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Found 発見 (1) 

「Found 発見」 by deirdre, 10/9/95

私はダイアンを見ながら座っていた。唖然としていたと言うだけでは控え目すぎる。「私、こんなこと、すべきじゃないと思ってたのに」と彼女は言った。

私は返事をしなかった。私はまだ座ったまま、頭の中がぐるぐるしていた。リチャードが言った言葉! こんなことになるなんて、まだ信じられずにいた。彼を信頼していたのに…。心を開いて、彼を受け入れたのに…! まるで悪夢のよう。いや、本物の悪夢。

「最初から、こんなことすべきじゃないと分かっていたわ…」とダイアンが言った。

気づくと彼女はすでに立ちあがっていて、座ってる私を見下ろしていた。困った顔をしている。

私は何も言わなかった。またリチャードのことを考えていた。

「……話した方がいいわよ」 彼女がようやく続きを言った。今は私の隣に腰を降ろしている。

「彼、どうしてあんなふうな?」 やっと言葉が出た。目に涙が出そう。

「あなたに誘われた時、断るべきだったんだわ…。いいこと、ケイト。誰にでも秘密はあるものなの」

「でも……」

「いいえ! 私の言うことを聞いて。あなたにも秘密はあるのよ」

「私は、人に鞭を振るったりなんかしたくないわ!」

「そうだけど…。ちゃんと聞いて! あなたが、彼の心の奥を知りたいと思っていたの。私は、そんなこと忘れなさいって言ったわ。大変なことになるって分かっていたもの。だから、あなたに誘われた時、私、断るべきだったんだわ」

「つまり、私は知らない方が良かったと思ってるということ?」

ダイアンはすぐには返事せず、ただ、大きく息を吸った。「ケイト…? でも、あれって、そんなに変なことじゃないの」

私はただダイアンを見つめていた。意味が分からない。私の彼氏が私を鞭で叩きたいと思ってることが、「変なことじゃない」って? 私を辱めることが? 彼の言葉を使えば、私に「ご慈悲を請わせる」ことが?

ダイアンはしばらく黙っていたけど、ようやく続きを言った。

「人の心の中を探ったら、何と言うか、予期してなかったものが出てくるかもしれないと思うべきなのよ。ああ、本当に後悔してるわ。こんなこと、話しに乗るんじゃなかった。正しいことじゃなかったのよ。あなたとトムで…あの問題があったからとしても、こんなことをするのに同意しちゃいけなかったんだわ」

ダイアナはそこで話しを止めた。でも私は返事をしなかった。言葉が出せなかったから。目がチクチクして涙が溢れそう。ほとんど目が見えない。

ダイアナが続けた。「ねえ、ちゃんと聞いて。リチャードには何も悪い点はないのよ」

「でも……」

「彼、あなたを愛してるって言ったの聞いたでしょう?」

「だけど、私に鞭を使いたいって!」

「そう。でもそれは、私たちがしつこく訊いたから。いいこと? 催眠術から分かることが一つあるとすれば、それは、他の人の個人的な思いについてあまり感情的になるなということ。その点を乗り越えるようにならなくちゃダメなの。さもないと、確実に彼を失うことになるわよ」

「彼を失う?!」 私は突然ヒステリックになっていた。「私、彼とは一緒にいられないと思ってるのよ!」

「ちょっと! あなた、彼を愛してるって言ったじゃない。だからこそ、彼の頭の中を覗いてみたいと。忘れたの? リチャードがトムみたいな人じゃないのを確かめたいって? それに、あなたは、今はリチャードはあなたを愛していると分かってるのに!」

「でも……」

「他のことは全部忘れるの!」

私はしばらく黙っていた。ふと、自分はダイアナのことを全然わかっていないんじゃないかと思った。ダイアナはどうしてこんなことが言えるのだろう?

「でも、彼が私を痛めつけたらどうするの?」

「どうしてリチャードがあなたを痛めつけるのよ?」

「だって、そうしたいと思ってるんでしょ! そう言ったわ…」

「それは彼の欲望なの。その点、他の人と変わらないわ。人にはたくさん欲望があるものなの」

「……彼は私を痛めつけたいと思ってる。もし彼と一緒にいたら、彼に痛めつけられるんだわ」

「いいえ、リチャードはそんなことしないわ」

「どうして?」

「彼がちゃんとした人だからよ。リチャードはちゃんとした人だから、あなたが望まぬ限りは、あなたを痛めつけるのは正しいことではないと分かってるの」

「でも……」


[2011/07/27] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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