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裏切り 第6章 (1) 

「裏切り」 第6章 地獄の7段階(参考) by AngelCherysse


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これまでのあらすじ


ランスは、妻のスーザンと元カレのジェフの浮気を知りショックを受ける。ジェフがシーメール・クラブの常連だったのを突き止め、クラブへ行く。そして彼はそこでダイアナというシーメールと知り合い、彼女に犯されてしまうのだった。だが、それは彼の隠れた本性に開眼させる経験でもあった。1週間後、ランスは再びダイアナと会い女装の手ほどきを受ける。翌日、ふたりはデートをしたが、そこで偶然、スーザンとジェフに鉢合わせし険悪な雰囲気になる。ダイアナはランスをクラブへ連れて行き、本格的な女装を施した。ランスはリサと名前を変え、ダイアナの友人の助言も得て、行きずりの男に身体を任せる。それを知りダイアナは嫉妬を感じたが、それにより一層二人のセックスは燃えあがるのだった。


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月曜日は、一週間の中で一番忌まわしくて嫌悪を感じる日だ。その理由は、何と言うこともない、自分自身にならなければならないという理由だ。まず最初に、その朝、「自分」はどの「自分」であるかを、まずは把握しなければならない。会社では「ランス」としての自分が顔を出さなければならない。以前の決まり切った日常に戻り、会社に行き、金儲けをする。「隊長! 腰抜け中隊(参考)配備に戻りました!」と。簡単だね? でも、「リサ」の名前で理性が吹っ飛ぶような人生で最も激しい週末を過ごした後に仕事に戻るとなると、これは、とてもではないが、簡単なことなどとは言えない。アイデンティティの危機? それどころじゃない! よくある憂鬱な月曜日(参考)とはわけが違う。まさに地獄のようなもの。しかも7段階すべて揃った地獄のようなものなのだ。

地獄の第1段階は、起きたとき独りであること。昨夜、私はダイアナとエロティックなディナーを食べた後、彼女を家に送っていった。

その時ダイアナは優しくたしなめるように言った。

「私にはクラブの仕事があるし、あなたも明日、朝から仕事をしなきゃいけないでしょ?」

私は土曜日の夜と同じようにダイアナについてクラブに行くと言ったが、彼女は頭を振って断った。

「今回はダメ。こんなふうに言うととても意地悪そうに聞こえるかもしれないけど、私、あなたがクラブに来て、男たちに誘われるのを見たくないの。この前の夜も、私、どう扱ってよいか分からなくなってしまったし、また同じようなことになったとき、うまく扱えるとも思えないから。こんなことを言って、自分がすごく偽善的になってるのは分かってるわ。でも、こういうこと…つまり私たちの関係ね…これ、あなたにとっても初めてのことだろうけど、私にとっても同じように初めてのことなのよ。だから、あなたと付き合うというのがどういうことなのか、それに慣れる時間をちょうだい。その後で、何とかして自分の中で折り合いをつけるようにするから…つまり、あなたが他の男と…。言っている意味が分かると思うけど…。ともかく、次の週末にはまた一緒に過ごしましょう。約束するわ。いいわね?」

ちょうど私が自分のノーマルな生活に戻らなければならないのと同じように、ダイアナも彼女の普段の生活に戻らなければならないのだろう。

ダイアナは私のマンションを自分の「ホーム」とみなしてることを強調しようと、購入したランジェリーやストッキング、それにコルセットを、丁寧に畳み、彼女用の引き出しにしまった。それから私も同じようにするのを手伝ってくれた。ダイアナは、ガウンやサンダル、そして毛皮のコートは私のクローゼットに入れたままにし、ジュエリーも戸棚に置いたままにした。

ダイアナは、自分の大切な衣類を私の衣類と一緒に置いておくこと、しかも、こんな親密な感じでそうすることが特別な意味を持っているようで、どこか心暖かな曖昧とした感情が湧いてしまうわと打ち明けてくれた。

ダイアナは、私が身につけたスエードのスーツ、ブラウス、それにミュールを私に譲ってくれた。

「これ、本当にあなたに似合っていたわよ。…あなたが私に買ってくれたものに比べると、見劣りするし、とても小さくて不釣り合いだけど、私の愛情のしるしとして、受け取って」

ダイアナが帰っていった後、私は朝のロードワークに出た。夜明け前のひと気のないストリータビルの街路を走る。何ブロックか先、レイク・ショア・ドライブは、早くも朝の交通渋滞が始まっていた。彼らは、6時、7時にパンチカードを押すブルーカラーの人たちや、企業内の出世の階段を登ることの価値が、ちょっとうたた寝して遊ぶことの価値より上回っているワーカホリックのホワイトカラーの人たちだ。日本人たちは、早速、「サラリーマン」的ライフスタイルに切り替え、忙殺的な日常に戻っている。私はシャワーを浴びた。やはり、たった独りで。浴びながら、独りであることをいっそう実感した。そして歯を磨き、髪にドライヤーをかけ、ベッドに腰掛けた。そして、うんざりするような一日の始まりに正面から対峙した。


[2012/08/14] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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