僕は話しをせかした。「じゃあ、その件は片付いたとして、僕は他のことを話そうと思う。ドニー? この件については前にディ・ディに話したんだけど… つまり、僕たちの関係はどうあるべきだと僕が思っているかについて、なんだ。多分、君は、僕が非常に付き合いやすい人間だと分かると思う。でも、僕は人間関係にはある決まったことがらがなくてはならないと思っているんだ。それを率直に君たちに求めたいと思っている」
「いいわよ、率直になって。それで、何を私たちから求めたいと思っているの?」 とドニーが言った。
「正直であること、オープンであること、率直であること。僕がマズイことをしでかしたら、どこが悪いか僕に言って欲しい。僕が、感情的であれ、身体的であれ、何であれ、君たちが求めていることを与えていないと思ったら、はっきり言って欲しい。何か問題が起きつつある場合、大問題になってしまう前に、つぼみの段階で刈り取る必要がある。ドニー、これは大切なことなんだ。長期にわたる人間関係を継続させるには、これ以外の方法は見当たらないと思っているんだ」
「それって、ずいぶん女性的なモノの見方ね、アンドリュー。あなた、本当はゲイじゃないの?」 とドニーが言った。
僕は彼女の胸に手を伸ばして、柔らかく美しい乳房を揉んだ。「また、ベッドに戻って、自分自身で確かめてみる?」
ディ・ディが僕の手をピシャリと叩き、ドニーの乳房からどかせた。「アンドリュー、そんなこと彼女に言っちゃダメよ。私の妹は自堕落淫乱女なの。彼女の性欲については、この午後に見ただけでもう充分だわ」
「分かった! そろそろ、セックスについて話し合う頃合いのようだね。僕たちはセックスはたくさんしてきているけど、一度も、セックスについて語り合ってはいないんだ」
ディ・ディもドニーもちょっと恥ずかしそうな顔をした。
「そもそも、私たち子供のころから今まで、セックスについてほとんど話し合ったことなどないわ。どんなことを話し合いたいの?」とドニーが訊いた。
「君たちは二人とも、よく、長期の出張に出るだろう? そうなると、君たちは気を揉むことになると思う。ディ・ディの言葉を借りれば、緊張度が増すということに。僕は自分の眼で見たから、それがはっきりと分かるし、君たちは二人ともセックスについてとても熱心だということも知っている。だから、そういう場合について、君たちはどうするつもりでいるのか話し合いたいんだ」
ディ・ディはちょっとショックを受けた顔をした。それに、唖然としている表情も。
「アンドリュー? 私たちもう何年もセックスなしで過ごしてきたのよ。出張で出かけた時に、自分自身をどうコントロールするかは私もドニーもちゃんと分かっているわ。私がショックを受け、唖然としているのは、そういう状況で私たちが何かすると、あなたが思ったこと自体だわ」
「ちょっと待って。僕は何も君たちを何かで責めようとしてるわけじゃないんだ。セックスを思う存分していない状態より、セックスをまったくしていない状態の方が楽だと、それを言ってるだけなんだよ。セックスをすれば、もっとしたくなるし、さらにセックスすれば、もっとしたくなるものだ。やがて、もっともっと求めるようになっていく。セックスとはそういうものだと僕が理解していること、それに、この場合、適切な言葉だとは思うが『貞操』といった観点では僕は君たちに何も求めていないということ、それを伝えてるつもりなんだ」
ドニーが言った。「どういうこと? 私たちがあなたのもとから離れている時なら、私たちが他の男とかかわったとしても、あなたは平気だと、そう言ってるの? それって狂ってるわよ」
「いや、そういうことを言おうとしているんじゃないんだ。僕は君たちのすべてを僕に向けて欲しいと思っている。その点では僕はわがままだ。でも、もし万が一、そういうことが起きたとしても、僕は、それを理解できると言ってるんだよ。ただ、ちょっと気を使って、そういうことについて僕に話さないでくれたら、嬉しいけど。そういうのは知りたくない。僕は、自分が愛している女性が、他の男にも魅力的に映っていると知って興奮するタイプじゃない。君たちに惹かれない男は、気が狂っているか、ゲイかのどちらかだ…」
「…でも、もし、君たちにそういう『疼き』が湧いてきて、僕と一緒にそれを癒すまで待ちきれないような状態になった場合、僕が前もって許可を与えているということを知っていてほしい。それだけだ。罪悪感など感じる必要ない。もっとも、僕自身が本当にそういうことについて知りたくないと思っているかどうかは、不確かなところがあるんだが…」
「…ともかく、僕は君たちのどちらも所有しているわけじゃない。愛し合っている時は、そういうふうに感じるのは確かだ。君たちを自分のモノにしたいと。でも普通のときは、そういうふうには思っていないし、そもそも、君たちを所有するなんてできることではない」