父親のバンに乗り込みエンジンをかけた。バックしてガレージから出て、リモコンでガレージのシャッターを降ろした。そう言えば、グラフ先生に渡したリモコンがあったな、とその時、思い出した。
通りを進み、やっとクリスチャン・アカデミーに着いた。後ろの方に何台か車がとまってる。トリスタの青いカマロもあった。遮光ウインドウになっているから間違いない。ゆっくりと車を進め、トリスタの車の隣に駐車した。
車から出て、一度、背伸びをし、トリスタがいないかとあたりを見回した。ちょうどその時、建物の裏ドアが勢いよく開いた。
トリスタが俺を見つけ、手を振りながら走ってくる。俺が両腕を広げると、彼女は飛びついてきて、俺に抱きついた。まるで、長い間、離ればなれになっていた恋人同士のような抱擁だった。
「中に入って。ママとパパがいるから」と言って、俺を引っ張っていく。
親たちと会うといっても、簡単に済むだろうし、すぐにトリスタと二人だけになれるだろうと思っていた。トリスタがドアを開け、俺も中に入った。すると、明るさに目が慣れる間もなく、彼女の父親が俺に言った。
「君、名前は? いくつなんだ? 所属している教会は?」
「チャールズ、彼を怖がらせてはいけないわ」と、トリスタの母親が言い、俺に近寄り、握手をした。「うちの人はいつもこの通りなの。あまり気にしないでね」
「私は真剣に尋ねてるのだよ、ロイス。大事なことじゃないか」
トリスタの顔がだんだん赤くなっていくのが見えた。イライラしてきてるのだろう。トリスタは父親が頑固者だと言っていたが、俺もなるほどと思った。
「ジャスティンと言います。18歳です。セント・メアリ・カトリック教会に属しています」
「邪教者だな」と父親は呟いた。
「チャールズ! しーっ!」 と母親。
少し白髪が混じった髪の毛のせいもあるだろうが、トリスタの父親は、ただのつまらぬみじめな中年男の印象だった。それにひきかえ、トリスタの母親は、18歳の娘がいるにしては、とても若々しく見えた。
ともあれ、俺は、デートし始めた女の子の父親でもある牧師に、きつい尋問を受けつつも、その牧師の奥さんから目を離せずにいたのだった。
トリスタが、前に、母親が父親を怖がっていると話していたのを思い出したが、その意味が分かったような思いだった。トリスタの父親は、俺に難癖ばかり言うみじめな中年オヤジにしか見えない。だが、ひとつだけ、はっきりと確信できることがあった。トリスタの母親は、ゆったりした服を着ているが、その中には、なかなかの女体が隠れているに違いないと。