僕がギャフをつけ、その位置を調整している間、アンジーは僕のドレッサーのところに行き、今夜、僕が着るランジェリーを取り出していた。彼女が選んだのは、黒いレースのパンティと、黒いストッキング、それに黒のレースとサテンのコルセットだった。今夜、僕は初めてコルセットを身につけることになるだろう。そして、コルセットを着るのは今夜だけではなく、これから何回も着ることになるのは確実だと思った。
お化粧にとりかかろうとしたら、アンジーはランジェリーを着てからにしてと言った。まずはストッキングから履くように注意された。コルセットを着た後だと、腰を屈めるのが難しくなるからと。
ストッキングを履き終えると、彼女は僕の胴周りにコルセットを巻きつけた。お腹周りが緩まないように、僕はすぐに胴体の前の20個ほどのホックを留めた。アンジーは背中側のレース紐を締めつけ始めた。
すでにウエスト・シンチャー(
参考)を着ていて、それもかなりきついと思っていたが、コルセットを着ると、そのウエスト・シンチャーですら何でもないように感じられた。アンジーはコルセットのレース紐をかなりきつく締めつけ、僕は、その締めつけに対応するために、体内の呼気をすべて吐き出さなければならなかった。ようやく締めつけが終わった時には、呼吸するのもやっとで、少しめまいを感じたほどだった。
ようやくなんとか普通に呼吸できるようになった後、ストッキングをガーターに留め、その後、パンティを履いた。
そしてその後、初めて鏡で自分の姿を見たのだが、その自分の姿を見て驚いた。コルセットのおかげで、僕の体は完璧なほど砂時計のプロポーションになっていたのである。確かに呼吸するのも大変だが、それだけの価値があると思った。お腹は平らに引き締まり、左右の脇腹が内側に引き寄せられ、本当に女性の腰のような幻想を与えてくれている。コルセットには胸のカップもついていて、僕の偽乳房を包んだ。このためブラジャーは必要ない。
茫然として鏡を見ていたが、アンジーにちょっと急かされ、お化粧に取り掛かった。僕がお化粧をしている間、アンジーは僕の髪のセットをしていた。最初、彼女は何か泡のようなものを僕の髪につけた。後で知ったのだが、それはムースだったらしい。そのムースで髪をぬらした後、カール用のブラシを使い、僕の髪にカールをつけ始めた。やがて、僕の髪はまったく新しいヘア・スタイルになっていたのである。
彼女が僕のために選んだドレスは、非常にタイトなものだった。まるでもう一つの皮膚をまとったように僕の体をぴったりと包むドレスだった。色は真っ黒で、丈がとても短い。太もものかなりの部分が露出していた。裾は膝から15センチは上。襟周りの方は首元まで来ていたが、首を隠すまでにはなっていない。本当にセクシーなドレスで、ギャフのおかげで、みっともない盛り上がりを見せることなく、着こなせていた。
このドレスには、しかし、二つ、心配なことがあった。一つはとても丈が短くタイトなため、いつも注意していないと、スカートが捲りあがり、ストッキングの付け根が露わになってしまうことだった。もう一つは首の問題だった。首が隠れていないので、喉仏があるのが見えてしまうのである。でも、この問題についてはアンジーは首に黒いチョーカーを巻くことで解決してくれた。
アンジー自身も新しい黒いドレスを着た。このドレスも僕のと同じくタイトでショートなものだったが、一つだけ違いがあって、胸元が大きく開いていて、胸の谷間がかなり見えていたところである。それにアンジーは僕と異なりコルセットはつけなかった。つけなくても、最初から砂時計のプロポーションになっているので、その必要がない。
彼女の靴は、10センチのスティレット・ヒールの黒いパンプスだった。僕には黒いサンダルを渡させた。それにはストラップがついていて、足の甲のところで交差し、足首に巻きつけてバックルで留めるデザインになっていた。ヒールは7センチほどだけど、アンジーの靴ほど細いヒールではなかった。とはいえ、これまでに履いたハイヒールよりは、ヒール部分が細い。
持ち物をハンドバックに移し替え、身体に香水を吹きつけ、とうとう準備が整った。ふたりともふくらはぎまでの丈の皮コートを羽織り、階段を下り、そして玄関を出た。
僕は、その時はまだ普通の感情だったが、車に乗り込むと、次第に不安になってきた。それまでは身支度に夢中で忘れていたのだが、僕はまた人の目につく場所に行こうとしているのである。昼間に外出した時ほどの不安感ではなかったが、両手が震えていたし、どうしてもソワソワしてしまい、落ち着くことができなかった。
アンジーは僕の手を握って落ち着かせてくれた。
「大丈夫よ。昼間のモールですらバレなかったんだから、夜の薄暗いクラブなら、もっとバレないわ。ただリラックスして、その場の流れを楽しめばいいの」
もちろん彼女の言うとおりなのであるが、それでも不安は消えなかった。
つづく