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ジャッキー 第13章 (6:終) 

最初、僕はホテルには一晩だけ泊まり、その後、自分のアパートを探すつもりだった。だが、不幸にも、そうはならなかった。ホテルの部屋に荷物を運び入れたとたん、強烈な絶望感に襲われたのである。

それから三日間、僕はベッドに横たわったままだった。ずっと、あの窓から見たことを反芻していた。加えて、アンジーと僕の生活についても、様々なことを思い出し、反芻していた。僕は彼女のことをとても愛している。彼女と別れることを思えば思うほど、絶望の度合いが深くなっていくのだった。

三日間、ベッドに横たわりながら、自分を憐れみ、自分の男性としての無能さを怨んだ。テレビはついていたが、見なかったし、何も食べられなかった。水を何杯か飲んだだけ。それも、何かの義務のように感じて飲んだだけだった。ウィスキーを買ったけど、結局、キャップを開けることすらしなかった。シャワーも浴びず、髭も剃らず三日間過ごした。月曜の午後には、自殺を真剣に考えるほどになっていた。

ドアをノックする音を聞いたのは、月曜の夜だった。最初は無視したけど、ノックの音はしつこく続いた。とうとう、僕は我慢できなくなり、「誰か知らないが、どっかに行ってくれ、僕を一人にしてくれ」 と言った。

だけど、その言葉は、ドアの向こうの人物にもっと強くノックさせることにしかならなかった。

絶え間なくドアをガンガン叩くようになり、僕は飛び上がって、独りにしてくれと言うために、ドアを勢い良く開けた。少なくとも、そう怒鳴るつもりだった。ノックをしてたのがアンジーだと気づくまでは。

アンジーは、あの眩い笑顔で微笑んだ。それを見た瞬間、僕の心は彼女の元に戻った。それでも、僕の理性と僕の自我は、戻ってはいない。バタンとドアを閉めようとしたが、それより速く、アンジーはドアを掴み、部屋の中にするりと入ったのだった。

彼女は部屋を見回して言った。「どうしたの、ジャック? 誰かとしけこんでたの?」

彼女が冗談でからかっているのは分かったが、僕はそんな気分じゃなかった。

「しけこんでたのはどっちなんだ! とっとと、ここから出て、君のオトコの元に行ったらいいんじゃないのか!」 と僕は怒って言った。

アンジーが僕の言葉にショックを受け、僕がそれを言ったことに傷ついているのが見えた。直ちに彼女は言い返してきた。

「ただ冗談を言っただけよ。あなたのこと、本当に心配してたのよ。置き手紙もなかったし、どこにいるか誰にも言わなかったから」

「ふん! 僕がいなくなって、さぞかしハッピーだったんじゃないかと思ったけど? もう、いつでも好きな時に恋人を家に連れ込めるんだから。週末じゅう、ずっと一緒にいられるだろ!」

僕は金曜に買ったウィスキーを開け、グラスに注ぎながら言った。

アンジーは僕に近寄り、手からグラスを奪おうとした。

「あなた? 私の恋人はあなただけよ。ねえ、何のことか私に話して」

僕は彼女の手からグラスを奪い、言った。「アンジー、僕は君があいつといるのを見たんだよ。金曜日、君が職場を出た後、僕は尾行したんだ。君はまっすぐあいつの家に行った。そして、家に入って5分もしないうちに、もう寝室に入っていたんだ」

アンジーの顔に浮かんだ表情は驚きの表情と言っただけではまったく表現不足だろう。秘密が暴露され、僕がすべてを知ってることを理解したのだ。

アンジーはハンドバッグでお腹を押さえるようにして、崩れるようにベッドに座った。それとほとんど同時に、目に涙が溜まり始め、その後ゆっくりと、その涙が頬を伝い落ち始めた。

つづく


[2013/02/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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