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裏切り 第2章 (13:終) 


ポールは、ダイアナにコルセットをつけた時と同じように、レース紐をぎゅっと引っ張り、締めあげ、そして留めた。僕はそれをされた瞬間、驚き、ハッと息を吐き出した。まるで万力で胴体を挟まれたような感じで、大きく息を吸うことができない。

コルセット職人は、続いて、ガーター紐をパンティの下に通し、その先にストッキングを留めなおした。そして一歩引きさがり、ダイアナの隣に並び、批評家の目つきで僕を見た。考え深げにあごを撫でながら見ている。

そして彼は感想を口にした。

「何というか…。あなたは非常に素晴らしい。素晴らしい見栄えです。この姿をスーツの中に隠すなんて、本当にもったいない。少なくとも男性スーツの中に隠すのはもったいないですよ。ちょっとだけ体型のための運動をして、多少、姿勢の訓練をしたら、この次の私のショーで、ダイアナと一緒にモデルをしてもらうこともできますよ」

そんなことありえないとびっくりして言いだそうとしたら、ダイアナが僕の隣にすうっと寄ってきて、腕を僕の腕にするりと絡めた。

「そうなったら、本当に嬉しいわ。そうよね、リサ?」 と彼女は明るい声で言い、僕にウインクをした。「今夜、ここに来る途中、車の中でも彼女にそのことについて誘ったところなの。もしそうなったらを思って、彼、私と同じくらいワクワクしてるのよ。その訓練も今すぐ始めたくて、待ちきれないわ。そう言えば、あなたがモデルに大きく値引きしてくれるのを私、知ってるわよ。特に、ショーの終わりにクレジットカードを手にしたお客さんの行列ができるようなモデルには、すごい値引きをしてくれることを。女の子には、良いことがたくさんあってもありすぎることはないって言うじゃない? あれ、間違いなのかしら?」

僕は、間違いだよと叫ぼうとしたが、ダイアナの鉛筆の先のようなスティレットのヒールが足の甲に乗せられ、微妙に圧力をかけられるのを感じた。僕に返事を変えるよう促している。

「その話……夢のようだ」 と慎重に言葉を選んで答えた。

ダイアナは、僕の手をぎゅっと握って、黙ったまま感謝の気持ちを僕に伝えた。

「次のショーはヒルトンでするんです。ミスター・ゲイ・レザー・ページェントと共催で。5月末、メモリアル・デー(戦没将兵記念日)の週の週末です。ダイアナ? その時まで彼女の準備はできますか?」

「ぜんぜん問題ないわ。知っての通り、私は、リンガーズで働いている6人の女の子たちを育て上げたドラッグ・マザー(参考)なのよ。そのうち何人かは、始める前は本当にゴツゴツした岩みたいな男たちだったんだから。それに比べれば、私のリサはお茶の子さいさい」

僕はカードの請求書とレシートにサインをした。そして、何気ない興味から、請求額を見た。税金を別にして、たった、650ドル? この何倍ものおカネを、あの高級コートも含めてダイアナの衣装に使ったではないか。彼女には使ったお金の分だけ、いやそれ以上の価値がある。

僕たちは、ポールに専門家として手伝ってもらい、改めて着替えをした。ダイアナは、新たにバストラインが強調され、胸が魅力的にドレスから溢れ出そうに見えていた。僕自身も盛り上がった胸をしていたが、スーツコートを着た後も、前より少し突き出てる感じになっていた。ズボンのベルトはゆるゆるになっていて、いちばん奥の穴で留めなければならなかった。そこで留めてもズボンの腰回りはゆるゆるで、逆にヒップやお尻の方はキツキツになっていた。

ダイアナにコートを着せるのは僕の特権だったが、ポールはそれを僕から剥奪し、彼女に豪華な毛皮のコートを着せていた。不思議なことに、僕は、彼の意図せぬ侮辱行為に、まったく気分を害された感じにならなかった。紳士が女性がコートを着るのを手伝うのは、当然のことと思えたから。……紳士? ちょっと待て。そうすると僕は…?

「ディナーに行きましょう!」 とダイアナが僕の思考を遮った。「もうお腹がペコペコ。私、急に、大きなお肉を食べたい気分になってるの」

つづく


[2011/07/14] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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