この女はイサベラに鞭を振るった。とうとう、その本人と面と向かい、レオンは体中に憎しみの炎が燃え上がるのを感じた。とはいえ、その憎しみを抑え込み、冷静さを保ってはいた。もちろん、マリイの命令に従うつもりはまったくない。
レオンは素裸であることも気にせず、立ちあがった。長い一物が、獅子のような優雅さで左右に揺れていた。
マリイは、視線を下げ、レオンの太ももの間に揺れる逞しい男性自身へと向け、同時に腕に緊張を走らせた。手に持つ剣の剣先を持ち上げ、レオンの太ももの間へ向ける。
「何か楽しい夢でも見ていたの?」 と呟き、舌で唇を湿らせた。
「このような名誉なことをされるに値することを何か、私はしたかな?」 とレオンはそっけなく尋ねた。勃起は収まりかかってはいたものの、わざわざシーツで隠そうともしなかった。
「あなたが私を探していると聞いたものでね…」 とマリイはベッドに近づきながら片眉を持ち上げて、答えた。「…だから、ここに来たの」
「何と都合のよい…」 とレオンは落ち着き払って言った。
マリイの熟れた臀部をタイトに包む黒革のパンツと、長い太ももと腰回りにまとわりつき、見事に成熟した胸のふくらみを見せつけるチュニック(
参考)に目をやりつつも、今のレオンには何ら感情をもたらすものではなかった。
「…お前を捕まえたら金貨を1万枚払うと約束したが、お前が自ら出向いてくれたおかげで、それを払う手間が省けたのだからな」
「あら、私はもっと都合のよい女になれるかもしれないのよ」 とマリイは冷たく笑い、レオンの下半身に視線を走らせた。
レオンは、マリイの顔をじっと睨みながら、腹の奥がムカムカするのを感じていた。
「お前は…、お前は俺の父の妻だった女だ」 とレオンは吐き捨てるように言った。必死に怒りを押さえこもうとしていた。「マリイ、俺とお前の間には何ら都合のよいことなどあり得ない。妊娠したイサベラが最も身体を守らねばならぬ時に、お前はイサベラの背にベルトで鞭打ちしたのだぞ…」
マリイは邪悪そうに目を細めた。
「あの女はあなたを求めていないというのに、あなたは、あの女をずいぶん守ろうとなさるのね? あのアバズレは、いったん手篭めにされた後は、あなたに身をゆだねるようになっただろうけど、それも、目的は修道院に戻るため。そのためなら喜んであなたに身をゆだねるようになっただけ。それを知っていながら、あなたはあの女と楽しみを続けている。でもね、修道院があの女を受け入れないことは誰でも知ってることなのよ。お腹を大きくして帰ったら、あなたの罪の証拠が誰の目にも明らかになるわけだから。あなたは、あの女がどうして結婚を拒んでいるのか分からないようだけど、答えは簡単。イサベラはあなたの子を産んで、傍目からは前と変わらなくなるまで、単に時間稼ぎをしているだけなのよ」
「消えろ、マリイ! その命と一緒に!」
レオンは冷たく言い放った。目を怒りにギラギラと輝かせ、マリイを睨みつける。そして、立ち上がり、彼女の前にそびえたった。レオンのマリイへの憎しみは、目に見えて明らかだった。マリイに剣を向けられても、無視した。
マリイは剣の握りを固くした。「私は、得たいものを得るまでは、出て行かないわ」
「それで? お前が得たいものというのは何だ、マリイ?」 レオンは不気味に落ち着きはらって尋ねた。
マリイの目がきらりと光った。そして、残忍そうに唇を歪めた。
「あなたを苦しめること」
「どうやって? 俺に、お前の熟れた肉体を楽しませないようにしてか?」
レオンは無表情のままだった。