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裏切り 第4章 (4) 

続く20分のうちに、左右の耳に繰り返し何かをチクチク刺された。どこか蜂の群れが耳のそばで静かに飛んでるような感じだった。いくつも手が伸びてきて、耳にできた針穴を消毒水に浸した綿棒でトントンと叩いていた。その後、両耳に何かを繰り返し取り付けてる感じで、どんどん重さが増していった。

「髪をつけなくちゃいけないわね。誰かヘアを持ってる?」

一斉に声が上がり、部屋中に轟いた。

「私、持ってるわよー」 ステージドアに通じる階段の方から、やかましい声が聞こえてきた。「どうやら、ヘアのところには間に合ったようね。お手伝いできてうれしいわ」

「ミミ、あなたは本当に可愛いわ」 イアナは、いかにも感謝してるようで、お世辞を言った。「手助けして欲しいの。あなたはヘア関係については何でも知ってるでしょう? スペシャルな感じにしてほしいのよ」

「スペシャルね、オーケーだわ。『ショーガール・デラックス』のブリーチ・バニー・ブロンドで行くわよ。彼女の瞳はベビー・ブルーだから、すごくマッチして、最高になるはず!」

椅子がくるりと回されて、上向きに傾けられた。今は鏡が見えない方向を向かされている。僕の長い髪は後ろ側にブラシをかけられ、その後、まとめられて網のネットをかぶされ、ぴっちりと押さえられた。その上からブロンドの長い髪のかつらを被せられた。それから、ボビーピンがいくつか出てきて、パチン、パチンと音がして、かつらと僕自身の髪の毛をつなげた後、きちんと固定された。一度、仕上げに頭を後ろに強く振られたが、髪はしっかりと固定されていて、まったくズレることはなかった。

ある種のチョーカーのようなものが首に巻きつけられ、首の後ろで固定された。かなり幅のあるチョーカーで、首がすっくと伸びる感じだった。左右の手首にはたくさんの腕輪がつけられた。さらに手の指にも足の指にも指輪がはめられた。無毛の脚にに再びストッキングがするすると登ってきて、履かされた。

その後、両側から助けられて、椅子から立たされた。左右の二人から手が伸びてきて、ストッキングのしわを伸ばし、ちゃんと揃えた後、ガーターの留め具に装着。左の足首に鎖状のアンクレットを二重に巻かれ、留められるのを感じた。

それから、足を片方ずつ持ち上げられ、ダイアナの素敵なラベンダー色のスエード・ミュールを履かせられた。ずいぶんヒールを履いて歩いた経験は積んだものの、このハイヒールのミュールでは足の親指の付け根だけで歩くわけで、ふらふらしてしまい、バランスを取るだけでも本当に大変だった。

最後の仕上げとして、香水をふんだんに振りかけられた。シェリーによると「オブセッション」(参考)という名の香水だった。この香り、クラブで出会った女の子たちがしていたのを思い出す。「妄執」という名のその香水は、男たちに引き起こす反応からすれば、まったく適切な命名だ。

僕を見て、称賛する「うー」とか「あー」とかの声が一斉に上がった。

「完成!」 とダイアナが勝ち誇って宣言した。「ほんとに見事だわ。さあ、あなたの究極の改造のデビューよ、準備はいい?」

そういうなり、ダイアナは優しく僕の両肩に手を乗せ、ゆっくりと椅子を回し、僕を初めて鏡の方に向かわせた。ダイアナは少なくともある1点については大成功を収めたと言える。鏡の中、赤い口紅を塗った口をあんぐりと開けて僕を見つめている過剰すぎるセクシーな女。僕の母親ですら分からないだろう。それは確実だ。

「過剰すぎる」と言ったのは、毎日普通に職場や街で見かける女性たちと比べての話しだ。舞台に上がるショーガールの化粧は、僕を取り囲んでいる彼女たちの嬉しそうにニコニコしている顔と完全にマッチしていたと言える。


[2012/01/12] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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