ジョージは悪くはなかった… まあ、それなりに家事をこなそうと努力はしていたし、食費については分担してくれて、その点では貢献してくれた。それでも、私はこういう状況にどこか居心地の悪さを感じていた。
だけど、その後、春学期が始まるとすぐに、ダイアンとジョージは大喧嘩をしてしまったのだった。それがあってから数日間、ダイアンはアパートの中、ふさぎこんでぶらぶらしていたけれど、その後、突然、彼女は、学校をやめて故郷に帰ると宣言したのだった。
「もう我慢が出来ないの!」 私が説得しようとしたら、彼女が言った。
「だめよ、ダイアン! 私、どうしたらいいの?」
「あなたはとてもいい人だわ」
「でも、ダイアンがいなくなったら、どうやって家賃を払ったらいいか分からないわ」 私ひとりでは家賃は払えなかった。
「ここに引っ越した時は、半分、払えてていたじゃない?」
「でも、ここに私だけになるでしょう? 誰かほかの人を探さなくちゃいけないわ」
「いいえ、そうはならないわ… ジョージは引っ越さないもの」
「えっ、そんな、ダイアン! ジョージはいられないはず」
でも、実際、ジョージは残ることになってしまった。私は愕然とした。大学を卒業するまで、ここでずっとジョージとアパートをシェアしていかなければいけないとは!
ジョージは、こんな遅い時期になってしまっては他の住処を探すのは不可能だと言っていた。そして、私も新しいルームメイトを探すのはものすごく大変だろうとも知っていた。ジョージは、決して私の邪魔をしないし、食器洗いとかいろいろ、もっとうまく手伝えるよう努力するからと言っていた。なんとなく、うまく丸めこまれたような感じがした。けど、すべてを考え直し、ひょっとしたら、これでやっていけるかなと思った。
というわけで、毎晩、ジョージと顔を突き合わせて夕食を食べる生活になった。ダイアンがいたころから、私とジョージはあまり会話していなかった。だから、夕食のテーブルも、まったく無言で居心地が悪いほど。やがて、私たちは食事をしながら本や雑誌を読むようになった。
ある晩、ダイアンから電話が来た。ジョージがアパートにいるときだった。ダイアンは、私がジョージとうまくやってるか知りたかったらしい。私は、これまでのところは、問題は起きてないわと答えた。
ダイアンは、ジョージの様子も聞きたがった。そこで私は、彼なら今アパートにいるわよと答えようとしたのだけど、ダイアンは私が誰と話してるかジョージにバレないようにしてと頼んだ。でも、実際、それは遅すぎたと思う。
それから、なんとダイアンは、もし私がジョージと仲良くなっても、彼女は全然気にしないわよと言った。私は、まあ、それは考えておくわと答えたけど、皮肉っぽい声になっていなかったかどうか、自信がない。
電話の後、ジョージが言った。
「今のダイアンだろ?」 思ったとおり、ジョージは電話の相手が分かっていた。
「ええ」
「彼女、どうだった?」
「元気そうだったわ」
「それは良かった」
その後、ジョージは何も言わなかった。どうしてか分からないけど、その時の私は、この話題をやり過ごさなかった。
「ダイアンがいなくてさみしいの?」
「ああ、時々、そう思う」
「ジョージもデートを始めるべきよ」
そう言った後、まるで私を誘ってほしいと持ちかけてるように聞こえたかもと思った。でも、そんな意味じゃないと訂正しようにも、どう言って良いか… どう言っても失礼になりそうで、結局、黙ったままでいた。
「ああ、そうだなあ…」 と彼は言って、何か考え事をしてるような感じで座っていた。
私は無頓着の様子を装って、また本を読み始めたけど、実際は、ジョージが私をデートに誘うのではないかと内心びくびくしていた。
するとジョージは、まるで独り言を言うように、話した。
「しばらくは不特定に遊びまわることにしようかな…」
それを聞いて私は心の中でほっと安堵のため息をついた。