私にくっついた男は、背が高く、逞しい筋肉の体をした金髪で、名前はロン・ランドールという男だった。まさに男の肉体そのものといった体格。彼は地元のヘルス・クラブでの個人トレーナーだった(これは嬉しい驚き!)。私は結婚指輪を隠そうともしなかったが、彼も方も、それを見て引き下がろうともしなかった。一方、ダニーに取り付いて彼女を悩ませていた男はというと、テリー・ケネディ。彼も金髪でロンと同じクラブで同じ職業をしていた。ふむふむ。陽気なアイルランド系の若者が、美しいアイルランド娘を探しにやって来たってところかしら。もし彼が本当のことを知ったら・・・私の3人の友達にもそれぞれ同じように男がくっついていた。
ちょっとうわついた浮気心も垣間見える楽しい時間だった。みんなで、フットボールのこと、映画のこと、そして、もちろん(私たち4人が営業員となっている)不動産のことなどをおしゃべりした。もし、私が、ロンは魅力的な男ではないと言ったなら、それは嘘になるだろうし、別の状況だったら、おそらく私は二の足を踏まずに彼をゲットしようとしたことだろう。そして、ここにいるダニーとテリーの2人が目に入る・・・一瞬、先の会話で弾みで出てきた、ダニーが男性にどのような感情を持つかという話題が頭をよぎった。それを思い、私はあそこが濡れてくるのを感じた。
と同時に、私の中の別の部分から、ピリピリした緊張感が高まってくるのを感じた。そのような感覚は、それまで味わったことがなかった。だけど、その源というか原因は察知できていた。ベスが、私を見て、それからダニーの方へ視線を向けて見せた。彼女も感じていたのね! さて問題が出てきたことになる。もはやロンといちゃついている場合ではなかった。もちろん、この問題という明らかな理由はあるのだが、でも、ベスとジャッキーは私の車に乗ってここに来たのだ。二人の車は会社に止めてある。グウェンの車はここの駐車場にあるが、どうやら彼女は本日のおすすめ料理を見つけたようだし、ダニーを乗せて戻る可能性はなさそうだった。いや、訂正:いかなる場合でも、グウェンはダニーと2人だけで車に乗ることはなしとする。
ジャッキーとベスは2人とも結婚している。だが、私と同じように、時々、わき道に逸れて楽しんできた。彼女たちの意向も聞かなくてはならない。私は口には出さずに、目と目のやり取りで彼女たちの意図を探り、多数決を取った。ジャッキーとベスは2人とも小さく頭を横に振った。みんなは1人のために、1人はみんなのために、ということで。グウェンの方をちらりと見た。彼女は相手の男のこと以外、何も考えていない様子。まあいいわ、ほとんどみんなは1人のために、ということにしよう。
運が良いことに、フットボールの試合は大勝になりそうだった。そこで、第4クォーターが始るとすぐ、私たちは帰ることにすると申し出た。ロンの目にも、他の3人の男たちの目にも、落胆の表情が浮かんだのは、見間違いようがない。運の良いナンバー5の彼のことは話しは別である。特に理由はないが、営業をする者がいつもそうするように、私はロンに名刺を渡した。
「もし、不動産のことで何かすることに決めたら、私に電話をくださいね」
ロンは、口元を少しだけ吊り上げた。
「多分そうするよ」
そう彼は返事した。
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