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誰とやったか知ってるぜ 第6章 (5) 


「それで? 昨日の夜のデートはどうだったんだ?」 父親が椅子を引いて座りながら訊いてきた。

なんかしつこく聞かれそうな予感がしたので、とりあえず父親の質問に答えるだけにしようと思った。おとなしく答えていれば、またいつか父親のバンを使わせてもらえるかもしれない。

「かなりうまくいったよ。ただ、彼女のお父さんがちょっと変人かな」 とハンバーガーをかじった。

「またデートに誘うのか?」

「ああ、今夜ね」 とコーラを一口啜った。

その後は、食べながら、あまり話しはしなかった。食べ終わった後、俺は紙くずをゴミ箱に放り込んで片付けた。父親はいつもの通り、リビングに行き、リクライニングの椅子に腰かけ、テレビの前に陣取った。

俺も父親と一緒にリビングルームに行き、ソファに寝そべって身体を伸ばした。いつもは母親が座る場所だが、今夜は母親はすでに寝室だ。テレビではたいしたことやってなくて、じきに俺は飽きてきた。時計が気になって仕方なかった。早く時間が過ぎればいいのに。

いつまでも時間がこないと思っていたが、ようやく8時半になった。

俺は静かにソファから抜けだし、ガレージに行った。その時になって自転車を庭に置きっぱなしにしてたことを思い出した。そこでガレージの出入り用の小さなドアから外に出て、庭に行き、自転車に飛び乗った。目指すはバレー・クリスチャン・アカデミーだ。

途中、近道をしてクラブ・カフスの裏手の道を進んだ。建物の裏手には何台か車が並んでいて、数人、入口の方に歩いて行くのが見えた。俺はその近道を進み続けた。

教会の前で自転車を降り、隣の建物の前にあった電柱に自転車を立てかけた。自転車の鍵をかけ、何気なささを装って、教会の駐車場へと歩いた。ほとんど真っ暗の状態なので、人に見られる心配はなかった。

あたりを見回し、人がいないのを確かめてからトリスタの車に近づいた。もう一度あたりを見回してから助手席のドアの取っ手を引いた。ちゃんとドアが開いた。

助手席に座りこみ、できるだけ静かにドアを閉めた。車のウインドウには黒っぽい色がついてるので、外からは見えないようになっている。マットの下に手を入れ、トリスタが置いてくれていた車のキーを見つけた。キーをイグニッションに挿し込み、ステレオをつけた。ラブソングを流してる局を見つけ、これならムードを盛り上げるのにいいなと思った。

教会の方を振り返ると誰かがこっちに歩いてくる。よく見るとトリスタだった。手に何か持っている。俺は運転席の方に手を伸ばし、ドアのロックを外した。トリスタはドアを開けて乗り込んできた。

「これ見て」 とトリスタは座りながら、俺に茶色い紙袋を差し出した。

中にはビンが入っていた。よく見ると、それは教会ワイン(参考)のボトルだった。俺はにやりとしながら彼女を見上げた。

「一杯、いかが?」 と俺はビンのキャップをひねり開けた。

トリスタはボトルを俺から取りあげ、ラッパ飲みした。かなり口に含んだ後、俺に戻した。

「お父さんは私がこれを取ってきたこと、絶対に分からないと思うわ」 とトリスタは運転席に深くもたれかかった姿勢になった。

「本当?」 と俺も一口啜った。

「私、これまでもときどきボトルを盗んできているの。でもお父さんは一回も気づかない」 とまた俺からボトルを取った。

俺たちは、こんなふうにワインのボトルをやり取りしながらしばらく雑談を続けた。時間が矢のように過ぎていったし、俺も本当に楽しかった。俺は、だが、これからブラッドの母親と会わなければならないので、トリスタとは異なり、ワインはちびちびとしか飲まないように気をつけていた。

「私ね、可愛い無邪気な女の子と思われることに吐き気がするし、うんざりしているの」 とトリスタは言い、また多量にワインを口に入れた。

「そんな悪いことじゃないんじゃないか?」 彼女からボトルを受け取りながら僕は答えた。

「信じてよ、本当に嫌なんだから」 とトリスタはちょっと座り直し、僕の方に寄りかかってきた。

「私ね、あなたと出会えてとても喜んでいるの、ジャスティン」 と彼女は手を伸ばし、俺の手を握った。

「僕もだよ」 と、俺はワインを啜り、空になってしまったボトルを床に置いた。

「私、この良い娘のイメージを壊さなくちゃいけないと思ってるのよ、ジャスティン…」 トリスタはさらに俺に近づき、唇に優しくキスをした。そして、一旦、唇を離して、「…そのお手伝いをしてくれる?」と言い、また俺に優しくキスをした。


[2011/02/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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