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無垢の人質 第9章 (3) 

この薄地のシュミーズはレオンがイサベラのために作らせたものだった。隠している部分より、露わにしている部分の方が多い。そして、それゆえ、レオンにとってじりじりした気持ちになる原因にもなっていた。

このシュミーズをイサベラの身体から優しく脱がせた初めての時、彼女は目が覚め、レオンの腕に包まれ、彼に見つめられているのを知ると、甘美なうめき声を上げ、顔をしかめたのだった。レオンは、それは自分に抱かれているのを知って羞恥をかんじたことによるのもあるだろうが、それよりも彼女の背中についている傷のせいであろうと察知した。

イサベラは、いまだに自分からレオンのベッドにくることは拒んでいた。そして毎晩、レオンは、眠りに入ったイサベラを彼女の小部屋から運び出し、自分のベッドに寝かせているのだった。このような状態は、レオンが1週間前にイサベラと共に居城に戻って以来、二人の間での静かな戦争のようなものになっていた。この戦いには絶対に勝つつもりだとレオンは心に誓っていた。

しかし、イサベラが眠りつつも苦痛を感じていることに、レオンは心を痛めていた。イサベラの背中の傷はやがては消えるだろう。だが、彼女の心についた傷は消えないのではないか。レオンの恐れていたことは、それだった。

マリイめ、何てことをしたんだ…

レオンは燃える目をして、横たわるイサベラの身体を見下ろした。クリーム色の肌にまといつく柔らかな、ほぼ透明と言ってよい布地。それに覆われたイサベラの姿を見るにつけ、レオンは血液が脚の間に集まってくるのを感じるのだった。

すでに、彼の手も彼の口も、イサベラの甘美な肉体のあらゆる盛り上がりと窪みを探っていたし、それによってイサベラは身体を震わせ、満たして欲しいと叫び声をあげたはず。彼女の愛らしく無垢な身体と心は、レオンを惹きつけたし、レオンを悩ませてもきた。彼自身も、この無垢なイサベラが自分の前で慎ましやかな素振りせず、遠慮をかなぐり捨てて快楽に溺れるようになるまで、決して愛情を注ぎ込むことはやめないと思っていた。いつの日かきっと最後には、イサベラはあらゆる垣根を取り払い、自分の居場所はレオンのベッドの中、彼の腕の中なのだと悟る時が来るだろう。

レオンは舌先で軽く彼女の指をなぞった。いつかきっとこの指輪に自分の家紋印がついた指輪を嵌めさせてみせる。そう思いながら、寝言を呟く彼女の唇を見つめるのだった。

イサベラは、レオンは、自分に子を身ごもらせるという、ただそれだけのために、良心の呵責すら感じずに自分と結婚しようとしていると言い、彼を拒み続けていた。レオンの見たところ、このイサベラの反応は結局のところ信頼関係の1点に絞られると考えていた。イサベラは自分のことを信頼していないのだ、と。そして彼は、そんなイサベラを責めることはできなかった。事実、彼はイサベラを彼女の父親から守ることができなかったのだし、邪悪なマリイからも守ることができなかったのだから。

レオンは、自分の力が及ぶことならあらゆることをして、イサベラに、自分を信頼しても良いのだと証明しようと心に誓った。必ず、イサベラと私たちの子を守ってみせる。すでに手下たちを集めて、国じゅうマリイを探索させている。そして、イサベラが自分の妻になったらすぐに、自分自身、その探索隊に加わることにしよう。


[2011/01/13] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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