうビルったらものすごく真剣にやってるんで、私、笑いをこらえるのに精いっぱいだったのよ!」
「正直、それって、かなりのことよね」
「でも、これは誰もが通過しなければいけない大切な儀式なの。会員でなくても、3回はパーティに出られるわ。でも、その後は、だめになるの。もし、あなたも、飢えたあそこで美味しい黒棒を食べ続けたいと思ったら、ブルースもちゃんと宣誓して、忠誠を誓わなければいけないの」
「うわー… でも、ブルースがそれをするところ、ぜひ見てみたいわ」
「その儀式が、大きな転換点になるはずよ。ブルースは、ジェイムズであれ誰であれ、その人の目をまっすぐに見て、切々と訴えなければいけないの。自分の妻はこのクラブの男性を是非とも必要としてるんです。自分には与えることができないものをあなた様なら与えることができるからです。ですから、どうかお願いいたします。私ども二人を会員にすることを、どうかご検討してくださいって… そう言うのよ。でも、彼らはそうやすやすと旦那たちに許可を出さないの。なかなか認めないので、旦那たちは、身をよじって懇願し、汗もかくことになるわ。その時点で、ブルースは、もしかして、あなたをがっかりさせてしまうんじゃないかって、すごく心配するはず。心配のあまり、ジェイムズたちに承認してもらうために、何でもするし、どんなことでも言うと思うわよ。それを見たら、あなた、すごいびっくりすると思う」