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医者 Doctor(2) 

夫は、ある部屋のドアの前に私を連れて行き、中に入るように言った。すぐに気づいたことは、なんと彼は、私と一緒には中に入らないようであること! まあ、それでも夫はとても落ち着いて私を安心させるようにしていた。

「怖がることはないよ。ただ、流れにあわせていればいいんだよ。僕も別のドアから入るから」

この計画が一体どんなものなのか分からないけど、夫がこんなことを考えていたとは、私はとても驚いていた。でも、ワインや楽しかった雰囲気などのおかげで、私はかたくななところが消えていて、こんな途方もないことでも、それを受け入れる心積もりができていたのだろうと思う。結局、夫の指示に従うことにした。夫が、廊下を歩いて行って、別のドアから中に入るのを見届けた。彼が入った部屋を確めたかったからだ。もし夫とはぐれて、彼を探さなければならないことになった場合に備えて。そもそも、目の前のドアは鍵がかかっていないかどうかすら、確かじゃなかったのだから。

まあ、ドアには鍵がされておらず、私は恐る恐る中に入った。一瞬、今、自分は夢を見ているのではないかと思った。というのも、中には明かりがついていて、人々が順番を待っているし、受付の人すらいたのだから! まるで、日中の病院のように! しばらく、唖然としたまま、突っ立っていたと思う。すると、看護婦が現れて、待合室にいた女性2人を連れて行った。最初は、私のことに注意を払う人は誰もいなかったが、後に受付の人が顔を上げて私を見た。

「どうぞ、お入りください、サンダースさん」

受付の人が私の名前を口にしたのを聞いて、私は唖然としたものの、彼女のところに、夢の中にいるようにふらふらと歩いていったのだった。彼女は私に記入用紙を手渡した。まさに、初診で病院に来たときに渡されるような、各種情報を記入する用紙そのものだった! その用紙と、彼女が渡してくれたペンとクリップ・ボードを持って、私は腰を降ろした。

気づかれないようにして、こっそりと待合室にいる別の人を見てみた。私の反対側に座っている女性で、今は、雑誌を読んでいる。この状況を信じられないと思いきょろきょろすることと、この状況について何も考えず単に従うこと。その2つのことを交互に繰り返していたと思う。反対側の女性は、私が彼女を見ていたとき、一度、顔を上げて私を見た。彼女は、謙遜してはいるものの、私を見下して楽しんでいるような、そういう表情を見せていた。それ以降は、私はもはや不思議に思ってきょろきょろしてしまいがちになって困ることはやめにし、用紙に記入することに専念するようになった。唯一、私がこの場にそぐわないことはと言うと、私は街の一番のレストランに着ていくような服装をしていたことだった。他の人は普通に病院に来るときのような日常着を着ていた。

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