多分、お酒を飲んでいたので気が大きくなり、それで判断力が曇っていたのだろう。僕は、時がたつにつれ、この官能的な妖婦のことにますます心を惹かれてきているのに気づいた。とはいえ、彼女の一見したところ純粋無邪気な振舞いは……どこか怪しい。明らかに誘惑的に振舞っているのだが、何か奥に秘密がひそんでいるようで、そこに僕は引っかかっていた。彼女を欲しいと思うと同時に、彼女を恐れていた。そういう状態を何と言うのだろう? 彼女の正体について僕が感じていたことが何であれ、僕は自分で過ちを犯そうとしていた。
「そう言えば、僕もここにいるけどね。ということは、僕も変態ということになるのかな?」
美しい妖婦は片眉を上げ、興味深いと言いたげに微笑んだ。
「その通りね… あなたはここにいる… そうよね?」
そう言うなり、ダイアナは、僕の膝の上、一度座り直し、両腕で僕の首を包みこむようにして抱きついた。しみひとつない透き通った肌の顔が目の前に来た。そこに毛穴が見えたとしても、すべて数え上げることができただろう。彼女の呼気にシナモンの香りが混じってることも、濃厚な香水の香りも嗅げた。見事な胸の谷間も目の前だった。偽物とはとても見えない。
勃起してくるのを感じた。それを彼女に気づかれたくないと思った。僕が彼女に興奮していることを知られたくなかった。
だが、彼女の方がウワテだった。勝利者のように微笑んでいたのだった。甘えた声で僕に言った。
「正直に言っていいのよ… あなたもちょっと変態になりたいと思ってるんじゃない? それを否定しようとしても、あなたのお友だちが私にイエスって答えてるわ」
彼女は僕の膝に乗せたお尻をぐりぐり回して擦りつけ、嘘じゃないことを示した。
ダイアナの身体は、あるべきところに見事に肉が付いた体つきだった。だが、決して体重が重いわけではない。どうして僕は息が苦しくなっているのだろう? どうして心臓が高鳴っているのだ? ダイアナは僕が戸惑って沈黙しているのを、暗黙のうちに承認してるものと理解した。
「やっぱり思った通り… ねえ、二人でもっと…もっと気持ち良くならない? あなたも、その分のおかねは払ってるんだから…」
蕩けてしまいそうな気にさせるこのメス狐は僕の首から腕を解いて、僕のシャツのボタンを外し始めた。僕は必死の思いで両手を出し、彼女の手を押さえ、していること、これからしようとしてることをやめさせようとした。だが、なぜか手が動かなかった。まるで、夜道に飛び出しヘッドライトで目がくらんでしまった鹿のようなものだった。ダイアナのチョコレート色のつぶらな瞳に見つめられ、僕は動けなくなっていた。
いつ、彼女の服を脱がせたのか思い出せない。いつ彼女とベッドに入ったのか思い出せない。気がついた時は、ベッドに仰向けになっていて、彼女に覆いかぶさられていた。そして、口いっぱいに彼女の乳房を頬張っていた。それまで僕はスーザンのCカップの胸がこの世で最高の乳房だと思っていた。だが、ダイアンの方がさらに大きく、柔らかで、なおかつ張りがあった。口や手で私を愛撫してと訴えかけるような魅力がある乳房だった。
そのような訴えかけをしているものは、彼女の乳房だけではなかった。身体の下の方にも、そのようなモノの存在を感じることができた。まったく用がないところに、何か大きなものがあるのを感じた。蛇のように僕の股間を這いまわり、その身体を、すでにすっかり勃起している僕のペニスに擦りつけてくる。僕は彼女の巨乳にだけ意識を集中し、そちらの方は頭から消そうと努力した。だがそれは無理だった。
「あなた、好きなんでしょう? 違うの? こんなふうに私の身体を擦りつけられるのが…あなたもこんなに固くなってる… あなたの平凡な奥さん、こんなことできないでしょう? どんな女にもできないわ… あなたが欲しいモノ、私にはあるのよ… あなたが本当に欲しいモノ…」
こんなもの欲しくない! 僕はジェフ・スペンサーのような男が彼女にどんな魅力を感じたのか、それを知りたかっただけだ。どうしてジェフは、僕の妻のスーザンのような最高の女と付き合っていながら、隠れてこんな女まがいと遊んでいたのか、その理由を知りたいだけだ。
だが、現実はというと、僕はこの、この…女とベッドに入ってしまっていた。
いま僕はは、彼女にのしかかられ、しゃにむに乳房を吸いまくり、下腹部を彼女のペニスで擦られている。だが、本当に狂っているとしか思えないことは、こんな状態にあっても、僕のペニスはこれまでなかったほど固く、強く勃起していることだった。俺のこいつは、いったい何を考えてるんだ?
するとダイアナは僕に手を使い始めた。長い爪で太ももの内側を引っ掻かれる快感は、極上の拷問ともいえた。間もなく、その指は徐々に上へと進路を向け、僕の硬直した肉棒を愛撫し始めた。ああ、なんてことだ、すごい快感だ。
優しく勃起を握り、ストロークを始めた。気が狂いそうなほどの欲望が湧いてきて、気絶しそうになる。
彼女は、さらにもう一本、手を使い始めた。右手でペニスを愛撫しつつ、左手は僕の右手を探り当て、ゆっくりと、しかし力強く、僕の手を彼女の勃起のある位置へと引き寄せ始めた。
いやだ! ダメだ、やめてくれ、絶対に嫌だ! 俺はゲイじゃない。男が欲しいわけじゃない。イヤだ、イヤだ、イヤだ… ああ、何て興奮なんだ!