私たち3人が先にフライデーズに着き、嬉しいことに、すぐにテーブルを取ることができた。このようなことは滅多にないことである。ましてや、今はフットボール・シーズンの月曜の夜だったので、すぐにテーブルにつけたのは運が良かった。ダニーとグウェンは10分遅れて到着した。ダニーは私の隣に座り、グウェンはジャッキーとベスの間の席に着いた。会話は、オマリーの店で中断したところから続きが再開された。
私は、すぐに、何かが変なことに気がついた。私は自分の直感をいつも信頼しているのだが、その直感が、今、特に警戒信号を鳴らしているのだ。あの2人のどちらかの話し方が問題だというわけではなかったし、互いに向けあう目つきが問題だというわけでもなかった。むしろ、2人が注意深く視線を避けあっているところが、妙な雰囲気をあらわにしている感じだった。敵対心ではない。もしそうだったら、私は、2人の素振りからそれを読み取っていたことだろう。それとは違う何かだった。
怒りに毛が逆立つのを感じた(
参考)。私はダニーのことを隅から隅まで知っている。これまで、「彼」が私に隠れて浮気をすることなど、一度も心配したことがなかった。彼は私に身も心も夢中になってくれていたから。同じように、私は「彼女」となったダニーも、同じ理由で、道を外すなど思ってもいなかった。でも、やはりこの点でも、彼女は新しく女の子の世界に入ってきたばかりだし、元々、他人に合わせる性格をしている。一方のグウェンについても私はよく知っている。彼女は男を次々に手玉に取るタイプだ。新しい肉の味を求めて男たちを捕まえていく、セックスの略奪者。心変わりをする以上の頻度で恋人を変えてきたように思うし、何より新しいものを試してみるのが好きなタイプだ。この店に来るまでの間に、誰が誰に火遊びを仕掛けたか、天才科学者でなくても、そんなことは簡単に分かる。
私はダニーの頭に穴が開くほど彼女をじっと見つめた。彼女が私の視線に気づき、私と目を合わせるのに、時間はかからなかった。ダニーと私は、目をあわすだけで相手が何を考えているか理解できる稀な特質を共有している。彼女は、簡単に、私の言葉には出さない質問を読み取ってくれた。彼女は、私がグウェンや他の女の子たちに対してどんな気持ちでいるか、充分、分かってくれていた。ダニーは、ほんのちょっとだけ笑みを見せたが、それだけで私の疑念は裏付けられたといえる。続いて彼女は、ほとんど知覚できないほど軽く頭を振って見せた。それによって、彼女の申し出は丁寧に断ったのだと私に伝えている。彼女の脚が私の脚に当てられ、手が私の太ももの内側を優しく擦った。それによって、ダニーが私への忠誠を守ってくれたことが分かった。ああ、本当に私はダニーのことを愛している! 私は心のノートに書きとめた。ダニーが一緒にいるときは、グウェンのことをしっかり見張っておかなければいけない、と。
店の中、熱狂的なフットボール・ファンたちが、次第に、騒々しくなってきた。さらに2杯ずつみんなで飲んだ後は、私たちも同じく大騒ぎをしていた。そんな私たちにエスコート役を買って出てくる男たちが現れても、全然、驚かない。男性が5人、私たちのところに来て、丁寧に同席を求めてきた。5人のそれぞれが、私たちが飲んでいたもののお代わりをおごってくれた。
私も、私の女友達も、こういう状況には慣れきっていた。皆で一緒に出かけると、しょっちゅうあることだった。でも、私が愛する人と一緒にいる時にこういう状況になったのは初めてだった。しかも、気がつくと、今は、彼女自身にも熱烈に付き添いたがっている男がくっついている!