「ジャッキー」 第10章 by Scribler http://www.literotica.com/s/jackie-pt-03
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これまでのあらすじ
ジャックは妻アンジーの浮気現場を見てショックを受け、彼女と知り合った頃を回想する。彼は法律事務所のバイト、アンジーはそこの上司だった。仕事を通じ親密になった二人はやがてステディな関係になったが、その過程でジャックはアンジーに女装の手ほどきを受ける。ジャックはジャッキーという呼び名をもらい、アンジーと一緒のときは女性になることを求められる。女装してショッピングをし、クラブへ行き男性とダンスもした。そして彼女はアンジーに初めてアナルセックスをされ、オーガズムに狂ったのだった。
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月曜日はとても落ち込む日だった。次の週末までアンジーと夜を過ごすことができないと思うと落ち込んだ。平日に彼女と会うと、次の日の朝、出勤しなければならないのに夜にアンジーの家に行くことになり、非常に時間が無駄になる。そのため愛し合えるのは週末だけと合意していた。その日の朝、ネイル・アートを落としながら僕は泣きそうになった。アンジーは、たった5日もすれば週末になるんだからと僕を慰めた。
続く2週間で、僕とアンジーの間に計画ができていた。最初の週、僕たちは毎晩、一緒に夕食を取りに出かけていたのだが、その週の後は、アンジーは僕に僕の名前が入ったクレジットカードをくれたのだった。支払いは僕がする形を取らせてくれたのである。アンジーは、誰にも僕が彼女のヒモだと思ってもらいたくないからと言っていた。
週末は、いつもの通り、僕は完全にアンジーのガールフレンドになった。ふたりでショッピングに出かけたり、ディナーを食べたり、一緒に映画を見たり。ふたりでダンスに出かけることも多かった。週末は楽しく、基本的に僕は週末にアンジーのために女装できることを思いながらウィークデイを生き延びている感じだった。
感謝祭の休暇は素晴らしかった。火曜日の午後5時に退社し、次の月曜日の午前9時まで丸1週間休みだったから。その週末はずっとジャッキーとして過ごした。まるで夫婦のように、アンジーと一緒に感謝祭のディナーを作り、休日を祝った。月曜日が来ると僕はすっかり落ち込んでしまったし、アンジーも同じ気持ちだろうと思ったが、彼女は何も言わなかった。
クリスマスから新年にかけての休暇は、ほぼ2週間、会社が閉まる。アンジーはその期間、どこかへ旅行に出かけようと計画を立てていた。彼女はその計画を6月から決めていた。もちろん、6月時点では僕はまだオフィスにいなかったわけだから、彼女の計画には僕は含まれてはいなかった。
アンジーは僕と一緒でなければ行かないと言って、僕も連れて行こうとしたが、僕の飛行機のチケットが取れず、困っていた。僕のチケットが確保できたのは、旅行の二日前というギリギリになってからだった。そもそも、一緒に旅行に行けると思っていなかったので、ふたりとも大慌てで荷造りをしなければならなかった。
それから10日間、僕は南国カリブの島でアンジーのボーイフレンドとしてすごした。彼女は、僕に、数日ほどはガールフレンドとしてすごして欲しいと思っていたが、それはできなかった。女装してしまうと女になった僕がどこから現れたか説明できなくなってしまうからである。
島での最後の日、パティオでディナーを食べていた時、アンジーが僕の手を握った。
「ジャック? 私、そろそろ職場の人に私たちがつきあってることを言おうと思っているの。戻ったら、管理担当の人に私たちのことを伝えるつもりよ」
この件については、ここ2ヶ月ほど、何度か話し合っていた。僕としては、それを申し出ても、どのように受け取られるか確信がなかった。規則としては明記されていないものの、一般的にはカップルが同じ職場で働くことはできない。でも、僕たちの会社ではそのような規則があるというのは聞いたことがなかった。ただ、アンジーがそういうことを言いだすと、彼女の職歴に傷をつけることになるかもしれないと心配した。
「それは知ってるわ…」 彼女は僕が心配そうな声で言うのを聞き、言った。「でも、会社の人に知っててもらいたいのよ。あなたに私のところに引っ越してきてと言う前に。驚かしたくないもの。それに加えて、もし会社がダメと言ったら、私、喜んで自分の会社を立ち上げるつもりでいるの」
アンジーの言葉に僕はびっくりしてしまった。アンジーが自分で会社を立ち上げるというのも、確かにそれ自体、驚きだったけれど、それはそれほどではない。むしろ、僕と同居するという言葉の方に驚いていた。確かにそうなったらいいなと思ったことはあったけれど、それは単なる高望みにすぎないと思っていた。アンジーもそのようなことを考えていたとは、全然知らなかった。
あまりに驚いていたので、しばらく何も言えずにいた。それを見てアンジーが訊いた。
「何かまずいかしら? 私が自分の会社を持つのは、できないことかしら?」
「いや、そんなことはないよ。君ならすぐに成功できると思う。……そちらでなくて、本当に僕に引っ越してくるよう頼もうと思っていたの?」
「この2週間ほど、ずいぶんそのことを考えたのよ」 とアンジーは僕の手を強く握った。「いつも月曜日になって仕事に戻るときにあなたがとても気落ちしているのを見てたわ。私もあなたと同じ、月曜日が大嫌いなの。だから、そろそろ一緒に暮らしてもいいかなと思って。そのほうが理にかなってるでしょ? そう思わない?」
「もちろんそう思うけど、でも僕は当事者だから。偏見があると言えるから」と冗談っぽく言った。
アンジーは笑い出した。「私も偏見があるわよ。どうしてもあなたとジャッキーをいつも自分のそばに置いておきたい気持なんだから。来週の週末には私のところに引っ越してくるべきよ。でも、いままで家賃で払っていたおカネは自分で取って置いてね。それは学費のローンにあてるの。あの利息、払う必要がないのに払ってるのを見るのはイヤなの」
僕は彼女の言うことに完全に同意だった。
職場に戻った最初の日、アンジーは管理担当のところに行き、僕たちが付き合っていることを伝えた。アンジーによると、担当者はこの上なく喜んでいたらしい。それに彼女が仕事を辞める理由はどこにもないと。すぐに噂が会社中に広まった。とうとう、あの女王様が僕に手なずけられたと。もちろん、彼女が僕を手なずけたというのが実情だったのだが。