レオンの唇がイサベラの首筋を下方へ辿り、湿った道を作っていく。イサベラは肌が熱く燃えるのを感じた。レオンに近寄られ、下腹部の奥から邪悪な快感が渦を巻いて湧き上がってくるのを、なんとか押し込めようとしつつ、喘ぎ、答えた。
「私があなたの子を身ごもっていることを父が知ったとき、あなたはさぞかしよくやったと自分を褒めたでしょうね」
「俺たちの子だ」
レオンは息を吐くようにして言った。舌が、イサベラの肌の感触に喜び、踊り狂う。イサベラの首の付け根、動脈の鼓動に合わせて肌が艶めかしくヒクヒクと動いていた。そこに唇を当てられ、イサベラは喘ぎ、叫んだ。
「だ、だったら、あなたは、復讐を遂げたということでしょ!… あなたの父は私の父の恋人を殺した。そのため、今度は、私の父があなたの父を殺した。そして、あなたは私を修道院から誘拐し、監禁した… そして、私を犯し、子供を身ごもらせた。そして、その私を餌として利用し、隠れていた父を誘き出したのよ」
「何のホラ話しだ?」 レオンは訝しそうに問いかけた。
イサベラはレオンの腕の中から逃れようとしたが、彼の腕が彼女の腰に巻きつく方が早かった。レオンは彼女の身体を抱えあげ、小さな脇テーブルの上に尻を置かせた。同時に彼女の背中を壁に押し付ける。そして、熱のこもった視線でイサベラの瞳を見つめた。
「ホラ話って、どこの部分のことでしょうか?」 イサベラは冷静さをつくろいつつ答えた。もっとも、彼女の内心では、決して冷静ではいられなかった。というのも、シュミーズは前がすっかり開いていて、クリームのような肌の乳房も、やんわりと膨らんだ腹部も、柔らかな乳白色の太ももの間に茂る赤い縮れ毛もあらわになっていたからである。
「お前が話した女性は、お前の父親の恋人などでは決してない。その女性は俺の母だったのだ。お前の父親が夢中になり、その挙句、俺の父に攻撃した際に、殺してしまった女性とは、俺の父に嫁いだ女性だったのだよ。二人はおしどり夫婦だった。父は母が歩いた地面ですら崇拝するほど、母を愛していたのだよ」
イサベラは声も出せず、あっと唇を開き、伏せ目がちになり、そして目を閉じた。父親に吹き込まれた嘘の数々を何の疑いも持たずに信じてしまったとは… 彼女の心に羞恥の気持ちが満ちた。
そして、彼女は再びゆっくりと目を開いた。
その瞳の中に燃え盛っている怒りの表情に、レオンはたじろいだ。
「あなたは… あなたって人は、私を意思に反して囚われ者にしている間、一度たりとも、一言も、そのことを私に言わなかったのね。あなたの父上についても、私の父が行ったことについても! この小部屋に幽閉して、強引に私を奪い続け、子を身ごもらせた。それを知ってて、私の父に私を連れ戻すのを、なんら戦いもせず、そのままさせた。ここから出て行って! あなたの顔を見るのはもう耐えきれない。あなたは私の父親と同じ、最低の人間です。いいかげんな真実と偽りだらけ」
「イサベラ…」
「出て行って!」
「イサベラ、そうではないんだ…」
「いいわ、あなたが出て行かないなら、私が出る」 イサベラはきっぱりと言い放ち、レオンの両肩を突いて、テーブルから降りようとした。だが、レオンの手が彼女の腰を抑え、逃すまいとした。イサベラは、レオンに蹴りかかり、逃れようと抗った。
「聞いてくれ、イサベラ…」 レオンはイサベラの怒りに圧倒され、呟き声で頼んだ。
「いや!」