僕は、トレーシーの視線から少しだけでも逃れることができて、実際、助かったと思っていた。少なくとも、この恥ずかしさから逃れることができる。彼女のベッドを整え、部屋の整理をし終えた頃には、かなり気持も落ち着いていた。それからバスルームに戻り、トレーシーが入浴を終え、体の濡れを拭き取るのを手伝った。その後、全裸の彼女の全身にモイスチャーライザーを塗る仕事をさせられた。この仕事は大いに気に入った。それが終わるとトレーシーは着替えに入り、その間、僕はバスルームの清掃を行った。
バスルームの掃除が終わり、部屋に戻ると、トレーシーは化粧台のところにいた。
「今日は、マリアには、残りの時間は休みにしてあげたわ。キッチンに行って、マリアに会ってちょうだい。彼女は、あなたに夕食に何を作ったか、それを出すときの方法を教えてくれるはず。それを聞いたら、またこっちに戻ってきて」
キッチンに行き、マリアに夕食のことについて教えてもらった後、寝室に戻った。トレーシーはビキニ姿になっていた。細紐だけでできているようなビキニ水着だった。彼女は、僕を連れて、家の中のすべての部屋を案内し、僕にして欲しい仕事を説明した。僕がしなければならないことは、たいてい、ほこりを叩き、掃除機をかけることだった。大半の部屋は、3日おきぐらいに掃除をするだけで良いと言われた。トレーシーの寝室と浴室だけは別で、そこは毎日、清掃しなければならないし、もちろん、本来ある場所にない物があったら、それをすべて元通りの場所に戻さなければならない。
僕はリビング・ルームとダイニング・ルームを掃除し始めた。その間、トレーシーは日光浴をしにプールサイドに出ていた。僕のいたリビング・ルームから、プールの様子がはっきり見えていた。彼女は、ビキニのトップをはずしてから、プールサイドのリクライニング・チェアに横になった。僕は、自分でも、どのように掃除を終えたのかよく分からない。というのも、ずっとプールサイドばっかり盗み見していたのだから。
正午ごろになり、ダイニング・ルームの掃除を終えたちょうどその時、トレーシーが屋内に戻ってきて、僕に言った。
「マリアが私たちのためにフルーツの盛り合わせを2皿、用意していたはずよ。あなたも水着に着替えて、プールサイドに出て、一緒に食べない? あなたの青白い体、少し、日焼けした方がいいと思うわ」
「僕は水着を持っていないんです。それに、僕は、あまり日光浴するようなタイプじゃないし」
トレーシーは何か少し考えていた。
「そうねえ。あなたには、マークの持っている物はどれも合わないわね。夫はあなたよりずっと体が大きいから。もっと言えば、私のビキニも合わないでしょうね。私のビキニもあなたには大きすぎるはず。でも、あなたの部屋に行けば、何か着られるようなものがあると思うわ」
トレーシーは僕の手を取り、引っ張るようにして僕の寝室に連れて行った。
彼女は、引き出しの中を探し回った。その引き出しの中にあるのは全部、女の子が着る衣類しかなかったのだが、そこから、ビキニの下の方のような物を取り出した。明るい黄色で、ソング・パンティのように見えた。腰バンドのところが細い紐になっていて、股間の部分の布を支えるデザイン。女の子ですら、それを着るには非常に勇気がいるだろう。まして、僕にとっては、それを着るなど、考えられない。それを見せられ、僕は答えた。
「それは、着れません。女の子のビキニですよ、それ」
トレーシーは僕のところに近づいてきて、僕のシャツのボタンを外し始めた。
「いいえ、あなたなら着れるはずよ。私のほか、誰もいないのよ。私は誰にも言わないから、大丈夫」