私たちはアンドリューに顔を向けた。たぶん、二人とも食ってかかりそうな顔をしていたと思う。アンドリューもそう感じたのだろう、半歩くらい後ずさって、自分を守ろうとしてるように両手をかざした。
「二人とも、本当にすまない。正直なところ、君たちは避妊してると思っていたんだよ。これまで誰かを妊娠させそうになったことなど一度もなかったんだ。そういうことを考えすらしなかった。僕の責任だよ。紳士というものは、常にご婦人のことを気遣うべきなんだから」
ドニーが言った。「そのとおりよ、アンドリュー。まさに、ものすごく気遣ってほしいと思ってるご婦人がここに二人いるんだからね」
アンドリューは混乱してる顔をした。「どういう意味? 君たちは僕に怒っていないの?」
私は思わず笑ってしまった。アンドリューはとても繊細な気遣いができるのに、時々、明らかなことに気づかないことがある。
「アンドリュー? あなたは、両手に花の状態なのよ。しかも、その両手の花は、どちらも極限までににエッチな気持ちになってるの。どうしてそうなってるのか分からないわ。あなたは、もうすでに、私たちが知ってる中では最高に魅力的な男性になっている。でも、それに加えて、あなたが容易く私たちを妊娠させることができるかもしれないと、分かったわけでしょう? 私たちすでに妊娠してるかもしれないのよ! これって、ものすごくエロティック!」
アンドリューがショックを受けてるのがはっきり見て取れた。「き、君は妊娠がセクシーだと思ってるの?」
ドニーが言った。「あなた、賢すぎるというわけではないのね。そういうところがある男の人って好きだわ」
ドニーはアンドリューに近づき、両腕を回して抱きよせた。そして、ものすごいキスをした。魂の根幹に触れるような、心臓が止まりそうなキス。
ようやくドニーがキスを終え、彼を離したあと、今度は、私が彼を私の方を向かせ、同じことをした。私も、この体でできる限りの最大級に情熱溢れたキスを彼にしてあげた。私が空気を求めて唇を離したら、またドニーが彼を引きよせた。再び、官能的なキスをたっぷり彼にする。
アンドリューは、顔を赤くさせ、ハアハアと息を荒げながら、後ずさりした。ズボンの前に、はっきり勃起してる姿が出ている。
「も、もし、これが前戯だとしたら、僕は死んでしまう!」
私は、彼が可哀そうになって、正直に話さなければと思った。
「アンドリュー? ここには女が二人いて、男はひとりしかいないの。そういうのを夢にしている男がたくさんいるのは知ってるわ。でも、実際に、この状態をやってのけられる男がたくさんいるとは思えない。少なくとも、女の子二人とも満足するようにやってのけられる人はほとんどいないと思う。でも、あなたは、大好きなあなたは、その例外よ。実は、私、この週末は、あなたにドニーと過ごすように頼むつもりだった。少なくとも、彼女が飛行機に乗るまでは一緒にいてあげてと言うつもりだった。でも、ごめんね、ドニー。私、とっても興奮しちゃって、それはできなくなってしまったの。分かってくれるわよね、ドニー?」
ドニーは頷いた。「ディ・ディ? たとえ、あなたが、今の私の半分くらいしかエッチな気持ちになっていないとしても、彼を共有したいと言ったからって責めたりしないわ」
「ねえ、アンドリュー? 普通の私たちは、二人とも、感情を完璧にコントロールできる、仕事を持った冷静な女だわ。でも、この数日間、あなたは私たちの中にある感情を叩きこんでしまったの。その感情のために、私たち二人とも間抜け笑いをするおバカになってしまってるのよ。なのに、今度は、これ! 子供が産めるという可能性! でも、少なくとも、いまは私たち大声でわめいたりはしないわ。とりあえず、そのことだけは感謝して」
「でも、昨日の夜、君たちは破ることのできないルールを立てたはずだよ。君たちがセックスに関していうことはすべて注意深く聞いていたから、ちゃんと覚えているんだ。そのルールとは、1対1のみというルール。あのルールを変えるつもりなの?」
ドニーが答えた。「いいえ、変えないわ。あなたはシステムアナリストだから、算数はできるでしょ? この部屋にはベッドが二つあるのは見えるわよね? 私は、そのひとつに入るわ。ディ・ディはもう一つのベッドに入る。あなたは好きなように、ふさわしいと思ったベッドに渡り動けばいいの。確かに、これは普通に行われていることじゃないけど、でも、アンドリュー、私たちどちらも今すぐあなたが欲しくてたまらなくなっているのよ!」
ドニーは服を脱ぎ始めた。脱いだ服を手近な椅子に放り投げている。私も同じことを始めた。二人ともアンドリューの瞳を見つめながら。
アンドリューは魚のような顔をしていた。口をアルファベットのオーの字にして、パクパク開けたり閉じたりして呼吸をしている。ずっと私たちを見つめたままだった。彼にとっては、見なければいけないところがたくさんありすぎたようで、どこに視線を固定してよいか決められないようだった。
ドニーが一つのベッドに乗って、ゆったりとした姿勢になった。私ももう一つのベッドで同じ姿勢になった。ベッドのシーツを捲りあげて、全裸の体をあらわにして恋人が来るのを待った。
ドニーがアンドリューに手招きした。「ねえ、アンドリュー、ボールはあなたのコートに入ってるのよ」