夫は、また嫌々ながらも、私の頼みに従った。私は中程度の長さのネールを彼の手の指につけ、程好い楕円形にカットした。別の手に変え、そちらにもつける。その後、そのネールを非常に明るい、ほぼ透明のピンク色に塗った。塗り終わったとき、夫は魅了されたような顔で自分の指を見つめていた。完璧と言ってよいほど美しく、しかも女性的。彼は手をかざして、指を見つめていた。
「今夜はお化粧はしないわ。でも、ちょっと、この明るい色のリップグロス(
参考)を試してもらいたいの。ほんのちょっとだけピンク色が入ってるだけだから、唇につけてもほとんど分からないはず」
そう言ってグロスを彼に渡した。
「唇の端に沿ってつけるだけ。その後、内側に延ばす感じで」
彼は,変な顔をしながら鏡に向かい、私が教えた通りに始めた。
「そう。それじゃあ、優しく唇を擦り合わせて。こういう風に」
私は、何世紀もの間、女性たちが行ってきたあの繊細で女性的な仕草を実践して見せた。夫は私が言った通りに行い、グロスを唇全体にまぶした。そして、挑発的に唇を半開きにし、鏡の中のその姿をじっと見ていた。
出来栄えに満足した私は、彼を連れて寝室へ行き、黒いパンティを取り出した。
「今朝、あなたのために買い物に行ってきたのよ。これ、素敵じゃない?」
そのサテンの生地を彼のペニスに撫でつける。
「これを履いて、ブラもつけるの。その上からジーンズとシャツを着てね。そうしたら、何か食べることにしましょう」
私は着替え部屋に行き、自分の化粧を始めた。3分ほどして夫が入ってきた。ジーンズとテニス・シューズ、そして濃い青のシャツを着ていた。シャツの下、ブラのカップが軽く押し上げていて胸の前に2つの丘が出来ているのがかすかに見える。
「ブラをつけるとき、何か困ったことあった?」 私は微笑みながら訊いた。
「フックを止められなかったから、前に回してフックを止め、その後、元に戻してから両腕を通したよ」
「アハハ。それでいいのよ」 私自身、初めてブラをつけた頃のことを思い出していた。「さあ、出かけましょう」
彼は立ち止まった。
「どういう意味? 出かけるって? 僕はこんな格好で家の外には出ないよ。これって、やりすぎだよ。外に行けば、いっぱい人がいるのは知ってるだろう? 他の人に、ピンクの爪をしてブラをつけているところなんか、見られたくない。絶対嫌だ!」
「あなた、こっちに来て」 そう言って、彼を寝室のドアにある鏡の前に来させた。
「何か、普段のあなたと違っているようなところ見える? よっぽど近くに寄って見れば別だけど」
鏡の前に立って自分の姿を見る夫を、私は見ていた。彼が家に帰ってきてから、彼はすでに2度、性的な欲求を満足させている。その開放感と、今は自分の服を着ていることで、夫はリラックスし始めているのが見て取れた。夫は、眉毛の辺りを少し詳しく調べ、実際、それほど目立っていないことに気づいたようだった。さらに、寝室の薄暗い明かりも手伝って、ネールも特に目立っていない。彼は、唇を舐め、グロスをいくらか取り除こうとしながら、確かに、私が彼にしたことは実際、目立たないと、嫌々ながらも納得したようだった。
「それじゃあ、ミス・ビッキー、出かけましょう! お腹がぺこぺこ」
彼と一緒に家を出て、車に向かった。彼は運転席の方に回ろうとした。
「ダメよ、あなた。今夜は私が運転するの。ディナーも私がおごるわ。今夜は、私の一番の友だちで、一番、愛している人をもてなしたいんだから」
つづく