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ナーバスになっていた? 誰が? 私が? 何にナーバスにならなくてはいけないの? 10日前までは、私は幸せな夫婦生活を送っている、完全に異性愛主義のトレーダーだった。アマチュア・スポーツ選手で、誰からも愛されるナイス・ガイだった。それが今は、ふしだらなブロンド女で、「従業員用のラウンジ」を行ったり来たりしながら、最初のデート相手が来るのをそわそわしながら待っている。自分が何という世界にのめり込んでしまったのだろう。そう思ったのは、この夜、何度目なのかすら分からない。
ダイアナの教えに従って、激しく勃起した分身に震える手でコンドームを装着した。ほとんど不可能じゃないかと思ったものの、何とかして、その「クリトリス」をパンティの奥へと曲げ入れ、太ももの間に押し込んだ。
ダイアナに額に銃を押しつけられ、「デートしなさいよ」と言われたというのとは、全然違う。強いて言うなら、ダイアナはこの2時間ほどは、そういう関心を私に向けるのを避けていた。むしろ彼女自身に向けていた。それでも、いったん私がその道を選ぶと決断した後は、ダイアナは私の気持ちを削ぐようなことは何も言わなかった。ただ、私から決めたことが不満そうなフリをしただけ。
たぶん、そこが核心だったと思う。自分で道を選ぶという点が。ダイアナは私に何かを強要したことは一度もない。彼女は、単に私に一連の選択肢を提示しただけ。そして、どの道を進みたいのか、私に選ばせただけ。
チャンタルは彼女について何と言っていたっけ? 「ダイアナがものすごく説得力があるのは私も知っているわ。本当に…」 そう言っていた。私の恋人はそんなに優れた者なのだろうか? 言葉を使わずに私を操作して、彼女の思い通りのことをさせることができると? ほんのちょっと前など、むしろダイアナは私にデートしてほしくないような印象すら与えていたのに?
インターフォンのチャイムが鳴って、私はびっくりして飛び上がった。
「はい?」
「リサ? 僕だよ。ダニエル。準備はいいのかな?」
コルテスは新世界に着くとすぐに、航海してきたのに使った自らの船を海岸線に並べ、すべて燃やすように命じた。彼の部下たちは、夜空に炎が燃え上がるのを見て、もはや後戻りはできないと悟ったと言う。
私はボタンを押した。
「ドアを開けたわ。上がってきて」
燃え上がれ! 燃え上がれ!
ダニエルは、ルックス以外の点でも印象に残る男性だった。おカネの交渉については、クールに直ちに済ませ、気懸りとなることを解消し、快楽に没頭できるようにしてくれた。私は、早速、彼をベッドに押し倒し、ベルトを緩め、チャックを降ろし、ズボンを剥ぎ取ったのだったが、彼はそんな私の振舞いを気に入っていたと思う。
彼の「持ち物」の大きさを見た時にも、私は圧倒された。彼のと比較すれば、確かに私は女の子のようなものだと感じられた―そのことは、あの状況の下では、かえって良いことと言える。
スーザンとの夫婦生活を通して、私は、スーザンに何時間にもわたってオーガズムの喜びを与え続ける口唇愛撫の技術を習得していたし、ダイアナとの行為を通して、その技術を洗練し、女性が男性を喜ばすために応用する方法も知っていた。ダニエルは、そんな私の「教育」の成果を享受していた。
最初は、陰嚢から先端にいたるまで、彼のペニスの底面にそって、長くじっくりと舌を這わせ、舐め上げることから始める。全体にわたって、舌先をちろちろと踊らせ、あらゆる部分に舌による愛撫を与える。それから、先端に軽くキスをする。唇をすぼめて、それがかろうじて触れたか触れないかのような軽いキス。それをしてから、唇を開き、ペニスの頭部だけを口に含ませる。その後、再び舌の仕事に戻り、今度は肉茎を横に咥え、上下に顔を動かしながら、同時に舌を細かく動かし続ける。それを何度も、何度も…。
適当に制限時間を設けて、それまでに彼をイカせようとはしなかった。これは、私にとって、初めての、そして不思議に満ちた冒険なのだから。確かに、私が思い描いていた冒険とは違うかもしれないが、この場に私がいるし、彼もいるわけなのだから、最後までやり遂げようという気持ちでいた。
この行為を私自身、本当に喜んでいたのだろうと思う。やがて私は、この素敵なペニスが私の口ではなく、アソコに入っていて、私を犯したらどれだけ気持ちよくなれるのだろうと思わずにはいられなくなっていた。
私の熱のこもった奉仕は、彼にも望ましい効果を与えていたのは確かだった。彼の呼吸が速く、浅くなっていた。彼の腰も前後に動き始めている。いつの間にか彼は両手で私の頭を掴み、私の口に対して突きを繰り返していた。
だが、突然、彼は私を突き飛ばし、身体を離した。
「やめろ! ……気が変わった」 と息を荒げながら彼は言った。
私はこの行為に夢中になっていたところだった。だから、それを聞いてがっかりしたと言うだけでは、表現が足りないだろう。
「気が変わったって…」 恨みつらみを言うような声になっていた。「…私たち、返金はしないのよ」
「いや、違う。そうじゃない。俺は、俺は君の中にフィニッシュしたくなった。どうしても。それはいくらだ?」
嬉しい言葉に、身体をくねらせていた。チャンタルの言葉がまた頭に浮かんだ。
……あなたに必要なのは、一度みっちりセックスされること。それもできるだけ大きなペニスに……
「すでに払ってる分に加えて、もう125がいるわ」
「150にしたら、ナマでやってもいいか?」
彼のスペルマをたっぷり注ぎこまれるのを想像し、私は目を輝かせた。でも、そう思ったのと同じくらいすぐに、私の頭脳は理性を取り戻した。
「私、まだ、あなたのことをちゃんと知っているわけじゃないの。増えた25ドルより私の命の方が価値があるわ。だから、今夜は、アレをつけてプレーして。でなければ、ここで止めなければダメ…」
ダニエルは素早く私におカネを出した。私はジャンボサイズの潤滑剤つきコンドームを彼に被せ、また口に含んで10回ほど舐めしゃぶった。そしてスカートをめくり上げ、パンティを脱いだ。