「あなたは! あなたって人は! 私に罠をかけたのね!」
イサベラはあわてて立ち上がり、レオンに向き直りながら、叫んだ。顔を真っ赤にしながら、シュミーズの布地を引き寄せ、ツンと尖った胸の頂を隠そうとする。
レオンは、イサベラの取り乱した姿態を見て、くすくす笑った。女性らしい怒りの表情を見せながら、髪を乱し、ピンク色に顔を染めている。むしろ、そそられる。
「イサベラ…」
レオンは笑みで唇を歪ませながら、燃える眼でイサベラの身体の曲線を愛撫するように視線を這わせた。
乳白色のストッキングとフリルのついたガーター、そして千切れて身体を覆っているとはもはや言えないシュミーズの布切れ。それしか身にまとっていない姿で立つイサベラの姿。レオンの指は、じれったそうにそのガーターを引き降ろし、柔らかな太ももを過ぎさせ、さらには、ストッキングをゆっくりと巻きながら下へと降ろしていく。
レオンは、震えるイサベラの柔肉に優しく唇を押しつけた。
「そのことを思い浮かべただけで、お前の身体は期待に震え、瞳は虜になったように曇ってしまうというのに、どうして、お前はそれをする必要がもはやないなどと考えられるのかな?」
「私に近寄らないで!」
イサベラは、レオンがベッドから出るために、両脚をベットの横に大きく振り降ろすのを見て、叫び、後ずさりした。
立ちあがった彼の姿を見て、ごくりと唾を飲み込んだ。滑らかな金色の肌の下、逞しい筋肉が波打っている。彼女は、まるで抵抗しきれないかのように、彼の太ももの間に潜む金色の茂みへと視線を引き寄せられた。そして、彼の固くなった代物が、恥知らずとも言える臆面のなさで、ぴくぴくと動いているのを見て、目を丸めた。
「わ、私は、子を身ごもっている。私に言わせたいことは、そのことでしょう!」
レオンが眉を上げた。イサベラは後ずさり、壁際に置かれている天板が大理石でできているサイド・テーブルに脚をぶつけた。もはや彼女は後ずさりできない。だがレオンはゆっくりと彼女の方へ近寄ってくる。
「俺は、お前が俺に真実を知らせに来るのを、もう何週間も前から待っていたのだよ。いまさら、それをお前から聞き出しても、何の面白味もない」
レオンが片手の手のひらをイサベラの頭の横の壁にあてがった。イサベラは目を見開いた。
「し、知ってたの?」
レオンは頷き、イサベラの瞳を見つめた。
「ああ、知っていた…」
そう言って優しく頭を傾け、軽く唇で彼女の唇を擦った。「…そして、俺は喜んでいる。これで、俺とお前の関係が、分かりやすくなる…」
イサベラはレオンの言う意味が分からなかった。だが、彼の言葉が自分の身体の奥底に幸福感による温かみをもたらすのを感じざるを得なかった。
しかし、何かが頭に浮かび、イサベラは顔を曇らせた。
「…じゃあ、どうして、あなたは父の城にいた私に会いに来たの? すでに私が子を身ごもっていると知っていたのに? あなたは…私たちは、もう… その必要がなくなっていたのに… その、何と言うか…」
イサベラは途中まで言いかけてやめた。頬が赤く染まっていく。それを見てレオンが意地悪そうに微笑んだ。
「必要とは… 子作りをする必要?」 とレオンは囁き、半開きになったイサベラの唇を再び唇で擦った。
「やめて!」 イサベラはため息をつき、再び唇を寄せてくるレオンから逃れるように、顔を横に背けた。 「もう私は許さないの… あなたがあんなものを私の中に入れるのを許さない」
「あんなもの?」
レオンはイサベラを見つめながら、驚いたふうに片眉を上げて見せた。一方のイサベラも、言葉とは裏腹に、まさにその「あんなもの」を自分が求め願っている証しがレオンにバレていることを知っていた。破れたシュミーズの間から顔を覗かせている胸のバラ色の頂きはツンと固く立っているし、唇はキスを求めて湿り、半開きになっているし、緑色の瞳は妖しく燃え輝いているに違いない。
「お前が俺の『もの』が中に入ってくるの感覚が好きでたまらないのは確かなのじゃないのかな?」