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無垢の人質 第8章 (4) 

レオンの手下たちは、地面にうつぶせになって主君を待っていたのである。イサベラはレオンの計算高さに感心した。

手下の一人が、大きな黒い雄馬の手綱をレオンに渡した。黒馬は主人の姿を見て、首を振り、いななき喜んだ。

レオンは、優雅に片足を振り上げ、黒馬にまたがった。そして、前かがみになりイサベラを引き上げ、自分の前に乗せた。

イサベラは、鞍の上に座り落ち着いたところで、シュミーズが太ももの上までめくり上がっているのを見て、自分が裸同然であることに初めて気がついた。あわてて両手で胸を隠し、頬を真っ赤に染めた。素早く周りの男たちを見たが、彼らはイサベラと視線を合わさぬようにしていた。

レオンはゆっくりと馬を進めた。遅ればせながら、ようやくイサベラの困った状態に気づいたレオンは、彼女に手綱を預け、自分の白いリネンのシャツのボタンを外し、さっと脱ぎ、冷たい夜風に素肌をさらした。そのシャツでイサベラの両肩を包み、袖に手を通させ、左右の脇の下から手を差し込み、前のボタンを留めた。

ボタンを留めるとき、一度ならず、レオンの指が乳房を軽くこするのを感じ、イサベラはハッと息をのんだ。かすかに触れられ、バラ色の頂きがツンと硬くなる。先端が硬い突起となるために、いっそう彼の手に擦られることが多くなり、イサベラは思わず声をあげてしまいそうになるのだったが、頬を赤く染めつつも、馬の操縦に集中しようと堪えるのだった。

ようやくレオンが手綱を握り戻したのを受け、イサベラは、ホッと安堵のため息をついた。それを聞いてレオンは彼女の耳元でくすくす笑った。イサベラは怒ってレオンの太ももをぴしゃりと叩いたが、レオンは彼女の腰を抱き寄せる腕に力を込めるだけだった。

彼の温かい体温にしっかりと包まれ、イサベラは、その居心地の良さに安堵した。そして、より多くの居心地の良さを求めて、体をくねらせ、彼により密着しようとする。レオンは、イサベラが焦らすように体を擦りつけてくるのを感じ、苦しそうな呻き声をあげ、「魔女め」とつぶやいた。

ショボノー城への道のりは長く、馬の足も速かった。だが、乗り心地の悪さにも関わらず、イサベラはいつしかレオンの両腕に守られつつ、頭を彼の肩に預け、眠っていた。

夜明けすぎ、城門をくぐったとき、レオンをイサベラを優しく起こした。イサベラは眠たげにまばたきし、鞍の上、くねくねと体を動かした。それで刺激されたのだろう、後ろにいるレオンはうめき声をあげた。イサベラは、尻のあたりに硬く熱いものが脈動しているのを感じ、下唇を噛んだ。そして自分の体もそれに反応して緊張するのを感じた。

イサベラは、馬から降ろされたものの、足に力が入らず、自分の体を支えるのがやっとだった。レオンは、彼女をしっかりと抱き、支えながら、大声で手下たちにいくつか命令をした。その命令のひとつは、イサベラを助けて小部屋へ連れ添うメイドを呼び出せというものだった。すぐに若い娘がイサベラのところに駆け寄った。イサベラは、その娘の嬉しそうな顔を見て、かすかに思い出した。

「ミナ…」 とイサベラは呟いた。娘はにっこり笑い、お辞儀した。

「はい、ミナです。お嬢様!」 とメイドは言い、片腕でイサベラの腰を支え、寄り添いながら小部屋へと向かった。

イサベラは、小部屋に向かいながら、あえて、レオンを振り返ることはしなかった。長い間、人質として囚われていたところに戻ることが良いことなのか自覚ができていなかった。その不確かさを彼に見られたくなかったからである。自分は再び人質になるのだろうか? そうなったらと思うと、身体は興奮に震えるのであるが、心は抵抗するのであった。

小部屋に通じる石階段の最後の二段のところで、イサベラはバランスを崩し、危うく転びそうになった。ミナはキャっと悲鳴をあげ、かろうじてイサベラを支えた。

「大丈夫でございますか?」

「ええ、大丈夫… ちょっと疲れているの」 とイサベラは呟いた。



[2010/04/04] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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