「…お、大きな声を上げて、ごめんよ。でも、とても辛いんだ。こ、この結婚生活がどんどん悪い方向になっていくのを見るのは。そ、それに、君が着飾って、あいつらと出かけていくのを見ると、本当に心が痛む。さ、最悪なのは、き、君が出かける支度を僕に手伝わせること。あ、あいつらのために君を美しく見せる仕事を、こ、この僕がしなくちゃいけないことなんだよ」
ジェイムズはしわがれた声で言った。今にも泣き出しそうな声だった。
「まあ、まあ…。泣くのはやめて」 とジルは、従属化され恥辱を味わわされている夫の隣に座り、優しく抱いた。
「…少しでも気が晴れるなら教えてあげるけど、そうねえ、ある意味、私たちの頭上に垂れこめている、この黒い雲の向こうから、明るい光が差しかかってきてるのよ」
「ほ、ほんとに?」 ジェームズは、かすかに希望を期待する顔になった。
「ええ。ねえ、あなた?…… このことを直ちに受け入れてくれたらうれしいんだけど……」
「何だい。言ってくれ」
「分かったわ。多分、打ち明けて、胸の中から出してしまった方が良いと思ったんだけど。あのね、ジェームズ? あの夜、私たちが誘拐されて、レイプされたでしょう? あの夜から、どれだけ時間が流れたか…。もう一年以上になるわ。光陰矢のごとしね。ともかく、それでね? 私…、あなたにお願いしようと思ったの。しばらく別れて住まない? って。私が本当にあなたを愛してるか確かめるために」
「な、何だって?」
「いえ、私、本気よ。だって、あなた? 私、あのレイプの時まで、自分の人生で何が足りないのかはっきり分かっていなかったんですもの。何かが足りない、その何かを探し出せる小さな場所が欲しかったの。そんな時、あの人たちにレイプされたわ。そして今まであの人たちにいろんなことをされてきた。今の私は、これ以上ないってほどに充実して満足した気持ちでいるの。あなたにも分かるでしょう? 私はリロイや彼の黒人のお友達が私にしてくれているようなセックスが必要だったのよ。それが欠けていたの。今ほど、自分が女であることをはっきりと感じられたことなかったわ…」
「…それと同時に、あなたと二人でいろいろされられてきたわけでしょう? そのために、かえって、私は、あなたのことを本当に愛しているのだわって分かったの。レイプ事件の前でも、あなたの舌使いは良かったわ。でも、今は、前よりずっといいの。しょっちゅう逞しい黒人男4人のお世話をしなければいけないでしょ? それに加えてあなたの素敵な舌。私、世界一幸せになってる気持ちだわ」
ジルはそう言ってジェームズの頬にチュッとキスをした。ジェームズは雷に打たれたかのように動かず、無言で座っていた。実際、彼は雷に打たれたと言ってよい。たった今、耳にした雷鳴のごとき妻の言葉に、彼は言葉を失い、柔肌の美しい妻の隣、ただじっと座っているだけだった。
彼が無言のままいる間、彼の妻は話し続けた。毎晩のごとく、リロイ、ハンク、ネイト、ランスとデートに出かけ、時には彼らの友人たちも喜ばせなければならないことが、本当は彼女にとって悲しいことではないことを。
「…それにね、あなた? こんなことを言うとわがままだって思われるのは分かってるんだけど、私があの人たちやあの人たちのお友達と遊びに出ている間、あなたが家にいて、私への愛を忠実に守っていると思うと、とても嬉しいの。あの人たち、あなたに私ともっとやらせるつもりはないって言ってるでしょ? それを聞くと、ちょっと可哀想って思うのよ。でも、あの人たちのおちんちんがあなたのよりずっとずっと大きいのは確かで、そのために私のあそこもすごくユルユルにされてしまっているでしょう? だから、あなたにとっては、今までのように自分でする方が気持ちいいかもしれないのよ」
「わ、分かるけど…」
ジェイムズはようやく口を開いたが、言えたことはそれだけだった。妻は自分を傷つけようとしているわけではないことは分かっていても、実際には、彼は傷ついていた。ジェームズは、打ちひしがれ、多くは言えなかった。
「ぼ、僕もまだ君を愛しているよ、じ、ジル…。で、でも僕には今のような状態がいつまで続くのか、いつまで僕がもつか分からないんだよ。と、とっても辛くて…」
「でもあなた? 他に方法があるの? 下手なことをしたら、あの人たち、写真やビデオをあなたの職場に送ると思うわ。あなた、ダメよ。このまま、あの人たちに支配されていなければいけないの。この状態を、私ほどはあなたが楽しんでいないのは、私にもわかる。でもね、本当に私のことを愛しているなら、今まで以上に、この状態に合わせられるようにならなくちゃいけないわ」