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デス・バイ・ファッキング 第11章 (7) 

次の日になり、午前中に、僕たちはたぶんもう300キロくらい走った。前日と同じ州間高速道を使ってである。高速道路は、頭の中では嫌っているのだが、実際にはどうしても使わざるを得ない。分かっているさ。偽善者よ、汝の名前はアンドリューだ。アトランタの南のどこかで16号線に乗り換えた。そこを走ると、ほぼまっすぐステーツボロに着いた。

まあ、実際には、IAMはステーツボロにはない。ステーツボロの郊外にあると言った方が正確だ。どこか分からない場所にあるという感じではなく、むしろ、どこか分からない場所の郊外にあるといった感じだ。後で分かったことだが、この組織の場所は、まさに、おおよそ160年前にIAMを設立したハワード・ジョーンズが所有していた元々のプランテーションだったのである。まあ、当時の方がずっと豪勢で見栄えが良かっただろうと断言できるが。

僕がどうやって正確にIAMに辿り着くことができたのか、不思議に思うかもしれない。答えは簡単だ。単語一つ、あるいは単語二つなのかもしれないが、マップクエストだ。そのおかげである。ともかく、そのおかげで、このくすんで古びており、荒廃しきった大邸宅を見つけることができた。何エーカーも土地があるにもかかわらず、すべてまったく手入れされていない。邸宅も土地も、まるで過剰にハリケーンに襲われた場所のように風化して見えた。

玄関前のフロントポーチは広く、巨大なギリシャ建築風の柱が立っていたが、塗装は剥げ落ちていた。玄関ドアのそばには、別個の標識があり、「人類向上機構」と書かれているが、非常に小さな文字で書かれているので、その標識のまん前に行かないと誰も読めないだろう。

ドニーが玄関を開け、僕たちはメインのホールに入った。

そこは第二次世界大戦前からずっと放置されていたような荒れた状態だった。いたるところがホコリまみれ。床を覆っている敷物は破れ、ボロボロになっていた。

左手にドアが開いてるところがあって、その向こうは小さな事務室のようで、中央に古いデスクがあるのが見えた。そのデスクには、白髪混じりの髪を丸く束ねた小柄な老女が座っていた。細い銀縁の眼鏡をかけているせいか、ちょっとジョン・レノン風の印象を与えている。首元を閉じた襟の高い服を着ていて、肩にはかぎ針編みのショールを掛けていた。

いくつくらいなのだろう、僕には想像すらできなかった。だがどうしたって80歳にはなっているはずだ。彼女は僕たちに声をかけたが、その声は震えていた。唇がうまく開けていないように見えた。この老女が最後に人と話したのは、いつだったのだろう、と僕は思った。

「何か御用でしょうか?」 と老女が訊いた。

僕は彼女のデスクに近づき、答えた。「僕たちは、人類向上機構という組織を探しているのです。ここがそこだと思うのですが。誰か担当の方とお話がしたいのですが」

婦人は驚いた顔をした。

「ここがそれですが。標識をご覧になったでしょう? どんな用件でこちらに?」

彼女はドニーとディアドラに初めて気づいた様子だった。「あら、あなたたち双子なのね」

ディ・ディは頷いた。「はい、そうです。わたしたちは、ドナ・マーティンとディアドラ・マーティンです。少なくとも前まではそういう名前でした。今は、私はディアドラ・アドキンズと言います。ところで、あなたは?」

「私はドリス・ジョーンズ。機構を運営している人を知りたいようでしたら、あなた方の目の前にいる者がその人ですわ」

僕は小さな事務室の片隅に大昔のガリ版刷りの道具があるのを見つけた。それにデスクの背後の壁に、いまにも倒れそうなファイリング・キャビネットがいくつか並んでいる。デスクの上には手打ち式のレミングトン・タイプライター(参考)がちょこんと置いてある。これらを眺めながら、ここにあるもの全部を骨董市に出したらどれだけのお金になるだろうとぼんやり思った。


[2011/05/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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