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裏切り 第6章 (4) 


「あなた、ありがとう…」 とスーザンは甘えた声で言った。「いまの私に、それ以上のことを求めることができないのは分かってるわ。あなたはいつも公平な人だったから。あなたのことで私が愛している点が、大きいのも小さいのも、何万とあるけど、あなたが公平なところは、そのうちの一つなの」

誰かシャベルを貸してくれないだろうか? このドツボ状態なのに、さらにどんどん泥が溜まってくる。

スーザンは僕の頬を優しく撫でた。

「あなたの電話を待ってるわ」 と小さな声で呟き、微笑んだ。

スーザンはそう言い、女王みたいな足取りで、通りの角、自分のレクサスを止めてあるところへ向かって歩いて行った。それを僕が見ているのを知っているのだろう、彼女は、これ見よがしに腰を左右に振って歩いていた。その腰つきはダイアナのそれに匹敵する。

すると突然、スーザンは歩きを止め、肩越しに僕の方を振り返った。

「……で、ランス? 彼女、素敵だったわね。誰だか知らないけど。それに元気も良さそうだった。あなたが選ぶ女性は、いつも間違いないわ。いい趣味をしている」

この最後のお世辞が、ダイアナについて言ったものか、スーザン自身について言ったものか、僕には分からなかった。スーザンは非常に演技がうまいのか、あるいは、ジェフがダイアナの秘密をバラしていないかのどちらかだろう。多分、後者だと思うが。

ともあれ、スーザンはダイアナのことを過去形で言及した。僕はその事実を逃さなかった。過去の事実。スーザンの目には、自分の男を強奪したあの女にはチャンスがないと映っているのだろう。圧倒的な傲慢さ。スーザンには他にも嫌なところがあるが、このそびえ立つ傲慢さには、恐れすら抱く。

しかし、そもそもどうして、スーザンはこんな見せかけだけのことをわざわざするのだろうか? ジェフと一緒なら、彼女が求めるもののすべてを手に入れられるはずだ。名声も、金銭も、安全も、それに大きなペニスも。

僕とよりを戻そうとするのは、単に、それが自分にできるということを示すためだけじゃないのか? 単なる自己満足の目的。デスクについたらすぐに、弁護士に連絡を取って、この新しい展開について知らせようと思う。そして担当の調査士に掘り下げた調査を続けるよう指示してもらうことにしよう。

オフィスビルに入った。いつもの仕事仲間が、いつも通りの明るい笑顔で陽気におはようの声を僕にかけてくれた。ビルの中、自分のオフィスがあるウイングへと進む。そのウイングには、僕も含めた会社の有能トレーダーのオフィスが6つ並んでる。僕のオフィスは真中の2つのうちのひとつ。僕たちの秘書はアンジー。僕のオフィスのドアに対面している反対側のデスクに座っている。

アンジーは僕たちのグループでこれまで2年ほど働いてきたが、僕のビジネス人生の中で最も光り輝く存在のひとりである。

デリケートな表現を使えば、アンジーはそそられる女と言える。シカゴの北西部出身の身長165センチのラテン系女性。光が当たると青っぽい色に輝く、濃く艶のある髪をしている。その黒い瞳は表情豊かで、その女性的ボディはとても官能的だ。いつもタイトな服装をしてきて、その豊かな肉体で服が破けてしまわないかと心配になる。


[2012/10/24] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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