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デス・バイ・ファッキング 第12章 (9) 

「…さて、今度は人間について話すことにしよう…」

「…哺乳類の中で、人間だけが、飲み込むことと呼吸を同時にできない種なんだ。ふたりとも知っていた? ただ、それには例外がある。その例外は、二人とも、毎日、だいたい4時間ごとに見てるんだよ。そう、赤ちゃんは別なんだ。赤ちゃんは飲むことと呼吸を同時にできる。だが、2歳を過ぎると、人間の咽頭は下降して、突然、飲むことと呼吸を同時にできなくなるんだ。片方だけならもちろんできるけど、同時は無理になる…」

「…そこで問題なのは、そういうことが、どんな適応になっているのかという点だ。理屈が分からないんだ。飲むのと息をするのを両方できた方が適応度が高いように思われるのに、片方しかできないふうに弱めてしまうのは、一種、進化に反しているのではないかと…」

「で、理由は何だと思う? 咽頭が喉の奥へと下がっているので、人間は他の動物が出せない音も出せるようになっている。複雑な音を出せるようになり、それが人間の言語に発達したのだと。他の動物は限られた範囲の音しか出せないが、人間の場合は出せる音は際限がないと…」

「…ということは、咽頭が降下したのは、人間言語を促進させるためだと。でも、それで正しいかというと、多分、これは間違い。別に言語を使えるようになるために咽頭が降下したわけではない。というのも、言語が発達する何万年も前に咽頭は降下しているから。多分ね。何回も『多分』という言葉を使ってすまないけど、ここの部分は根拠がぐらついているところだから仕方がないんだ…」

「…ともかく、僕の知るところによれば、古生物学者たちは、咽頭がどうして降下したかについて、想像することしかできない。だけど、ともかく、咽頭は降下した。そのおかげで、後々の人類は、そのことを言語のために利用することができるようになったということ。そもそもの、咽頭降下の進化上の働きは何であれ、その後、それを別目的に使うようになったということなんだ…」

「…もう、ここまで言えば、二人とも、僕がこの話で何を言いたいか分かったと思う。本当にテレ・エンパシー能力を使ってるとしてだけど、そのテレ・エンパシーを使う能力は『前適応』ではないのか。人間の脳はほとんと無限にいろいろな働きができるのだが、その脳が、まったく別の目的のために発達した脳の部分を使って、別の働きを発達させたのだと。多分、脳の中のいくつかの部分を組み合わせて、このまったく新しい働きを作りだしたのではないかと…」

「いったいどうやって? そんなの僕に分かるわけないよ、ディ・ディ。理論を聞きたいと言ったから、僕の理論を話してるだけだ。ともかく、この情報を世間一般の知識にするのはやめておいた方がいいと思ってる。さもないと、CIAだか国家安全保障局NSAだかホワイトハウスが僕たちのところに押しかけてきて、子供のひとりを取り上げ脳を解剖したり(さらに、僕の脳を解剖したり)、この能力を国内、国外の敵に対する兵器として使う方法が分かるまで、僕らのうち残った者を独房に監禁するかもしれないから…」

「…もしこの情報を明るみに出すとして、それは僕たちがそうすると決めた時としなければならない。もし、この能力がちゃんと遺伝するとしたら、つまり、僕たちの子孫の全員がこの能力を持つとしたら、そのことが既成事実となるまで、待つべきだと思うんだ。僕たちの同類があまりに多くいるので、もはや、抵抗することができないとなるまで。そうなったら、他の人は僕たちを止めることはできないし、むしろ、僕たちを必要とするはず…」

「…話しは以上だけど、これは理論としてどうだろう?」

ドニーと私は、驚いて互いに顔を見合わせていた。アンドリューにはいつも驚かされる。いったいどうして私たちはこの人物とつながることになったのだろう? 彼が『次の世代』の人間でないとしたら、他には誰もいない。アンドリューの理論には、いつもそうだけど、帰結が含まれていたし、その帰結に対する反応も含まれていた。私たちの愛する男は、いつも、数ステップ先を考えている。

ドニーが質問した。

「この能力がテレパシーでないと言い切れるの? 本当に心を読んでると言えるの? 子供たちはまだ言語を獲得してないわ。仮にテレパシーだったら、子供たちが言葉で思考をするようになれば、子供たちとは言葉の交信になって、心を読みあうことはなくなるんじゃない? そうなるって、今のうちから、どうしてわかるの?」

アンドリューはただ頭を振った。

「ああ、そのことは僕も悩んだところだよ。この子たちは大きくなっても僕の心を読めるのだろうかって。でも、一歳の子供が文を二つ伝えるごとに『ファック』という言葉を使うのをどう思う? 正直、僕は、自分が、口に出してしゃべってるよりも、ずっと多くこの言葉を考えてると知って恥ずかしく感じてるところなんだ」

ドニーも私も、それを聞いて大笑いしてしまった。私たちの子供は、夫のせいで堕落してしまう! でも、子供たちが世界中のどの人の心も読めるとしたら、読んでほしいと私たちが思うのは彼の心だわ。多分、そうなったら、子供たちにはアンドリューのことが理解できるだろうから。

[2011/09/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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