息子はわたしの姿を見るや否や、ほんとに目をまん丸にして、息を飲んでいた。誰だってそうなるかも。わたしは、肌にぴっちりのタイトな黒いミニスカートに、白いストッキングを履いていた。このストッキングはガーターなしで留まるもの。スカートの裾のちょっと上のところまでの長さ。ハイヒールは持っているなかでも一番ヒールが高いのを履いた。上のブラウスも身体に密着したピチピチので、胸元が深く切れ込んでいる。それにほとんどシースルー。ブラジャーはレースで、これもシースルー。でも、ブラウスと組み合わせると、効果的にうまく胸を隠してくれる。ブラウスの胸回りは、かなり露出気味で、その端のところがちょうどブラの端と重なるくらい。だから、わたしの胸の豊かな谷間も、お乳の肉のはみ出た部分も見えていて、とてもセクシー。
「わーお! ママ! すごい…。わーお!」 息子は口をあけっぱなし。
わたしは、笑顔で息子を見ながら階段を降りた。わたしの姿を見て、息子が影響を受けてるのが楽しい。こういうふうに自分の身体を誇らしく見せびらかしたいと思っていた。そうすれば、息子も、素敵なママがいると、お友達に自慢できるだろうと思って。
「その反応、ママが着てるものが気に入ったと解釈するわね。これ、ちょっと露出し過ぎじゃないかしら?」
「ぜんぜん! 完璧だよ!」
「お友達にこの恰好で会っても、大丈夫と思うのね?」
息子は、悪戯そうな笑みを浮かべてわたしを見た。
「ママを見たら、みんな、大騒ぎするよ」
息子は紳士がするように手を差し出し、わたしの手を取って、ガレージにある車へとエスコートした。前のドライブとは違って、今回は、わたしが助手席に座った。腰を降ろす時、ちょっとだけ、脚の間を覗かせてあげた。こういうことをするのが大好き。セクシーに、ちょっとだけ大胆に振舞って焦らすのが大好き。
写真撮影をするという場所までは、そんなに時間はかからなかった。そこは、古い鉄道の敷地で、かなり荒れ果てた場所。ずっと何も作業がなされていない感じ。そこの敷地に入る門は、大半、施錠されていたけど、一か所だけ車が通れる幅くらい開いたゲートがあって、驚いた。
「トミー? ここ、入ってもいいところなの?」 ちょっと心配になって訊いた。
「ティムのお父さんは鉄道の仕事をしてるんだ。話しをしたら許可してくれて、このゲートの鍵も貸してくれたんだよ。僕たちは写真を撮るだけだって知ってるから、あまり、心配はしていなかったよ」
貨車の間を車で進み、ようやく、撮影するという場所についた。そこは、貨車で四方が完全に取り巻かれたような場所で、砂利敷きの地面。だいたい25メートル四方の広さの場所だった。すでに車が一台とまっていて、そのそばに男の子がふたり立っていた。
車を止めて、その子たちのところに歩いて行った。
「やあ、ティムはどこ?」 と息子が訊いた。
「分からない。もう、来ていてもいいんだけどなあ」 背の高い、ブロンド髪の子が答えた。
わたしは、息子のお友達が二人ともかなりハンサムで、体つきもしっかりしてるのを見て、ちょっと驚いていた。ふたりともTシャツとジーンズ姿。Tシャツはぴっちりと身体を包んでいて、なかなか逞しそうな胸板と腕を見せていた。あからさまにお口をあんぐり開けて見つめたりせず、視線を逸らすべきだったんだけど、できなかった。
ふたりとも、わたしが誰か知りたがっているようで、わたしのことを見ていた。
「ああ、こちらは僕のママだよ。ママ? こちらはジェイソンとフランク…。あ、ジェイソンのことは知ってるよね? ジェニーンの息子だよ」
え? わたしのお友達のジェニーン? あらまあ! これがジェイソン? しばらく会わないうちに、こんなに大きくなって!
「こんにちは。フランク君? 会えてうれしいわ。それにジェイソン、お久しぶり。ママはお元気?」 わたしはそれぞれに手を差し出した。
「こんにちは、ミセス…」
「ケイトと呼んで」 と素早くジェイソンに注文をつけた。
わたしは、二人にはわたしがここにいても気にしないでいてほしかった。そのためには、名前で呼び合う間柄しておくのが良いと思った。ふたりともちょっと困ったような顔でわたしを見てたけど、ともかく握手してくれた。
「お母さんは元気ですよ。今は仕事でずっと忙しくしてます」
ジェニーンはモデル業界に入って働いている。彼女自身はモデルではない。彼女がモデルになってもおかしくないほど、小柄で可愛い人なんだけど。モデル業界の編集関係の仕事をしている。わたしたちは、たまに一緒にコーヒーを飲みながらおしゃべりをする間柄で、とても仲良しだ。
「ケイト、会えてうれしいよ」 とフランクが言った。
「あのね、僕のママも写真に興味があるんだ。どういうふうに写真撮影をするのか見たいというので連れてきたんだ」 と息子が言った。
「クールだね! ケイトもモデルになるの?」 とジェイソンが訊いた。
「いえ、いえ…。ただ、ちょっと、トミーの作品を見るのが好きなだけ。いい趣味だなあと思って…」
そう言いながら、顔が少し赤らむのを感じた。トミーの作品ってわたしの写真のことだし、わたしにアレをしているときの写真だったから…。
「あの…。こんなこと言うと気を悪くするかもしれないけど…。ケイトはモデルになっても十分、通用すると思うよ。モデルの体つきをしている…」
ジェイソンはそう言うと、顔をちょっと赤らめた。
多分、ジェイソンは自分の友だちの母親にこういうことを言って、少し恥ずかしくなったのだろうと思う。わたしは、その言葉はジェイソンの心からのお世辞と思って、にっこり微笑んだ。
改めて息子のお友達をよく見てみた。ジェイソンの方はすぐに好きになった。礼儀正しいけど、率直だし、自分に誇りを持っているみたい。まあ、この年齢だから未熟なところはあるけど。ブロンドの髪の毛と青い瞳のため、どこか、よくビーチで遊んでいるスケボー小僧のような雰囲気があった。その、青い瞳がときどきわたしのことを盗み見しているのを感じた。視線をわたしの身体の上から下へと走らせている。でも、それはいやらしい視線ではない。慎ましく、わたしにばれないようにして見ている。でも、もちろん、わたしには、その視線がはっきり感じ取れていた。
一方のフランクは、ジェイソンとはほぼ正反対の印象。黒い髪と肌の色も濃い目。そのため、どこか傲慢そうな、鋭い印象があった。背はトミーやジェイソンよりも高く、胸板や腕のところも、ずっと逞しそうだった。Tシャツの上からも、中の盛り上がった筋肉がはっきりと分かる。目は茶色で、人を見据えるような視線で力が入ってる。ほとんど、命令するような目つき。どうしてだか分からないけど、フランクに見られると、身体がゾクゾクして、無意識的に身体を強張らせてしまう。
「あのなあ、ティムはもう30分も遅刻してるぜ。言いたくないが、ティムはモデルの件で、しくじったんじゃねえのか」 とフランクが太い声で言った。
トミーもジェイソンも、顔をしかめてフランクを見た。
「もうちょっとだけ待とうよ。そのうち、来るさ」 と息子が言った。