「ジャッキー」 第13章 by Scribler
出所
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これまでのあらすじ
ジャックは妻アンジーの浮気現場を見てショックを受け、彼女と知り合った頃を回想する。彼は法律事務所のバイト、アンジーはそこの上司。仕事を通じ親密になった二人は交際を始め、その過程でジャックは女装の手ほどきを受け、ジャッキーという呼び名をもらう。ジャッキーは、女性としてアンジーとデートし、初めてアナルセックスをされ、オーガズムに狂う。やがて二人は同棲を始めた。ジャッキーはバレンタインデーの贈り物としてアンジーのためにメイドとなるが、期待に反してまるで性奴隷のように扱われる。しかし翌日、今度はジャッキーのためのバレンタインデーだと、アンジーはデートに誘い、ジャッキーに結婚を申し込み、ジャッキーもそれを承諾したのだった。
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二月の末、僕は初めてアンジーの両親と会った。二人とも、一人娘が結婚すると知って、大変な喜びようだった。ご両親はアンジーがレズビアンかもしれないと思っていたのだろうと思う。アンジーが父親に僕のことをフィアンセだと紹介した時、彼が安堵の表情を見せたように僕には見えた。
結婚式の日取りは6月末に決まった。アンジーと初めて出会った日のちょうどひと月前にあたる日だ。あの日、法律事務所の書庫に寝ころんでいたアンジーに僕がつまづいたのが出会いだった。
式までの4カ月は死ぬほど慌ただしかったが、何とか二人で頑張り、6月の最後の土曜日、アンジーの父親のカントリー倶楽部で僕たちは結婚した。
僕たちの結婚式は、普通の結婚式と何の変わりもないものだった。僕はタキシードを着て、アンジーは白いウェディングドレスにベールをかぶった姿だった。だた一つ違いがあるとすれば、僕たち二人とも服の下にはまったく同じ下着を着けていたことだけだった。二人とも白のレースのコルセットを締め、それにマッチしたブラジャーをつけ、同じくマッチしたパンティとシルクのストッキングを履いていた。アンジーはヒール高5センチのハイヒールであったが、僕はヒール高8センチの紳士靴を履き、二人の身長が同じになるよう調節した。
結婚式は素敵に進行したし、新婚旅行も最高だった。マウイ島のひと目につかないバンガローで2週間過ごした。もちろん、僕は、夜はジャッキーとして過ごし、昼はジャックとして過ごした。もっとも、誰にも見られない時は、ビキニ姿でビーチに出て、日光浴をした日も、二日、三日ほどある。
ハネムーンから戻るとすぐに、僕の世界が崩壊し始めた。まず、事務所から、二人が結婚した以上、僕とアンジーは同じ職場で働くことはできないと伝えられた。僕は別のパートナーのところに配置換えになり、アンジーは新しい調査員をあてがわれることになるだろうと。
僕は、事務所の方針に従うつもりではいたが、もちろん嬉しくは思っていなかった。一方、アンジーの方はかんかんに怒って、対抗し始めた。まず最初に、彼女は事務所を退職すると脅かしをかけ、僕に代わる誰かを自分で見つけるまでは、僕を手放すつもりはないと、勝手にストライキを始めた。もちろん、事務所の方では、アンジー、彼女自身が望む場合は別だが、そうでない場合は、僕に代わる人を見つけることは決してないだろうと知っていた。
とういわけで、最終的に妥結案が出された。それは、僕が事務所を退職し、フリーランスの調査分析員となるという案である。以前と変わらず僕は事務所に給与をもらうし、僕の調査が必要な人なら誰でも僕に仕事を指示することができる。その代償として、アンジーは常勤の秘書として主任調査分析員を使うことを諦めるということだった。
この妥結案に対してアンジーは喜んだわけではなかったが、これが最善の案だということも分かっていた。加えて、僕は他の人にはほとんど仕事を頼まれなかったので、事実上、大半の時間、僕を手元に置いておくことが可能だったのである。
僕は依然と同じく事務所の資料室を使うことができたし、ネットも持っていた。ネットはときどき仕事の邪魔にもなるが、役に立つ道具であるのは間違いない。実際、在宅の仕事になって、アンジーのそばにいられないのは寂しかったものの、それなりに楽しんでいたと思う。それに、これも依然と同じく、アンジーに付き添って裁判所に行き、彼女の後ろに座って、法廷作業をする彼女の姿を見ることもできていた。もっとも、それができる回数は、期待したほど多くはなかったが。
在宅になって、家で仕事をするとき、最初はジャックの姿に着替えていたが、間もなく、ジャッキーの姿のままでいることが多くなった。ワイシャツとスラックスの姿より、ブラウスとスカート姿の方がずっと居心地がよくなってきたからである。一日の大半を女の子の服装でいようと思うと話したら、アンジーは嬉しそうな顔をしていた。
それからの半年間は、素晴らしい生活だったと思う。セックス相手として、アンジーはとても積極的だったし、その点では僕も負けてはいなかった。ウィークデイでも週に平均して3日か4日は愛し合ったし、週末はずっと愛し合う日々だった。もちろんアンジーが生理になった時は別で、その時は一切、その手の行為は中止になった。