それから2時間くらいして息子が帰ってきた。なんだかとても興奮している様子。
「あら、お帰り。何か楽しいことがあったみたいね」 と息子のところにキスを求めて近づきながら言った。
「ママ、僕たちモデルを雇うことになったんだよ。写真を撮る…。プロのモデルの写真が撮れるんだ!」 息子はほとんど叫ぶような声で言った。
「ちょっと待って、モデルって…。どんな写真を撮るの?」
息子は返事もせずに自分の部屋へあがって行った。この話にとても好奇心をくすぐられたので、わたしも後をつけて、息子の部屋に入った。息子は、早速、デジタルカメラを出して用意していた。
「トミー? モデルって、どんなモデル?」
息子はカメラをいじり、これまで撮った写真を調べながら言った。
「
シアーズとか
JPペニーとか通販会社があるだろう? その人はそこのモデルなんだ。よくカタログでポーズを取ってるモデル…。ああいう仕事のモデル。僕たちのモデルになってくれるんだって」
「ふーん、面白そうね。どんな写真を撮るつもりなの? それに、僕たちって、他には誰がいるの?」
息子はわたしが聞いてる本当の意味を知って、ちょっと顔を上げた。
「ママ、ママが考えているようなのじゃないよ。あと、僕たちと言うのは、僕と僕の親友のティムとジェイソンのこと。僕たちウェブ・サイトを立ち上げようとしてるんだ。ママも知ってる通り、3人とも写真に入れ込んでるからね。…それで、サイトを立ち上げる時に、プロのモデルが必要だと考えたわけ。…そうすれば、他の人に興味を持ってもらえるから。ティムが、友人を通して、このモデルの女の子と知り合ったんだ。そして彼女がモデルの仕事を引き受けてくれるって言ってくれたらしいんだよ。今から20分後、僕たちは彼女と会うことになっているんだ。古い鉄道の敷地で」
「トミー、ウェブサイトって、写真って……。ちょっと落ち着いて、お願い。ママ、あなたに確かめておかなくちゃいけないことがあるわ…」
わたしは本当に心配顔になって息子を見た。息子もわたしの心配を察したみたい。わたしに近づいて、わたしを抱き寄せ、耳元で囁いた。
「ママ、大丈夫だよ。ママの写真は絶対にアップしないから。僕が撮ったのは絶対に…。僕を信じて」
それを聞いて少し安心した。心臓の鼓動が元の普通のリズムに戻るのを感じた。息子に抱かれるととても安心する。このまま溶けていたい気持。
「ええ、ママも分かってるから。ママの写真をアップしてもいいわよ。でも、あからさまなのはダメ。いいわね?」
そう言って顔を上げると、息子の唇がすぐそこに来ていて、わたしの唇に重なった。
ふたり抱き合ったまま、キスを続けた。しばらくたって息子がわたしから離れて、にっこりと笑った。
「ねえ、ママ。なんなら、僕と一緒に行かない? 撮影の様子も見れるし、僕の友だちにも会えるよ。ねえ、行こうよ」
正直言って、その考えにわたしもそそられていた。今日は何も予定がないし、息子と一緒に外出するのが一番良さそうに思えた。
「そうね、そうするわ。ちょっと待ってね、何か着てくるから。その後、出かけましょう」
「えー? ママ、変だよ。アハハ。ママはちゃんと服を着てるんじゃない?」
「でもね、トミーのお友達に会うんでしょう? だったら素敵なママの方がいいんじゃない?」 とわたしは腰に手を当てて、ちょっと無邪気にポーズを取って見せた。
「ああ。うん、そうだね! それに、何かセクシーな服がいいな…。一緒にバーに行った時のような…」
もちろん、息子の言ったバーというのがいつのバーのことを言ってるか、わかっていた。あの夜に着た露出満点の服を着て、息子のお友達に会う? それを思っただけで心臓がドキドキしてしまった。あの服で息子の前に出るのと、あの服で息子のお友達の前に出るのは、ぜんぜん違うことだから。
わたしは急いで二階に上がり、15分後、ちょっとナーバスな笑顔をしながら、階段を下りた。