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誰とやったか知ってるぜ 第5章 (18) 

俺は小包がちゃんと届いたか心配だったので、自分の部屋に上がりメールをチェックした。グラフ先生からのメールが来ていた。

「もう! 今夜、家から抜け出て欲しいなんて。今夜は来客がたくさんあるの。とても、うまくいかないわ。『うまくいかない』なんて言い方だと試してみるように聞こえるかもしれないけど、実際は、本当に無理なのよ。小包に何が入ってるか知らないけど、明日、回収しに来るように宅配業者に頼んでください。後で二人とも悔むことになりそうなことが起きてしまう前に、このゲームをやめなくてはいけないわ」

こいつめ! と思いながら俺は返信ボタンをクリックした。

「お前はこれまでは実に素晴らしい生徒だったが、たった今、何もかも台無しにしてしまったようだな。あの小包は、お前がそれを受ける価値があると思ったから送ったのだ。お前が勝ち取ったものなのだよ。もう、同じことは言わない。今夜、お前は俺に会いに来るのだ。さもなければ、俺は否応なしに、お前の秘密を旦那や学校にバラすことになるだろう。そうなったら困るのはお前の方だろ? 今夜、待ってるぜ!」

メールを送ったとき、両親の乗った車がガレージに入る音が聞こえた。俺は階下に降りて親を出迎えた。

「お帰り」 とキッチンにいた両親に声をかけた。

母親は具合が悪そうで、すぐに自分の部屋に入っていった。父親も付き添って入っていった。俺は、カウチに座って夕食を待った。俺はトリスタのことを思い、今夜、彼女と彼女の両親に会わなければいけないことを思い出した。その後で、グラフ先生と会うことになる。

父親が部屋から出てきて、何か残り物を温めて食べるように言った。俺は冷蔵庫を開け、残り物ののポーク・チョップとマッシュド・ポテトを取り出し、温めた。温め終えた後、俺と父親の分をテーブルに並べた。

席に着くと、父親はポークにかぶりつきながら言った。「お母さんはかなり具合が悪そうなんだ」

「顔色が悪かったね」 と言い、俺も食べ始めた。

食べ始めてしばらくしたら、電話が鳴った。俺が出た。

「ジャスティン?」 と電話の向こうから小さな声が聞こえた。

「僕ですが」 声の持ち主が誰か分からなかったので、そう答えた。

「今夜、出てきてくれる?」 と小さな声。

ようやく俺は相手がトリスタであることを知った。「もう少ししたら、行くつもりだよ」

「ああ、良かった」 トリスタは興奮した声で言った。「分かったわ。じゃあ、後で」

「うん、じゃ、また後で」 と俺は電話を切った。

「誰からだ?」 と父が食べなが訊いた。

「あ、ちょっと知り合った女の子から」 とテーブルを片づけながら言った。
俺は食器を洗い始めたが、父親は詮索を続けた。「その子の名前は?」

俺は邪魔されたら嫌なので、父親を無視しようとしたが、答えてやれば、これ以上、詮索されないだろうと考え、答えることにした。

「トリスタという名前… 18歳で、シーサイド・ダイナーの向かいにあるコーヒー・ショップでバイトしてる人だよ… バレー・クリスチャン・アカデミー高を卒業したばかりなんだ。彼女のお父さんはその高校で牧師をしてるんだ」

「なかなか良い娘さんのようだね」 と父親は立ち上がり、食べ残しをシンクに持ってきた。

「彼女、今夜、僕に教会に来てほしいと言ってるんだ。両親に会ってほしいと」 父親の持ってきた食器をシンクに沈めながら返事した。「…トリスタは、教会でも仕事があって、貧しい人に食事を作る手伝いをしなければいけないんだって」

「本当に良いお嬢さんのようだね。…ぜひ、お父さんもその娘さんに会ってみたいよ」 と父親はキッチンから出て、リビングのリクライニングに腰をおろした。

「ジャスティン?」 と父が俺を呼んだ。

リビングに行って父親の前に座った。

「お前は素敵なお嬢さんを見つけて、その娘に会いに行くようだから、今夜はお父さんの車を使ったらどうかな?… 車のキーはカウンターの上に置いてあるよ」

父親はそう言って、リクライニングにもたれかかり、目を閉じた。

「ありがとう、お父さん」

キッチンに戻って車のキーを握った。確かに今夜は自転車に乗らずに済むのはありがたい。

自分の部屋に戻り、シャワーを浴びた。丹念にひげを剃って、こぎれいにした。シャワーから出て、部屋に戻り着替えをした。カジュアルな服装しかできない。カーキのズボンとポロシャツだ。まともな服はほとんど持っていないので、ラフな格好しかできない。ブラッドの母親からせしめた金もほとんどなくなりかけている。トリスタをどこか高級なところにデートに誘うとしたら、すぐにでもまたカネを手に入れなければいけない。

鏡で自分の姿をチェックした後、階段を下りた。リビングを覗いたら、父親はすでに居眠りしていた。母親も病気で寝ているようで、部屋からは物音ひとつ聞こえない。俺は静かにガレージに行き、父親のバンに乗り込んだ。



[2010/04/09] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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