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報復(2) 


何か理由があるのか、バーバラのボスの甥は、この場に現れるや、彼女が座っているテーブルの席次を決めた。彼は、しっかりと自分のことを「ボスの甥」であると強調していた。彼は、隣のテーブルから椅子を素早く移動して、バーバラの隣で開いていた隙間に割り込んだ。

これにはスティーブをムッとさせたばかりでなく、彼が割り込んできたことで椅子を横にずらさなければならなかった男もいらだたせた。

この男のことをバーバラは「ジミー」と呼んでいたのだが、さらに悪いことに、このジミーはバーバラの関心を独り占めするために、できる限りのありとあらゆることを、あからさまにしていたのだった。信じられないことに、当のバーバラはそれを喜んでいるように見えた。臆面もなく行われ、時には驚くほど親密なおだてやいちゃつき。その一つ一つを自分から歓迎しているように見えたのだった。

ジミーとバーバラの2人は笑っていた。2人で頭を寄せ合って、「トレーラー・トラッシュ」(参考についてのジョークを話し合って笑っている。スティーブは、もはや見せ掛けの笑顔は見せていなかった。笑顔から真顔に変わっている。そのテーブルについていた9人のなか、スティーブの妻とジミーだけが、そのジョークを面白いと思っているらしい。スティーブは咳払いをし、不機嫌な表情をあえて見せて、気持ちを表現していた。

ジミーは周囲を見回し、スティーブに顔を向け、あからさまにニヤリと笑って見せた。

バーバラは夫に顔を向けて言った。「ほら、スティーブ? 少しは打ち解けたら? ただのジョークよ」

さらにたしなめる口調になって言う。「スティーブ? そんなに真面目に取らないの。ジミーは、ただ、生活水準が低い人たちなどについて、的確なことを言おうとしてただけってことなのよ。だから、お願いよ」

「その通りだ」 ジミーが会話に割り込んだ。「彼女の言う通り! アハハ!」 彼のしわがれ声の笑い声が広がり、テーブルに座る者たちの耳に届く。その笑い声に半拍ほど遅れて、バーバラのクスクス笑いが続く。

「実際、俺は、君がああいったジョークを理解できるとは、そもそも思っていないし。いや、君が悪いって言ってるんじゃないさ・・・ただ、建設工事の労働者たちにとっては、あのジョークには多すぎるほどいろんな意味が感じられるって、そういうことなんだよ」 ジミーは満足げに言い終えた。そして、テーブルに座る人々一人ひとりに笑顔を見せた。そうすることによって、スティーブのこの場での立場を皆に分からせ、それに同意するようにと誘っているのだった。

バーバラは、再び、くすくす笑った。そして苛立った表情を夫に向けた。

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