ペグは私に静かにしてるよう身振りで示した。だれも何も言わなかったけど、そもそも、誰も喋ろうという気すらないみたいだった。はっきりしてるのは、空気がとても張り詰めていたこと。
シャロンがちょっとだけ動いた。その動き、ただ身体の位置を調節しただけのように見えたけど、実際は、とてもセクシーな身体の動きをしていたことに気がついた。ラリーを見て、ニッコリ笑いながら彼女が訊いた。
「こういうの大好きなのよね? そうでしょ?」
明らかにラリーに向かって言ってるのに、彼は返事をしなかった。ただ、見つめているだけ。ラリーがシャノンに気をそそられている理由は分かるけど、私としてはショックを受けていた。まるで彼は彼女のこと以外、全然、頭にないみたいに見えた。
「そうでしょ?」 シャノンが繰り返した。
「ああ」 ラリーが低い声で答えた。
シャノンは返事を聞いて、ニッコリ笑った。私は彼女の笑い方がそんなに好きじゃない。私は目を背けた。
ふとダイニング・ルームの方を見たら、シャノンが全部片付けてしまっているのに気がついた。品のいい食器も何もかも。テーブルにあるのは4組の食器だけ。
ペグが私に軽く触れ、もう一度見るように促された。静かに見てるように、と。
シャノンはテーブルの端から脚を降ろし、そして立ち上がった。優雅に、まるでネコのように、身体を動かしてる。
「私が欲しいのね」
「ああ」
「何も気にならない。私だけが気になってる。そうね?」
返事はなかった。
「いまはただ、私のことだけ気になっている」
「ああ」
シャノンはそこでちょっと間を置いた。そして、言った。
「シャツを脱いで。今ここで」
また短く間をおいて続けた。
「私のために」
ラリーはただシャノンを見つめているだけ。シャノンがまたにっこり笑った。
「私のことが欲しいと言ったでしょう? して。今すぐ。あなたの奥様の前で。私のために」
シャノンは、私のことを言ったとき、嬉しそうと言ってよいような顔をしていた。
ラリーは言われたとおりにした。シャツのボタンを外し始めている!
シャノンはちょっとくすくす笑った。
「忠誠心はそこまで!」
そう言うと同時に、シャノンは両手を身体にあて、上下に這わせた。彼女の服はとてもタイトで、身体に密着している。
ラリーはシャツを脱いだ。シャノンは少しだけ彼に近づいた。
「裸になって」
デニスが手錠や猿轡や他に何かそういう物を持っているのが見えた。
ラリーは言うとおりにした。素っ裸になって立っていた。
「いい子ね」
シャノンはわざと上から下までラリーの身体を観察するようにしながらそう言い、それから、デニスの方は実際には見ないで、頭の動きだけで、彼女に指示を送った。
デニスがラリーの後ろに近づき、彼の両手首に手錠をかけた。ラリーはシャノンを見つめたまま、ただ、突っ立っているだけ。
「言ったとおりでしょう? 彼もこれが気に入るって」 ペグが私の耳に囁きかけた。
それからペグは私を引っぱるようにして部屋から出た。その間、シャノンとデニスはラリーを地下室の方へ連れて行った。階段を降りて行くのを私は見届けた。ラリーは一度も私の方を見なかった。
「今夜は私たち女だけよ」 とペグが言った。そして、「一緒に来て」と再び私を引っぱった。
彼女に連れられ、今度は二階に上がり、寝室に入った。ペグは宝石箱を開けた。
「シャノンは彼女のジュエリーを私たちにつけてもらいたがってるの」 とペグは真珠の首飾りを出した。「これもシャノンがつけているものだわ。つけてみて」
ペグは私の首にその首飾りをつけた。