トリスタの父親がニヤリと笑って言った。
「今夜は、そこの若造にお祈りの言葉を言ってもらうべきだな…。公共教育でちゃんと教えられているか確かめてみようじゃないか」
「ああ、チャールズ、やめて。私が言うわ」 とトリスタの母親が厳しい顔になって言った。
「いえ、大丈夫ですよ。僕が言います」 と俺は父親の目を睨み返した。
頭を下げながらトリスタの母親の顔をちらりと見た。少し顔が赤くなっていた。少し考えてから、言葉を始めた。
「神様、あなた様が私たちを祝福してくださるものと感謝してこの食事をいただきます。私たちはあなたを崇めここに集い、あなた様はこの豊かな食事でわたしたちを祝福してくださいました。感謝します。アーメン」
顔を上げ、トリスタの父親の目をまっすぐに睨んだ。このおやじは自分の妻を満足させていないんだなと軽蔑しながらだ。お祈りの言葉を言ったものの、俺が話したのはトリスタの母親のことだ。「豊かな食事」は、この母親の熟した女体のことだ。そいつにむしゃぶりつきたいと言ったつもりだ。
料理の大皿を回し、各自、それぞれの皿に盛りつけ、食べ始めた。
「うーむ、これ、美味しいですよ」 と俺はトリスタの母親の目を覗きこんで言った。
「ありがとう、ジャスティン」
トリスタに目をやると、彼女も俺の方を見た。トリスタが父親のせいで居心地悪く感じてるのが俺にも分かった。まったく、何とかして、このおやじにぎゃふんと言わせたい。
ちょっと食べるのをやめて、トリスタの父親に訊いた。「牧師になられてどのくらいになるのですか?」
あいつは口の中にあったものを噛み終えた後、フォーク山盛りにポテトを取っていたところだった。口の中のものを飲み込み、大きな溜息をついた。
「わしが食べてる時に邪魔をするものではない」
「チャールズ、少し抑えて!」 とトリスタの母親が叫んだ。
俺は、それから後は食べてる間、ずっと黙っていることに決めた。トリスタも父親にイライラしていたので、ずっと静かだった。料理はとても美味しく、是非ともお代わりしたかった。トリスタは2本目のワインを開け、みんなのグラスに注いだ。
ようやく、みんな食事を終え、何分か座ったままくつろいだ。
「お客がいるからと言って、仕事を免除されることにはならんな」
そう父親が言うと、とたんに、トリスタと母親が跳ねるように椅子から立ちあがり、テーブルの片づけを始めた。トリスタは皿に残った食べかすをゴミ箱に入れ、それを母親に手わたした。俺も手伝おうと立ちあがったが、すかさず、トリスタの父親に止められた。
「座ってるんだ」 と怒った顔をして言う。「それは女の仕事だからな」とトリスタと母親を指差した。
やれやれと思いながら腰を降ろした。トリスタが居心地が悪いと思うのももっともだ。このおやじが、威張り腐って命令的であるのは、すぐに分かった。俺はワインを啜り、彼女たちが働くのを見ながら、ただ座っていた。
ようやく女性たちが仕事を終え、ディナーテーブルに戻ってきた。その後は軽い雑談をした。みんな、ワインを啜り、トリスタが2本目のワインを最後までみんなに注いで回った。
みんながワインを飲み干すと、すぐにトリスタは立ちあがり、空になったワイングラスをキッチンのシンクへと運んだ。彼女の母親も、素早く立ちあがり、グラスを洗い、食器棚に片付けた。二人が後片付けを済ませ、テーブルに戻ってくると、トリスタの父親が立ちあがった。
「リビング・ルームに行こう」 と椅子から立ち上がる。
全員一斉に立ち上がり、父親の後ろについて、リビングへと入った。俺はラブ・ソファの片方の端に座り、トリスタが別の端に、そして彼女の母親はひとり掛けのソファに座った。父親はリクライニングの椅子に落ち着き、テレビのリモコンを取った。
また軽い雑談を始めたが、トリスタは依然として落ち着かない様子だった。トリスタの母親を見たが、俺は、以前とはまったく違う見方しかできなくなっていた。あのドレスに包まれているのは中年の家事奴隷ではないのだ。あの服の中には性的に満足したくてたまらなくなっている妖しい美肉の熟女がいるのだ。実際、顔をよく見れば、トリスタに似て美しい顔をしている。トリスタの母親がテレビを見ている間、俺の頭の中では、たった1時間ほど前に目にした出来事が再生されていた。