次の角を曲がり、コーヒーショップの隣の店の前に自転車を止めた。髪の毛を撫でつけながら、店のドアを入る。向かいのシーサイド・ダイナーをちらりと見たが、まだ朝食の時間帯といえるので、お客がたくさん入っていた。
コーヒーショップに入るとすぐにトリスタの姿が見えた。彼女はブースから立ち上がるところだった。トリスタは俺に気づくと、こっちに来るようにと笑顔になって手招きした。彼女のいたブースに行くと、すぐに俺に抱きつき、唇に軽くキスをした。
「来てくれて嬉しいわ」 まだ俺の腰に手をまわしたまま、トリスタは言った。
「どんなことがあっても、俺は君に会いに来るって。分かってるだろ」 と俺も彼女の唇に軽くキスを返した。
トリスタはテーブルへ目をやって言った。「ねえ、ジャスティン? レイチェルとバルを紹介するわ」
俺たちは互いに紹介し合った後、席についた。トリスタは俺の隣に座った。改めて見ると、バルはアジア系なのだろう。茶色の髪の毛をショートにしている。アーモンド型の綺麗な目をしていて、胸はかなりナイスなサイズだ。彼女の瞳を覗きこんだ瞬間、この女、たぶん俺に気があるかもしれないと思った。
「レイチェルは、この世で私のいちばんの親友」 とトリスタは俺に寄りかかりながら言った。
「レイチェルのお父さんも教会の牧師をしているの。レイチェルの家は教会のすぐ近くなのよ」 トリスタは俺のコーヒーカップを取り、コーヒーを注ぎながら言った。
「バルは交換留学生。この夏、ずっとここに滞在することになってるのよ」 とコーヒーにミルクを垂らしながら続けた。
「お二人に会えて嬉しいです」 と俺は、握手をしようと手を差し出した。
バルの手は俺の手に溶け込むような感じで、マニキュアを塗った指を俺の手のひらをなぞりながら握手をした。ふたりともしっかり感触を楽しむ感じで握手をした。
「会えて嬉しいわ」とバルは俺の瞳の奥を見つめながら言う。
「僕も嬉しいよ」 と、名残惜しそうにバルの手を解き、今度はレイチェルに手を差し出した。
「会えてうれしいです、レイチェル」 そういうと、レイチェルはちょっと警戒しながら手を取り、握手した。
「私も」 とレイチェルは言ったものの、彼女の指も手も、氷のように冷たかった。
レイチェルの表情から察するに、どうやら、あまりフレンドリーな人じゃないようだ。そもそも、俺が一緒にいることにすら興味を持っていないようだった。一方のバルは、俺が座ってからずっと俺から目を離していない。
トリスタは他の客が何か注文してないかと辺りを見回していた。「レイチェルは私より年上だけど、私のいちばんの親友なの」
「レイチェル、年はいくつ?」 と彼女のきれいな緑色の瞳を覗きこみながら訊いてみた。
「21」 と、愛らしいブロンドの髪の毛を肩の後ろに払いのけながら言う。
「バル、君は?」 と、同じように彼女の美しい茶色の瞳を覗きこみながら訊いた。
「私は17です」 と優しい口調で、俺の瞳をまっすぐに見つめながらバルは答えた。
「…でも、明後日には18歳になるの」 とバルは身体を起こして、背もたれに背をつけて付け加えた。その姿勢のおかげで、かなり発達した胸の様子がよく見えた。
スカートはピンク色でぴっちりと太ももを包んでいる。胸の方も豊かで、包んでいるトップの生地がパンパンに張り詰めている。俺はレイチェルの方へ顔を向けたが、バルは依然として俺のことを見続けたままだった。
「レイチェルは婚約しているの」
トリスタはブースから立ち上がりながら言った。客が彼女を呼んだようだ。トリスタはコーヒーのポットを取った。肩越しにトリスタを見ると、向こうにいる小柄な老人のところに行くところだった。コーヒーを注ぐために前のめりになると、ジーンズがぴっちりと脚を包んでいるので、見事な尻の形がはっきり分かる。
「そう、それはおめでとう。結婚はいつなの?」 と俺はレイチェルの長く細い指を見ながら、訊いた。明るい赤の爪は染み一つなくきれいに塗られていたが、それより、俺の目を惹いたのは、指についている巨大なダイヤの指輪だった。
「今度の10月から1年後」 とレイチェルは、手をかざして、その指輪を俺に見せびらかすようにして答えた。