ビッキーは彼との会話にうっとりと浸り、いつの間にか、さらに20分経っていることに気づいた。信じがたいことだった。この魅力的な男性と一緒にいると、時間がとても速く過ぎ去るように感じる。帰宅することも考えたビッキーだったが、すでに彼女はこの場を楽しみすぎていたと言える。一体、マイクはどうしたのだろうと思った。彼女の心に、ほんの少しだけ不安が忍び込んだ。
だが、その物思いから突然ハッと目が覚まされる。ある男性がデビッドに話し掛けているのに気づいたからだ。ビッキーは、その男性を見て、すぐに彼も別の有名な野球スター選手だと判った。彼は、フレンドリーで陽気な言い方で、デビッドにあることでからかっている様子だった。ビッキーは、その会話の内容から、その日、彼のチームがデビッドのチームを打ち負かしたことを理解した。デビッドはそのからかいを笑顔で受け止めていた。
「ビッキー? こいつはジョンだ。ジョン? こちらはビッキー。ゴージャスな人だろ?」
ジョンはデビッドの背中をピシャリと叩いた。「デビッド、お前、本当に女を引っ掛けるのが上手いなあ・・・ビッキー? あなたはとても綺麗な人ですね」
「ビッキーとは、ほんの少し前に知り合ったばかりなんだよ。ご主人が来るのを待っているそうなんだ」
ジョンの表情から笑みが消えた。
「そうなのかあ。まあでも、それでもあなたはとても美しいよ」
その言葉を受けてビッキーが頬を赤らめると、ジョンの顔に笑みが戻った。ビッキーは、ジョンが調べるような目つきで彼女の足下から視線をゆっくりと長い脚に沿ってあげてくるのに気づいた。黒革のミニスカートのところでしばらく視線を留まらせた後、豊かな胸のところを見て、その後、彼女の実に魅力的な顔へと戻る。ジョンはビッキーの美しいブロンドの髪をしばらく見続け、目を楽しませた。
「それで、あなたの彼はどこに?」 とジョンが訊いた。
ビッキーは、ジョンに体を見つめられぼうっとしたままだったが、彼に話し掛けれていることに突然気づく。
「あっ、ごめんなさい。今なんて言ったの?」
ジョンは、視線によって彼女の美しさを褒め称えつつ、同じ質問を繰り返した。ビッキーはあたりを見回して、言った。
「ああ・・・知らないわ。こんなに遅くなるのは彼らしくないんだけど」
「ご主人はすぐにここに来ると思うよ。・・・でも、間っている間、ダンスをするのはどうかな?」
ジョンはビッキーが返事をする前に、デビッドに顔を向けて言った。
「構わないだろう? デビッド?」
デビッドは、降参したときのように両手を上げて見せた。あたかもジョンが勝利者で、ビッキーがその賞品であるかのように。
「ねえ、どうかな?」 ジョンはビッキーに返事をせかした。