その頃にはアンジーは化粧を終え、着替えに差し掛かっていた。彼女は白いレースとサテンのパンティとそれにマッチしたブラジャーをつけ、白いスポーツ・ソックスを履いた。それからカーキのズボンを履き、Vネックのカシミア・セーターを着た。
彼女が着替え終わる頃には、僕は足の爪に2層目分のネイルを塗り終わっていた。アンジーは、それで十分と言い、今度はお化粧に取りかかりなさいと言った。そして僕用のドレッサーを漁って、僕が着る服を取りだした。
化粧に関して、昨夜のように見栄え良いと思える状態になるまで、かなり手こずり、時間がかかってしまった。髪の毛の方はもっと時間がかかった。ようやく化粧が終わったが、その頃には、アンジーは、コーヒーを作ってるわねと言ってすでに寝室を出てしまっていた。彼女が僕のために用意した衣装を見たら、彼女の服装はカジュアルだったのに対し、僕の方は、ずいぶんカジュアルとはかけ離れた服装となっていた。
ズボンとセーターの代わりに、僕にはスカートとタートルネックのセーターだった。それにランジェリーもあった。パンティとビスチェとストッキングである。ビスチェを着たら両脇が引き締まって、砂時計の体型になることができた。それにそのビスチェにはガーター・ストラップも付いており、それでもってストッキングを吊り下げた。
スカートを履いてみたら、前夜に着たドレスほどは裾丈が短くないのに気づいた。とは言っても、膝の上、5センチくらいの丈だった。セーターは僕の胴体をぴっちり包む感じで、偽の胸とはいえ、かなり魅力的に胸が盛り上がって見える。ただ、失敗したと思ったことがあって、それはセーターを着た後、髪の毛と化粧の一部をもう一度やり直さなければならなかったことだった。
靴はヒール高5センチほどで、ヒール底が幅広になっているものだった。それを履いた時、アンジーが寝室に戻ってきた。
「まあ素敵、ちゃんと着替えができたわね。ちょっとお願いだけど、朝食の前にベッドメーキングをするのを手伝ってくれる?」
ベッドのシーツを剥がしながら、僕はかなり冗談っぽい口調で訊いてみた。
「どうしてあなたはズボンなのに、私はスカートなの?」
アンジーはくすくす笑った。
「一つには、私はこれまでの人生、ずっと女の子でいたのに対して、あなたの場合は、まだ一日しか女の子になっていないから。できるだけスカートを履くようにした方がいいと思うわよ。そうすれば、女の子の服装をしている間、あなたは女性面が強化されて、男性面が抑制されることになるから。もう一つの理由は、私がそうしなさいと言ったから。同意したのを覚えているわね? 私がリードして、あなたは私に従う。私の言うこと分かったわね?」
僕は、アンジーに陰毛を握られ(
参考)、思うがままに支配されているのを実感した。もっとも陰毛自体、すでに剃ってなくなっているのだが。もっとも、僕はあまり気にしていたわけではない。そもそも、女物の服を身につけるのが好きになり始めていたのである。一週間ランジェリを着ていたが、とても着心地が良いと思っていた。そしてドレスとスカートを着れば、どこか、これで完璧になったような気がしていた。
ベッドメイキングを終え、脱ぎ散らかしてあった衣類を拾い、片づけると、アンジーは僕の手を取って一緒に階下に降りた。階段を降りながら、彼女が訊いた。
「ねえ、昨日の夜、私のお尻に舌を使ってくれたでしょう? あの時、どうだった? 良かった? 私の方はとても感じたわ」
「ええ、私も」 と僕は素早くこたえた。
アンジーはくすくす笑って、囁き声で続けた。「じゃあ、私のお尻にも、あなたの持ってる可愛いクリトリスを入れられたらいいのにって思ったんじゃない?」
この質問には混乱してしまった。確かに昨夜、彼女は僕のペニスのことをクリトリスと呼んだが、その時は変な感覚にはならなかった。でも、いまは違う。昨夜のあの時、僕はとても興奮していたし、それは彼女も同じだったからだ。あの時、アンジーが僕のアレを吹き出物と呼んだとしても、僕は気にしなかっただろう。でも今は、昼のさなかであるし、別に性的に興奮しているわけでもない。そうなると気になってしまうのだった。
「どうして私のペニスのことをクリトリスと呼ぶの?」
アンジーは僕の手を握って言った。「ジャッキー? あなたは私の女友達なの。だったらどうしておちんちんがあるのよ? おちんちんを持ってるのは男だけ。私たち女にはクリトリスがあるの。そうじゃない?」
「まあそうだけど…」 と答えたが、納得していたとは言い難い。
アンジーはにっこり微笑み、甘い声で言った。「ねえ、私の質問に答えてくれる?」
「もちろん、あなたのお尻にしてみたいわ…。というか、そう思わない人なんかいないんじゃないかと…」
階段を降り切ると彼女は僕の方を向いた。「ということは、あなたは私のお尻にあなたのクリトリスでしてみたいと言ってるのね? そう?」
彼女は僕の口からクリトリスと言うのを聞きたがっているのを知った。これも僕の女性面を強化する方法の一つなんだろうなと思った。
「ええ、私のクリトリスであなたのお尻にしてみたいわ」
その言葉を発したとたん、アンジーが喜んで跳ねそうになってるのを見た。
「私もよ、ジャッキー。クリトリスでもおちんちんでもちんぽでもお尻にされるのが好き。でも、一つ訊いておきたいんだけど、あなたこれまで誰かのお尻にクリトリスを入れたことがあるの?」
もちろんと言いかけたが、そう言ったらウソになる。それにアンジーなら僕が嘘をついてるのを見破るだろうとも思った。どうしてかは分からないけど、アンジーには嘘をついたらすぐに見破られてしまうと思っていた。
「いいえ、ないの。でも、約束するわ、とても優しくするって」
アンジーは指先で僕の顔を愛撫しながら言った。
「一度試してみてね。…でも、そういう愛し方の経験がないとすると、私に痛い思いをさせても、それに気づかないことになるかもしれないわね。気づいた時には遅すぎたということになるかも。それはいけないわ。あなたに運転席についてもらう前に、一度、あなたに受け手側になってもらって、どんな感じなのか教えてあげた方が良さそうね」
僕はとてつもない喜びから、突如、悲しみのどん底に突き落とされたような感覚を味わった。アンジーにアナルセックスすることになると喜んだのに、気がついたら、彼女が僕にそれをするという話になってしまったのだ。でも、よくよく考えたら、アンジーにはそれはできるはずがないことに気がついた。つまり、彼女にはペニスがあるわけでも、巨大なクリトリスがあるわけでもないのだ。だから、そのような形で僕を犯すことなどできるわけがない、と。