眉毛にどんなことをされたか、僕が最初に感じた印象は正しかった。僕の目の上にあった形が整えられていない濃い眉毛は、すっかりなくなっていて、今は剃刀のように細い、鉛筆で描いたアーチ状の眉があるだけだった。
まぶたは濃い目の色がつけられ、重たげにミステリアスな雰囲気が漂い、目の上下にシャドーが加えられ、眼尻に行くにつれて他の色と混じり合っていた。まぶたが重たげなのは、長くて濃い、過剰なほどのつけまつ毛の重さも関わっていた。そのまつ毛が今は僕のベビーブルーの瞳を縁取っている。
同じくらい濃い黒いライナーが、左右それぞれのまぶたの上下に引かれていた。その線は眼尻を超え、尖った点となってずっと先まで延びている。
唇は、その輪郭を濃い赤ワイン色で塗られていた。唇がふっくらしているように見せるためか、意図的に、本来の唇のラインの外側に引かれていた。その輪郭の内側を濃い赤の色が満たしていた(この色をチャンタルは「強奪の赤」と呼んでいた)。仕上げにグロスが塗られていて、唇は濃赤サクランボのように輝いていた。
頬骨は、骨の下側に暗い色、上側に明るい色を塗ることで、前より大きく高くなっているように見えた。同じような明暗がこめかみとあごの下にもつけられ、元々の顔の形を浮き彫りにさせていた。実際、顔はほとんどハート形になって見え、際立って魅惑的に変わっていた。
そして顔全体が、たくさんのゆったりとした大きなカールがついた髪の毛で縁取られていた。髪の毛の色はブロンドだが、非常に薄い色で、ほとんど白と言っても良く、それが滝のように背中に垂れ下がり、腰のあたりまで降りている。
手の爪は、ほとんど卑猥と言えるほど長く、先に伸びるに従って下方にゆったりと曲がっている。その先端はじゃっかん角に丸みもあるものの四角形に揃えられていた。色は唇と同じく「強奪の赤」の色で、ゴールドのネールアートが輝いていた。
足の爪も同じように完璧な赤とゴールドの色合いで、足先から少しだけ外側に伸びていた。これをチャンタルは「彫刻的足爪」と呼んでいて、今は大人気だと言っていた。確かに、僕が履いていたような、つま先部分が空いている靴にはぴったりの足爪だった。
首の周りのチョーカーは密着して8層に巻きつけたゴールドの鎖で、それと調和するように、左右の耳にも8つ新しいピアスがつけられていた。左右の耳の頂上のところにはゴールドの球状のスタッド(
参考)があり、耳の外側の縁には幅広のゴールドのクリップがついていた。小さめのゴールドのリングが4つ耳の縁の真中につけられ、滝のように垂れている。とどめとして、左右の耳たぶには2重にピアスが施されていた。上の方のピアスには2センチ半の輪が一つ、下の方のピアスには大きな10センチもの輪が垂れていた。
左右の手の、細く長いかぎ爪状の指には、ゴールドの指輪が光っていた。足の方も、それぞれ2本の指にゴールドの指輪がはまっていた。加えて左の細い足首には、細いゴールドのチェーンが2重に巻かれている。
過剰すぎる化粧と装飾。思わずイキそうになっていた。視覚的刺激だけでイキそうになったことはこれまでの人生でなかったことだった。
正直に認めてしまおうと思うが、ずいぶん以前、すでに子供のころから、僕はいつも思っていたことがあった。つまり、自分が男でなく女の子だったら、どうだったんだろうということである。実際、こっそりと、母親や姉のランジェリを少し試したこともあった。だが、それ以上のことはしたことがなかった。もっと言えば、それ以上のことをする勇気がなかったと言える。
それが今、自分は完全に女装しているのだ。まったく新しい存在の次元に足を踏み入れたような気持ちがした。自分のこの姿を見て、僕自身が興奮している。そうだとしたら、このクラブに来ている他の男たちに対しては、僕はどんな効果を与えるのだろう?
ダイアナは僕の心を読んだようだ。
「男たち、競い合ってあなたを獲得しようとするわよ」と彼女は感嘆した。「私の方が負けちゃって困るほど大騒ぎになるかも」
そんなことはあり得ないと真面目に思った。ダイアナは、他の子たちが僕の化粧をしている間に、彼女自身の化粧直しを済ませていた。僕と彼女はふたりとも、同じ男好きする顔の鋳型を使って作られたようなもの。だけど、ダイアナの表情やボディ、それに大胆なセックスアピールをもってすれば、ちょっと投げキスするだけで男をイカせることができるだろう。