ドニーの話しとても怖かった。私たちは真夜中、安らかに眠っていたのだったが、突然、アンドリューが跳ね起きたのだった。彼は寝室から走り出て、「911に電話しろ。侵入者がいる」と叫んだ。
ディ・ディは電話をつかみ、緊急電話番号を押し、私はアンドリューの後について走った。彼は、子供たちの部屋に走っていくところだった。
彼は子供部屋に突入した。その数歩あとから私も入った。部屋の中には男がいて、娘たちをさらおうとしていた。アンドリューは彼に飛びかかり、後ろから男の腰に両腕を回し、身体をひねりながら自分から後ろへ倒れこんだ。男もアンドリューと一緒に倒れ、顔面から床にぶつかった。
男は床に頭を打ったらしく、しばし気絶しているようだった。アンドリューが男の持ち物を探り出すと、エレが言った。「パパ、そいつ銃を持ってるよ。ズボンの中」
エマが言った。「心配しないで、パパ。そいつは充分、気絶しているから」
その時になって初めて、私はパニック状態になった。息が切れて、苦しい。泣いていたと思う。ディアドラも部屋に来たが、彼女も泣いていた。エマは笑っていた。
アンドリューは銃を見つけた。大きな銃で、実弾が入っていた。この家には銃なんて置いたことはない。アンドリューは男のズボンから財布を取り出し、そこからカードを何枚か取り出し、エッダに言った。
「エディ、これをコンピュータでスキャンしてくれ。そしてそのコピーをパパにメールしてくれ。いいね?」 とカードをエッダに渡した。エッダはすぐに部屋から飛び出していった。
アンドリューは、私たちの娘をさらおうとした大柄の醜い男から離れ銃を向けた。アンドリューは彼を撃つかもしれないと思った。まだ私は泣いていた。どうしても泣いてしまう。子供たちのことを思って、とても怖くて、堪えられなかったから。
ディ・ディが言った。「お願い、アンドリュー。彼を撃たないで。警察が来るところだから」
アンドリューがようやく私たちに顔を向けた。事件が起きてから、彼が私たちを見るのはその時が初めてだった。
「落ち着いて。何もかも大丈夫だから」
それから彼は娘たちの方を向いた。「この男が意識を戻したら、パパはいくつか質問をするつもりだ。だけど、こいつは答えないだろう。こいつが何を言うか、言わないかはどうでもいい。それより、お前たちは、こいつが頭の中で何と言ってるか、そちらを聞いてほしい。でも、口に出して言ってはいけないよ。男の答えを無言のままパパに教えてほしいんだ。パパが言ってる意味、分かるね?」
エッダが言った。「オーケー、パパ。この人、私たちの部屋にいきなり入ってきて、私たちを起こしたの。こいつ、悪いやつよ」
エディが寝室に戻ってきて、アンドリューにカードを返した。アンドリューはそのカードを男の財布に戻し、その財布を男のズボンのポケットに戻した。
大柄の醜い男が意識を戻した。がばっと身体を起こし、ズボンの中を探った。銃を探しているようだった。アンドリューが言った。
「遅すぎたな。バカめ。そこに座って、じっとしていろ。さもないとお前を撃つぞ」
男は向きを変え、初めてアンドリューの姿を見た。背の高い夫がピストルを構えて、今にも撃ちそうな格好で男の前にそびえ立っている光景は、普通だったら、かなり恐ろしい光景だったに違いない。
アンドリューが男に尋ねた。「お前の名前は?」 男は何も答えなかった。
「誰に送り込まれた?」 男は沈黙のまま。
「仕事を頼んだのは誰だ?」 依然として何も答えない。
遠くの方で警察のサイレンが聞こえた。マッカーサー署長か、その手下の警官がすぐに来るだろう。
「子供たちをどうしようとしたんだ?」
醜い男は話すのを拒んだ。ディ・ディが玄関に走り、警官を家に入れた。
その後は、混乱状態。若い警官が担当し、醜い侵入者を逮捕し、私たちに質問し、調書を取った。
警官は娘たちにも質問しようとしたが、得られた返事はエマの答えだけだった。
「目が覚めたら、あの大きな男が近寄ってくるのが見えたの。みんなでパパを呼んだら、パパが来て、助けてくれたの」
警官は男に手錠を嵌め、連行していった。ようやく私も落ち着き、アンドリューに抱きついて言った。「ありがとう、ほんとうにありがとう。あなた、とても勇敢で、素敵だったわ」
アンドリューは頭を左右に振った。「娘たちは全然危なくなかったんだよ。エミー、どう思う?」
エマは笑った。エマはこの事件を楽しいことと思っているみたい。
「パパが、あの男を傷つけちゃいけないよと言ってたので、わたし、男をそこに立たせておいたの。パパが捕まえられるように。パパはちゃんと捕まえてくれたわ」
アンドリューも笑った。「少なくとも、パパは、レスリングのリトルリーグでちょっとは技を知っていたからね」
ディアドラも私も、唖然とした。アンドリューはまたも私たちに隠していることがあると、その時、思った。