トリスタは音がしないようにドアをゆっくり閉めた。そして俺の方に向き直って、俺の腕の中に身体を預けてきた。すぐにふたりの唇は重なり、心のこもった長いキスをした。キスをしながらトリスタが俺の背に両腕を回し、きつくしがみついてくるのを感じたし、俺の方も彼女の腰を強く引き寄せた。ふたりとも唇を開き、舌を絡ませあったところで、トリスタは抱擁を解き、身体を離した。
「いまはあんまり夢中になっちゃいけないわね」 と彼女は下唇を軽く噛みながら言った。「お父さんにこんなことしてるところを見つかったらイヤだから」
ちょうどその時、トリスタの父親が部屋に入ってきた。
「こんばんは、ケネディさん」 と俺は握手しようと手を差し出した。
だが、あいつは俺を見ただけで、前を通り過ぎ、ソファに腰を降ろした。トリスタと一緒にキッチンへと歩き出したが、彼女がだんだん苛立ってきてるのを感じられた。
「おい、君。君はいま私の家にいるわけだから、私のルールに従ってもらうぞ」 とトリスタの父親はテレビのスイッチを入れながら言った。
「かしこまりました」 と俺はちょっと立ち止まり返事をし、それからトリスタの方に向き直って、キッチンへと向かった。
「娘には手を触れないこと。今夜は最後までそれを守ること。いいな」 彼はリモコンでテレビのチャンネルを変えながら、険悪そうな声でそう言った。
俺は、この時も立ち止り、彼の方を向いた。わざとにんまり笑顔になりながら、投降した犯罪者のように両手を上げて見せた。
「そういう、くだらん真似のことを私は言っているのだ」 とトリスタの父親は大きな声を出した。「君たち若者は小さな世界のことは分かってても、何がくだらん真似かが分かっていない」
トリスタに腕を引っ張られキッチンに入って行く間も、彼女の父親はわめいていた。
「まあ、まあ、あの人のことは気にしないでね」 とトリスタの母親がディナーの準備をしながら言った。できたての料理の旨そうな香りが漂っていた。
「あの人、知らない人が来るといつもあんなふうになるの」 とトリスタの母親は俺の方を向いて言い、バターのトレーをテーブルの上に置いた。
俺は立ったまま、キッチンの中を見まわし、そこが隅々まで染み一つなく完璧に整理されているのに気づいた。乱れたところが何もなく、すべてが充分に手入れされている。
「ディナーはあと1時間くらいでできるわ。それまで、ジャスティンに家の中やお庭を見せたらどうかしら?」 トリスタの母親はそう言い、冷蔵庫の中から何か出そうと前屈みになった。
その格好になったトリスタの母親を見て、どうしても、そのお尻のところに目を奪われた。だぶだぶのズボンにオバサンっぽい服を着ていたけれど、かなり極上のお尻のラインをしているのが俺には見て取れた。身体を起こして立ちあがると、胸が中から服を押し上げてるのも見えた。だが、残念ながら、両手と顔と首のところを除いて、他の部分の肌はすべて衣類に隠されて、見えない。
「バスルームに案内するわね」 とトリスタは廊下を進んだ。
俺は彼女の真後ろについて歩いたが、もちろん彼女のお尻に目を奪われていた。ジーンズは彼女のヒップをぴっちり包んでいて、デニム生地を通して小さなパンティ・ラインも見えた。シャツはズボンのところまでの丈なので、時々だったが、彼女の腰の生肌もチラ見することができた。トリスタのプロポーションの良さは、母親譲りかもと思った。
「ここがバスルーム」 と彼女は小さなバスルームを指差した。
その後、俺たちは、またキッチンへ戻った。
「トリスタから今夜のディナーはロースト・ビーフだって聞いてた?」 と彼女の母親はジャガイモの皮を剥きながら訊いた。
「いいえ、でも、いまは分かります」 と答え、トリスタに促されるまま、彼女の母親の脇を通り過ぎた。
今度は、スライド式のガラス戸の方へ向かった。トリスタはその戸を開き、小さなウッド・デッキに出た。そこにある階段を降り、庭に出た。かなり広い庭だった。
彼女と二人でレンガでできた小道を歩いた。様々な野菜が花壇で栽培されているのが見えた。さらに小道を進み、庭の奥へと向かった。立ち止り、肩越しにふり返ると、家屋からかなり離れたところに来ているのに気づいた。
レンガの小道の行き止まりまでくると、そこには数本、果樹が植えられていた。それでもトリスタは先に進む。大きな茂みの向こうへと俺を連れて行こうとしているようだ。
「ここまでくれば見えないわ」 とトリスタは俺の方を向き、両腕を回して抱きついてきた。