「ちゃんと覚悟はできてるのね?」 とリンダが訊いた。
「そう思う。それをするとき、一緒にいてくれるんだよね?」
「一緒にいなきゃだめなの?」
「まあ、普通、どういうふうに進むのか、全然知らないから…」
「そうねえ… 普通なら、旦那は、自分がどうしたいか、妻がどうしたいと思ってるか、全部、独りで言えるものだけど。ともかく、あなたは、相手の男性に、私たちが会員になることを支援していただけるか尋ねて、どうして会員になりたいかを説明すればいいのよ」
「オーケー、それならできると思う」
「できるのね? いいわ、じゃあ、言ってみて。どうしてあなたは私たちを会員にしてほしいと思っているの?」
「えーっと……私は……ああ…ちょっと待って……なぜなら…」
「ダメねえ! ちゃんと準備してなかったの?! ええっ?!」
「す、すみません、奥様… 準備はできてるんです…もう一度、試させてください」
「いいわ、やってみなさい」
「私どもを会員にさせていただきたいのは、私ども、このクラブの方々が本当に好きで、特に、あなた様のような男性の方が気にいってるからであります…… と言うつもりです」
「続けなさい」
「このクラブの男性の方々は誠に特別な方々ばかりで、私の妻に、喜びと幸せをもたらすことができる。このクラブの男性だけがもたらすことができる喜びと幸せであります」
「良くなってきたわねえ… 他には? もっと言った方がいいと思うわ」
「もちろん。こういうことも言うつもりです。つまり、私はあなた様にも他の男性の方々にも多大な尊敬の念を持っているのです。妻には最上のものだけを与えたいと思っているのです」
「いいわねえ……」
ブルースは、次第に、自分の置かれた状況の精神に馴染み始めていた。ブルースは、リンダを見ながら、彼女は自分が与えることができるもの以上のものを与えられて当然だと思うようになっていた。明日のことをちゃんとしなければ、完全にリンダから見放されてしまうだろうと思った。
「私にとって、妻のリンダがあなた様や他の男性の方々に愛される機会を持てることは、信じがたいほどの栄誉なのであります。妻には是非、そのような機会を与え続けたいと存じておりますし、私は自分の能力が限られていることを完全に認めておるのです。加えて、あなた様に、この素晴らしい女性を味わう機会をさしあげるのに必要なことを、どんなことでもしてあげられ、心から喜んでいるところでもあります。私は決して邪魔したりせぬと約束します。それに、私にできることでしたら、妻のみならず、あなた様や他の男性の方々を支援するためのいかなることでも致すと約束します」
「上手、上手…ちゃんとできそうね」
「ありがとうございます、奥様」
「声の調子もちゃんとしてるわ。少なくとも形の上では。実際に懇願する時がきたら、本当に、心の底から誠実に、敬意をもってして欲しいわ」
「はい、ありがとうございます、奥様」
「自分から進んで黒に寝取られた亭主になる心づもりができてる?」
「はい、奥様」
「黒人の男性の方が優れていることを認める?」
「はい、奥様!」
「優れた黒人男性にセックスされる女性である私に、ちゃんと敬意を示してくれる?」
「はい、奥様! 約束します! お見せします!
「よろしい。じゃあ、ひざまずいて」
ブルースは、ためらいもせず、リンダの前の床に膝をついた。彼は、欲望でほとんど浮かれ上がった状態だった。その欲望とは、リンダとセックスをする欲望ではない。それは、すでに叶えてもらえないと彼自身、認めていた。その欲望とは、リンダの前に屈服した姿を見せ、自分は二度と後戻りできないところまで到達できたことを示したいという欲望だった。
ブルースの中で、何かがぷつんと切れたのだろう。彼は、少なくとも今は、妻の前に這いつくばり、妻が望むことをどんなことでもして見せたいという気持ちでいっぱいになっていた。
「私のあそこを舐めたい?」
「もし、させていただけるなら、是非させてください、奥様。奥様がお望みなら、どんなことでも!」
「ようやく正しい返事ができるようになったわね。でも、今は、私の新しい靴にキスしてほしいわ。ヒールのところにだけ。さあ、キスしなさい!」
ブルースは直ちに前かがみになり、左右の靴のキラキラ輝く黒いヒールにキスを始めた。
「今度は、吸いなさい!」
ブルースは頭を傾け、リンダのお気に入りのハイヒールの、長く尖ったかかとを口の中に入れた。そして、優しく吸い始めた。
「もっと上手に! 熱意を見せてほしいものだわ!」
ブルースは音を立てて、さも美味しそうに吸い始めた。ヒールの先が喉奥を突き、危うく咽そうになった。
「よろしい! おやめ!」
「はい、奥様」 ブルースはすぐに引き下がった。
「いま、ビデオカメラを持っていたら良かったのに。まあ、いいわ。この次にしましょう。さて、お前が尊敬してるのは誰?」
「奥様であります!」
「他には?」
「輪の会の男性の方々であります」
「お前は、敬意を持って、誰をもてなすつもりでいる?」
「奥様と奥様の男たちであります」
「よろしい。それじゃあ、もう一度、明日のスピーチの練習をするように。明日は大切な日ですから」
「はい、奥様。ありがとうございます、奥様」
つづく